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異世界で引きこもりたいけど周りの女性が許してくれない件について  作者: 涼月風
第3章

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第78話 ーーー最悪の日を阻止せよ!そして、ーーー

 




 火曜日(曇り)


 朝、学校に行く前に、シアンにお弁当を渡し一緒に登校する。シアンは疲れた様子だった。


「今日ぐらい学校休めばいいのに〜〜」

「そうもいかない。この件が終わったらゆっくりする」


 そう言いながら、シアンは眠そうに目を擦っていた。

 学校に着くとスズネが話しかけてきた。


「今日だね……」

「うん……」


 お互い、言葉は少なかった。

 俺達は、できるだけいつもと変わらない日常を送るようにしていた。ハルファスがどこで見てるかわからない。奴の油断を誘うためにもそうする必要があった。


 放課後、大輝の様子はいつもと変わらなかった。今、部活に行っている。部活が終わった後、俺は、大輝と入れ替わろうとしていた。


 部活が終わり、大輝が帰ろうとして自転車置場に姿を現した。スズネが声をかけて、呼び出す作戦だ。


 人気の無いところに大輝とスズネが現れた。俺は、黒翼のマントを羽織り気配を消していた。


「神屋代、何の用なんだ……」

「ちょっと、話があって……」

「それって、もしかして、告白……」


 その時、俺は大輝を後頭部を打ち気絶させた。この技は、スズネ直伝の技だ。


「すまん、大輝……」


 俺は、ドアを開き大輝をリーナの家に運ぶ。そして、変装してすぐに戻った。


「えっ〜〜本当にシロウ君? 大輝君そのままだよ」

「あぁ、すごい能力だよね。使ってる俺自身も毎回、ビックリしてるよ」

「女の子にもなれるの?」

「うん、この間、シアンに化けたばかりだよ」

「……女の子になるとどうなるの?……アレとか……」

「アレって?」

「その……何というか……アレよ〜〜」

「あぁ〜〜身体も女の子になるみたいだよ」

「そうなんだ……」

「どうかしたの?」

「何でもないよ……」


 スズネは、何か言いたそうだったが、俺は、そんな余裕はなかった。近くにはドラ子もいるはずだから、大丈夫だと思うが……


「じゃあ、帰るね。スズネとは、ここでバイバイだ。終わったら連絡するよ」

「私もいかなくていいの?」

「前回と同じにしたいんだ。スズネが一緒だと違う未来になってしまう可能性がある」

「わかったわ。連絡待ってるから……気をつけてね」


 俺は、自転車をこぎ、大輝の自宅に向かう。出来るだけゆっくり自転車を走らせた。すると、途中の神社の前で、具合悪そうに休んでいるお婆さんがいる。


 大輝なら、声をかけたはずだ。


「お婆さん、大丈夫? どこか具合が悪いの?」

「な〜〜に、少し息切れしたから休んでいただけ……少し休めば治るから……」


 お婆さんは、そう言いながらも苦しそうだ。俺は、お婆さんお腕を見た。腕輪は着けていない。この人は、本当に苦しんでるんだ。


「お婆さん、家どこ? それとも、救急車呼ぶ?」

「家は、すぐそこだ。本当に休めば治るから心配せんでもよいわ」


 お婆さんが指を指した家は、目と鼻の先だった。俺は、お婆さんを背負いその家に運んだ。


 お婆さんは、薬を飲むと落ち着いたようだ。持病の発作らしかった。


「お前さんのお陰で助かったわい。ありがとう」

「発作が治まって良かったです。では、また……」

「ちょっと、待っておくれ……これ、これを持って行きなさい」


 お婆さんから飴玉をいくつかもらった。


「お婆さん、ありがとう。具合悪くなったら救急車呼ぶんだよ」


 俺は、そう言ってお婆さんの家を後にした。

 神社の前まで来ると、今度は、屋代の方から子供の泣き声が聞こえた。

 俺は、何だろうと思いその神社に立ち寄った。その子は転んだのか、膝から血を流していた。


「転んだのか?」

「わぁ〜〜ん、痛いよ〜〜」


 俺は、その子の腕を見た。腕輪は着けていない。俺は、神社の水道を拝借してハンカチを湿らせその傷に当てた。なかなか泣き止まない子供に、俺は、さっきお婆さんからもらった飴を渡した。すると、機嫌が良くなったのか、少し落ち着いたようだ。


「君、家どこなの?」

「すぐそこ……」


 指を指した家は、神社の目の前の家だった。


「じぁあ、お兄ちゃんと一緒に帰ろうか?」

「ううん……ママが今は帰ってきちゃダメだって言ってた……」


 うむ。おかしい……子供の泣き声は、あの家なら聞こえてるはずだ……

 母親がいるなら、出て来ない方がおかしい……


「なんで、帰って来ちゃダメなの?」

「おじさんが来てるから……」

「おじさん……?」


 もしかして、主婦の情事というやつか?……怪しからん!

 子供が怪我をして泣いてるのに……


 でも、おかしい……もう午後6時半ごろだ。辺りは暗くなっている。この物騒な世の中で子供をこんな時間まで、1人で遊ばせているわけがない……


 見ると、子供のポケットから光る腕輪のようなものが見えた。もしかして……


 俺は、子供と距離を取った。その時、その子が俺に覆いかぶさってきた。


「どうしたんだ?」

「お兄ちゃんと遊ぶの……」

「何をして遊びたいの?」

「わかんない……こうしろって言ってるから……」


 ハルファスの声は、しわがれた声だ。この子は操られているだけかもしれない。


「シロウ様!その子から離れて下さい!」


 突然、ドラ子の声がした。俺は、その子を振り払い、突き飛ばした。


「わぁ〜〜んわぁ〜〜ん」


 子供が泣き出したが、声が野太くなっていく……


「わぁ〜〜ん、わはははは〜〜〜ドラ子がいるとはなぁ〜〜」


 この子供が、ハルファスだ。憑依されているようだ。

 俺は、聖剣を取り出しその子の身体に突き刺した。この子を救うにはそれしかない。

 すると、身体から黒い影が溢れて空中に集まりだした。俺は、子供にフェニックス涙を飲ませた。傷は塞がり、意識もしっかりしてきた。


「君、危ないから、逃げろ!」


 俺は、その子をこの場から逃した。ハルファスは、黒い人間大のカラスへと変貌していた。


「ハルファス!きさまーー!」


「お前は、何者だ。儂を知っておるとは、それに、ドラ子までおる……そうか、お前が、サリーナの契約者か……」


 この虫唾が走る声をもう一度聞くとは……


 俺は変化を解き、元の姿に戻る。今回は、ドラ子の不意打ちは無駄だったようだ。


「ハルファス、大人しく捕まりなさい。そうすれば、少しは手加減してあげるわ」

「ものぐさの吸血鬼が何を言う。わしは、地獄の伯爵だぞ」

「それが、どうしたの?地獄なんて、冥界でも最悪の場所じゃない。悪人の魂を奴隷のように好き勝手して遊んでるだけじゃないの」

「地獄があるから、冥界も均衡が保たれておるのだぞ〜〜!」

「そうかしら〜〜私には、ただ、憂さ晴らしに虐めているだけだと思うけど〜〜」

「この、吸血鬼風情が〜〜!」


 ハルファスの魔弾が、俺とドラ子に放たれる。ドラ子は、魔弾をヒョイっとかわし、俺はマントで防ぐ。ここは無人の神社とはいえ、周りには住宅もある。こんなところで戦えば、周りに被害が出る。


「ドラ子、何とか拘束できないか?」

「やっているのですけど、すばしっこくって……」


 空中でドラ子とハルファスが、戦っているが、動きが速くて見えずらい。一瞬の隙に、ハルファスは何かを唱えたようだ。すると、周りから、大蛇が現れた。


「この者達は、蛇地獄の主達だ。お前も無限の苦しみを味わうが良い!」


 大蛇が6体襲ってきた、俺は、覚えたての剣で対抗するが、思ったよりこの蛇の力が強い。


 その時、【白虎、朱雀!顕現せよ。急急如律令!】


 スズネの式神が、加勢に入る。


「シロウ君の跡をついてきちゃった〜〜」


 と、照れ臭そうにスズネが言っていた。正直、助かる……


 スズネは、破魔の剣でその大蛇の一匹と戦っている。俺も違う蛇と戦っていたが、かわすので精一杯だ。一匹ならどうにかなりそうだが、一度に数匹の相手は厳しい。


 空中では、ハルファスとドラ子が物凄い速さで戦っている。


 ドラ子達に気をとられた瞬間、後ろから鎌首を掲げた大蛇が俺を飲み込もうとしていた。気づいていたが、目の前の相手の力に押されていた。


 後ろの大蛇の大きな口が俺に迫る。俺は、避けようとしたがそれは杞憂だった。大蛇の口にはたくさんの人形が詰め込まれていた。


「エリックさん……」

「シロウ、油断は禁物デス」

「助かりました」


 すると、突風が吹き、一匹の蛇の首が落ちた。シアンの風魔法だ。


「シロウは、シロウに戻ったの?」


 そう言いながら、次の蛇を風魔法で攻撃している。今度は、突然、大蛇が空に吹き飛んだ。大きな金棒が見えた。


「クルミ……」

「シロウ様、加勢に参りました」


 心強い仲間が揃った。俺は、目の前の大蛇の首を聖剣で斬り裂いた。血飛沫が宙に舞い上がる。スズネも、どうやら、大蛇を仕留めたようだ。


 あとは、ハルファスだけだ……




 ◇◇◇




「あの速さでは、手出しは難しいデスね……」

「同感。下手に手を出せば、ドラ子さんの足を引っ張る可能性もある」


 エリックさんやシアンは、その動きの速さに驚いていたが、


「シロウ様、私を抱えて飛んで下さい」

「クルミ、何か良い案があるの?」

「やってみないとわかりませんけど……」


 俺は、クルミを抱えてドラ子達の側に来た。そして、いきなりクルミは金棒をバットのように降り出した。すると、その金棒は、どんどんと大きくなる。


「これぐらいで大丈夫でしょう」

「クルミ。何するの?」

「野球です。昨日の夜、みんなと見てました」

「そ、そうなの……」


 ドラ子は、クルミがしようとしてる事を悟ったらしい。


 ……きっと、一緒にテレビ見てたんだろうなぁ……


 ドラ子は、ハルファスをクルミの射程圏内に誘い込み。そして……


『カキーーン!』


「やった〜〜ホームランです」


 クルミは嬉しそうに満面の笑顔を浮かべていた。


 ハルファスは、空高く打ち飛ばされていた。

 どうやら気絶しているらしい……ハルファスは動きを止めていた。

 落ちてきたハルファスをドラ子が拘束した。


「終わった……これでもう、あの時のような悲劇は起こらない……」


 みんなの助けがあってこその未来だ。俺だけでは、きっとどうにもならなかった。


「これが、ハルファスデスか? カラス人間デスね」

「目が穢れて痛いわ」

「見た目はそこそこ可愛いわよ」


 ……スズネは、少し脳天気すぎだろう……


「ハルファスの本体を見たのは初めてです。ただのでかいカラスですね」


 ドラ子の言葉は、トゲがある……


 俺は、こいつだけは山程文句があったが、目を覚まされて暴れでもしたら面倒なので、ドア2を開けこいつを押し込んだ。あとは、冥府に行って正当な裁きを受けさせよう……


 いろいろ騒いだので、人が集まりだした。俺達は、ドラ子の転移で家に戻った。




 ◆◆◆



 今夜は、みんなで宴会だ。夜遅くまで飲んだり食べたりして過ごした。

 でも、俺は、素直に喜べなかった。一度目の世界を知っているからだ。

 それと、リーナに伝えなければならない事がある。リーゼとの契約の事だ。


 スズネは、今日はシアンのところに泊まるらしい。スズネは、女の子のところに泊まるのは初めてらしく、えらく喜んでいた。


 俺は、先にリーナにあって話そうと思っていた。みんなの前では、リーナは本音を出さない。


 俺は、みんなが楽しんでいる隙に、冥府のリーナの居室に行く。

 リーナは、ベッドで寝ていた。部屋は、また、散らかっていたけど……


「リーナ、リーナ」


 寝ているリーナに声をかける。リーナも気づいたようだ……


「シロウ、来たの?」

「うん、向こうに行った悪魔は捕まえたよ。リーナは?」

「さっき、調印式が終わって帰って来たばかり……邪龍族は、図体もでかいけど気も長い。それにドラキュラ伯爵もいたから、時間ばかりかかった」

「ご苦労様……それと……話しがあるんだけど……」

「わかった。今、起きる」


 リーナは素っ裸だった……


「リーナ、服、服着てよーー!」

「シロウ、どれでも良いから取ってくれる?」


 俺は、部屋に散らかった服をかき集めリーナに渡した。リーナは、恥ずかしげもなくその服に着替えた。


「相変わらず、リーナは、リーナだな」

「私は私よ。シロウ、話って?」

「あぁ……その事なんだけど……」


 リーナに今までの事を包み隠さず話した。多分、リーナは、俺が話さなくても気づいていただろうけど……


「そうなんだ……」

「うん……」


 しばらく沈黙が続いた。それを破ったのはリーナだった。


「シロウが来た時から、気づいていた。正直に話してくれたのは嬉しい」

「うん……」


「……で、でも、なんでリーゼなの?なんで……」


 こんなに取り乱したリーナを見たのは初めてだ……


「すまん……言い訳かもしれないけど、あの場合、俺にはどうする事もできなかった……」


「それは、わかる……じゃないとシロウは、死んでたのでしょう?」

「あぁ……死んでいた」

「生きてて良かった……それは、感謝しなければならないのはわかっている」

「俺もそう思うよ。リーナとまた、会う事が出来たし……リーナ、俺は、リーナの血が欲しい。リーゼじゃなくリーナときちんとしたいんだ」

「良いの? 私の血を飲めば、もう、人ではなくなるのよ」

「リーゼの血を飲んで、もう、半分人じゃなくなっている。それなら、俺はリーナの方がいい……」

「わかった。私の血を飲んで……そして、ずっと私の側にいて……」

「あぁ……俺は、リーナのものだ……」


 俺は、リーナと口づけをした。そして、温かい液体を身体に流し込んだ。


 俺は、人間では無くなった……







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