第79話 ーーー新しい日常ーーー
「あぁ〜〜俺は、なんて事してしまったんだ〜〜!」
俺は、鈴風 四郎。15歳。人間やめました……
ステータスを見ると前は『半魔半人』だったのが、リーナの血を飲んで『悪魔?人間?』って変わってた。
……なんだ!その『?』ってーー!……
リーナの気持ちを考えると後悔はしていない……後悔はしていないんだ……
でも、これからどうしたら良いのーー!?誰か教えて〜〜!
「シロウ、煩いです!折角の休憩時間なのに、煩くて休めません!」
「なんで、女神様がまた、いるんですか?ここは、俺の部屋です!」
「いいえ。私の憩いの場です!」
「女神様ーー!」
「シロウーー!」
『うーーーっ!!』
あれから、俺は家に戻り、ソラス、ドラ子、クルミそしてアザゼルを冥府に送っていった。もちろん、悪さをしていたあの4魔の悪魔達も……
4魔の悪魔達は、冥府の掟により、地獄の最下層に永久追放された。門番に3つの頭を持つ犬、ケルベロスがおり、また、地獄の裁相、閻魔大王がいるので、冥界に浮上する事は出来ないらしい。
そして、リーナの居室には、ドアをポイントで購入し、俺のいる世界のお隣さんの家につながるようにしておいた。このドアを使えるのは、この世界に来たことのあるリーナ、ミミー、ソラス、ドラ子、クルミ、アザゼル限定だ。
ドアのプレートに名前を刻む事によって、そうできるらしい。
前までは、俺からの一方通行だったが、今度は、冥府から自由に出入りできるようになった。
そうしたのも、あの時のリーナとの約束で『一緒にいる』という事をドアを儲ける事で納得してもらったのだ。でないと、俺は、ずーーっと冥府にいなければならなくなる。
「シロウ、プリンが食べたいです」
……この女神は、俺の気持ちも知らないで〜〜……
俺は、この難問を模索するため、邪魔の入らないマイルームで考えようとしたら、先客の女神様がいたという訳だ。
「はい、はい」
俺は、チラシからプリンを購入して女神様に渡した。ベッドに横たわり片肘をついてプリンを食べる女神は、ただのグータラ女と化していた。
その時、俺は、女神様が横たわっているベッドの脇に見慣れた物を見つけた。
それは、俺にとっては大切な物……
「わぁ〜〜!女神様、こ、これどうしたんですか?な、何で首だけここにあるのですか?」
それは、以前、幼馴染大林 隼人に預けておいた俺のコレクションの1つだった。そういえば、置き場所がなくて、ここにダンボールごと運んでおいた。
俺は、慌てて、そのダンボールを開ける。すると、数々の癒しのフィギュア達があられもない姿に変身していた。
「わぁ〜〜なんて事ーー!女神様でしょう!こんなことしたのは〜〜!」
「それがどうかしましたか?」
「ありえません。ありえない……なんで、手の関節がこんなありえない方向に曲がってるんですか? こっちは、首がとれてる〜〜。あぁ〜〜これは、足が3本、手が5本もついてるじゃないかーー!これじゃあ、阿修羅像じゃないかーー!」
「いいえ、阿修羅は、いつも手をこうして上に向けてますよ」
「そうなんですか? 勉強になります……って!違うから!これ、阿修羅像じゃないからっ!なんで、こんな事したんですかーー!」
「たまたまです。何かないかと探したらお人形がたくさん出てきたので、童心に返ってお人形遊びをしただけです。何か問題でも?」
「問題大アリです!これは、飾って眺めて観賞するものです。お人形遊びなんて以ての外です!」
「本来、人形は、それが役目なんですよ。眺めているだけでは人形も可哀想です」
「これは、人形ではありません!フィギュアです!」
「シロウは、いちいち細かいです。そんなんだと女の子にモテませんよ」
「それとこれとは別です! 」
……あぁ……俺のフィギュア達が無残な姿に……
「女神様!許しませんよーー!あれっ、いない。逃げたなーー!もーーう!」
俺は、パズルのようにめちゃくちゃになったフィギュア達を出来るだけ元の姿に戻していった。
「これ、もう、どれがどれだかわかんないよ〜〜取れちゃいけないとこも取れてるし、塗装も剥げちゃってるし……」
俺は、記憶をたどって大切なフィギュアを元に戻し始めた。
◇◇◇
明日から、一番下の妹、睦美の修学旅行だ。行き先は日光、1泊2日の予定だ。俺は、睦美と明日の用意をしていた。
「本当にゲーム持ってくのか?」
「うん。その為にアキバで買ったんだから〜〜」
こっちで悪さをしていた悪魔マンモンと対峙していた時、睦美はアキバでゲームソフトを買っていた。
「見つかって取り上げられても知らないぞ」
「大丈夫だよ。奥の方に隠しておくから〜〜それに、携帯を持っていく子もいるんだよ」
「俺達の時は、ダメだったけど、最近は良いのか?」
「もちろん、隠して持っていくんだよ」
確かに、何かあった時便利だが、先生もいるので必要ないと思うけど……
「睦美は携帯持ってないけど、俺の貸すから持ってくか?」
「えっ! 良いの? やったー! でも、お兄ちゃん使わないの? もしかして、友達いないとか?」
「俺は、ほとんど使わないからいいよ。でも、友達は、少しだけいるぞ!」
「残念だね〜〜。友達、1000人作れなかったか……」
……そんなに作れる訳ないだろう!……
「とにかく、貸すから、いざという時以外使うなよ」
「わかった。でも、写真は撮っても良いでしょう? 私、デジカメ持ってないし……」
「良いよ」
「わ〜〜い、ありがとう。あっ、そうだ! お菓子買ってないや」
「えっ! わかった。買いに行ってくるよ。何がいいの?」
「私も行くーー!」
夕飯の買い物ついでに睦美のお菓子を買いに行った。もちろん、学校で規定された500円までだ。近くのスーパーは夕飯の買い物客で混んでいた。今日は、カジキマグロが安い。
「今日の夕飯、カジキの煮付けでいい?」
「睦美、肉食べたい〜〜」
「肉か………」
今日は、肉は安いのが無い……でも……そうだ。
「ハンバーグでいいなら、作るけど?」
「やったーー! ハンバーグがいいーー!」
俺は、牛豚合挽きの挽肉を買った。これなら、予算内に収まりそうだ。
『シロウ兄、買い物?』
サツキから念話だ……
『あぁ〜〜睦美と一緒にな』
『牛乳無くなったから買ってきてくれる』
『そうだった……わかった』
『それと、リーナさん、隣に来てるよ』
『えっ、リーナが……わかった。買い物すんだらすぐ行くって言っといて』
『わかった』
……[念話終]……
リーナが連絡なしに来るなんて珍しい……
俺は、お菓子選びで悩んでいる睦美をせっついて、買い物を早々に切り上げた。
◇◇◇
買い物を終えて家に帰ると、すぐ隣の家に向かった。すると、本当にリーナがそこにいた。
「リーナどうしたの?」
「時間ができたから、ドアを使った。ここは、懐かしい……」
リーナが、ここを去ってから、およそ半年近く経つ。あれ以来、ここには来たことが無かった。
「そうだね。クルミやドラ子は、来たけど、リーナは忙しくて来れなかったしね」
「シロウ……後悔してない?」
リーナは、自分の血を俺に与えた事を気にしていたようだ。
「後悔はしてないよ。俺が頼んだ事だし……ただ、どうやって生きてけばいいのか、わからなくなる時があるけど……」
リーナには、嘘をつけない……
「シロウが戸惑っている感情が流れてきた……心配になった」
「戸惑ってたのは、この先の事だよ。あの時の事は後悔していない。これが、俺の本心だ」
「わかった。シロウがそう言うなら……それと、ミミーがいなくなった」
「えっ!それ、大変じゃん。何があったの?」
「勉強が辛くて逃げ出したと、執事が言ってる」
……あのヤギ頭の悪魔か……
「もしかしたら、シロウのとこに行ったかもって思って来てみた」
「そうだったんだ。でも、こっちには来てないと思うよ」
「うん。ここに来てミミーの気配がこの世界にない事がわかった。多分、フェニックスのところだと思う」
「そうか〜〜ミミーも懐いてたもんね。わかった。あとで探しに行ってくるよ。それと、リーナ時間ある? 今日はハンバーグなんだ。よかったら食べてかない?」
「うん。ご馳走になる〜〜」
……食い気は相変わらずだ……
俺は、リーナの分も含めてハンバーグ作りに精を出した。
その日の夕飯は、久し振りに楽しいひと時だった。
◇◇◇
俺は、家出幼女悪魔ミミーを探しにミリエナ国に来ていた。フェニックスのところに行ったら、来たけどすぐどこか別のところに行ったらしい。
ミミーに念話を入れても、出てくれない。余程、勉強が辛かったのだろう。
仕方がないので、王都に宿をとり、俺のスキル、全マップ探索で居場所を特定した。
でも、無理に連れて帰っても同じ事の繰り返しだと思い対策を立てる為に宿に泊まったのだ。
久し振りに王都の街並みを堪能しようと思い街に出る。ここは、いつ来てもファンタジー要素が溢れてる。
「いいなぁ〜〜この世界……高校卒業したら、就職こっちでしようかなぁ〜〜」
そんな呑気な事を考えてぶらぶらしていると、
「あっ!覗き魔のお兄ちゃんだーー!」
「ほんとだ。覗き魔だーー!」
こんな事を言う奴は決まっている。シアさんとこの孤児院の子達だ。
「何度も言ってるだろう。俺は、シロウ。覗き魔じゃないよ」
「名前なんてどうでもいいだろう?」
……生意気なガキだ!……
「何してんの? シアおねーちゃんとこ行くの?」
「違うよ。少し、ぶらぶらしてただけだよ」
「そうなんだ……」
……そう、いきなりつまらそうにするなって……そうだ。シアさんなら良い方法を知ってるかもしれない……
「でも、気が変わった。シアさんとこ行こうかな?」
「えっ、ほんとう〜〜。じゃあ、こっちだよーー!」
……子供は無邪気でいいなぁ……
俺は、お土産にお菓子を買って、シアさんのいる孤児院に向かった。
孤児院は相変わらず賑やかだ。
「シロウさん、お久しぶりです。ここに来てくれないから心配してたんですよ」
「シアさん。こんにちは。途中で子供達に会って、捕まってしまいました」
「そうでしたの〜〜うちの子達もたまには良い事をしますね」
「これ、お土産のお菓子です。みんなで食べて下さい」
「わぁ〜〜ありがとうございます。では、お茶をお入れしますね」
子供達が纏わり付いてきた。髪の毛や服を引っ張られていて困ったが、久し振りに子供達と追いかけっこして遊んだ。
「すみません。子供達と遊んで頂いて……お茶が冷めてしまいましたね。入れ直してきます」
「いいえ。喉が渇いてたから、これくらいの温度がちょうど良いです」
俺は、冷えたお茶をゴクゴク飲んで喉の渇きを潤した。
「実は、シアさんに相談があるのですが……」
「私にですか? 何でしょう?」
「俺の知り合いの子供が勉強ばかりでつまらなくて家出してしまったんです。居場所はわかっているのですが、このまま連れて帰っても同じ事じゃないかと思ったんです。シアさんならどうしますか?」
「そうですね……育った環境にもよりますけど、子供達は、飽きっぽいですから、楽しみながらできれば続くと思いますけど〜〜」
「楽しみながらですか……」
勉強って楽しくないもんね……これは、教える方にも問題があるのだろう。簡単に引き受けてしまったけど、実は奥が深い問題なのでは?
「それから、目標があると良いと思います。将来、こういう風になりたいって思うと、やる気が出ますし」
確かにシアさんの意見は的を得ている。ミミーは、どうなりたいんだ? 俺は、ミミーの事が良くわかっていないのだと、思い知った。
「参考になりました。ありがとうございます」
「いいえ。私は何もしてませんから」
ミミーは、今、何を思っているのだろう? 俺は、ミミーを知る事から始めなければいけないのだと思っていた。




