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eye  作者: いるか
7/10


彼は、ふくらはぎ、特に肉の柔らかな部分を噛むのが好きだった。

彼は、私が目を抉るのよりも頻繁に、私の足を噛んだ。

彼に噛まれたところは、紫色や、黒に変色し、友人に痛そうと称されるようになった。見た目と違っていたみなど皆無なのだけれど。


彼は、私の趣味を見るようになった。

目を楽しむ私の趣味を。

一番はじめの頃、彼は紙袋に穴を開けたものをかぶって、間抜けな強盗みたいな格好で私を見ていた。


なにその格好、と私が笑えば、過呼吸、とだけかれはいった。

若干すねていた気がしたので、頭を撫でたら、紙袋の端をぎゅっとひっぱった。


最近の彼は、手に紙袋を持つ程度まで進歩したようだった。

それと同時に、先端恐怖症も少し和らいだようだった。

少し使ったあとの鉛筆の先くらいなら見られるようになったらしい。


彼の秘密を知り、私の秘密がばれても、私たちのなかにはほとんどなんの変化もなかった。

あったとしても、たぶん、相手の好きな食べ物を、もうひとつ新しく知ったくらいの気持ちの変化でしかなかった。

どっちかと言えば嬉しかったのだ。

彼も嬉しそうだった。目を抉るときは別にして。


頭を切り落とし目をえぐった魚をさばく。

きれいに骨だけを取り出して、大きな身を切り身に変えた。


「きょうも魚か。」

「好きでしょ。」

「・・・好き。」


彼は肉よりも魚が好きで、私も肉より魚が好きだった。

私の場合、魚が好きと言うよりもまず先に、肉を食べられなかった。

あの、独特の獣臭さがダメなのだ。身に歯をたてた瞬間、むせかえるような獣の香りと、生きていたものに歯をあてているという感覚がして、どうにも咀嚼することができなかった。

丸のみなら、まだできたので、学校の給食では粉々に砕いて丸飲みしていた。


「揚げる?焼く?」

「揚げたやつがいいな。」

わかった、と了承して、作業を進める。


彼との日常は穏やかだった。

それはもう、心地よすぎて吐き気がするくらいに穏やかだった。

私は彼といるのが嫌いでなかった。


彼の目を見る時間はいくらあってもよかった。


それが。


「彼といる時間が」、に変わったのはいつだったのだろうか。

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