外伝;ただの女子高生の姫内です
お久しぶりです!
きっと私は誰にも必要とされずにひっそりと死んでいくのかな……
たまにふと私の死に方を考える時がある。
死に方なんて考えても仕方がないのにね。
だって今、まさに死にそうなのだもの。
それもあっけなく……
「それではホームルームはこれで終わりです。気を付けて帰るように」
担任の先生はそう言って教室から出て行った。
「今日あそこよらない?」
「マジやばいんですけど!」
ホームルームが終わったとたんに教室が騒がしくなる。
周りの女子たちはあそこのカフェの新作が出たとか俳優やアイドルがかっこいいなど……私には無縁の世界の話をしている。
一応高校二年生なのだから、一度ぐらいはそういう話をしてみたいな。
「姫ちゃん、帰ろ?」
私がそんなくだらないことを考えていると、クラスメイトの柚木さんが私の机の前まで来た。
「わかった」
自席の横にかかっている学生カバンを持って柚木さんと教室をでた。
別に帰り道に何か話すわけでもない。
普通ならクラスメイト達がしているような年ごろの話をするんだろうけど。
どうも私たちにはあの手の話が合ってないというか苦手なのだ。
「今日も平和だったね」
私は流石に終始無言というのもさみしいので話しかけることにした。
「え? そうだね。平和だね」
…………
会話が途切れてしまった。
いつも話しかけるのだけど、上手く会話が続かないのだ。
「ねぇ姫ちゃん」
「なに?」
珍しく柚木さんから話しかけてくれた。
「姫ちゃんは、私といて楽しい?」
……楽しいか。
考えたこともなかったな。
「うーん。どうだろう?」
「え? もしかして楽しくない?」
「いや、そういうわけではないのだけど……」
あまり喋らないからか、お互いのことを知らないのだ。
「そっか……」
柚木さんがしょんぼりしてしまった。
また……私は悪いことをしてしまったかな。
「ただ、いやな気持にはならないぞ」
「そっか」
柚木さんは暗い表情から満足気な表情に変わった。
よかった。今度は嫌な気持ちにさせてないみたいだ。
「じゃあ姫ちゃん、また明日ね」
「またね」
あれから私たちの間に会話は生まれなかった。
なかなか会話が続かないな。
次はどんなきっかけにしようかな。
……年ごろの会話って難しいな。
私はそんな考えごとをしながらバックの中に入っているイヤホンと音楽プレイヤーを取り出していつものヒーリング音楽というのを聴く。
これを大音量で流すと本当に森の中にいるみたいなのだ。
もちろん音漏れには注意してるけど。
……私は少し目をつぶって歩いてみる。
空気こそ悪いけど、本当に森の中いいるみたいだ。
”ドカッ!!”
私の右側から重い何かがぶつかる感覚が……
目を開けると自転車が私にぶつかっていた。
目をつぶっていた私が悪いけど、酷いことをするな。
そんなことを思いながら私は吹き飛ばされていく。
……こういう時って動きがスローモーションに見えるよな。
そのおかげで頭の回転が速くなったみたいだ。
『いや、君の頭の回転が速くなったわけではないぞ』
だれ?
私の隣には真っ白な服を着た青年……顔は逆光でよく見えなかったから青年かどうかわからないけど声的に同い年だろうな。
『失礼だが、君はもうすぐに死ぬ』
なんだその唐突な余命宣告みたいなのは。
『君は運が悪かったのだよ。そのまま電柱に激突して頭を打って死ぬ』
死ぬか。
あなたはそんなことを教えるためにきたのか?
『自分の死をそんなこと扱いか。……もちろんそんなくだらないことのために来たわけではないよ』
死ぬなんて信じてないけど。
『まぁそうだろうな。ただ君は死ぬのは確定しているのだよ。だから助けに来た』
そう。なんの理由もなく?
『……随分と疑り深いな。まぁもちろん代償はあるぞ』
やっぱりだ。
『と、言っても楽なものだ。ただこちらの世界に来てもらいたい』
こちらの世界……なんかそんなジャンルの話があるってクラスの男子が言っていたような。
『さぁどうする? けして悪い話ではないと思うぞ』
他にもなにか隠してることがありそうだが。
……ま、いいよ。
そのかわり、本当に私が死んだらだけど。
『わかった。これで君が死ななかったらこの話はなかったことにしよう』
『それでは創造者のためによろしく』
そう言って青年はどこかに行ってしまった。
とんだ変人にあったものだ。
”ゴン!!”
突如頭に強い衝撃が走る。
い、痛いな……
っつ、頭が痛いな。
私は頭を押さえながら目を開ける。
「……ここは?」
目の前、というか異常に丈の長い草で周りのことは見えないけど。
ここはよく音楽で聴く森の中みたいだ。
「東京……ではなさそうだな」
あれ? バックがないな。
ってことは財布もないのか。
「そこに誰かいますか?」
草木をかき分ける音が聞こえる。
これは逃げた方がいいのか?
「逃げないでください。決して危害を加える気はありません」
何となくだが、足音は近いし……逃げられそうにないな。
「わかった。私は逃げないよ」
「そうですか。良かったです」
そう言って草をかき分けて出てきたのは……天使のように美しい男の人だった。
ただ、服越しでも体の半分がガラクタのような機械でできていた。
「初めまして」
これが私とカナリアとの初めての出会いだった。




