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三章予告

一章、二章の本編は終了しましたが、予告だけを残して半年以上放置してしまいました(汗

 老人は、ハープを奏でる手を止める。

「聖魔戦記 前奏曲 第2章。これにて幕じゃ。続きはまた明日じゃ」

 周囲にいた者たちが、吟遊詩人の帽子に銀貨を投げ込む。

「なぁ、吟遊詩人さん。まだ日も高いし、もう少しやってくれよ」

 そう言って老人の帽子の中に金貨を投げ入れたのは、銀髪の青年だった。引き込まれそうな空の青と闇のような黒いオッドアイが印象深い上に、女性と見間違えてもおかしくないほどの容姿をしている。

「金貨を入れてくれたあんたには悪いが、わしは、ひとつの物語を奏でている間は、他の物語は奏でないようにしておるのじゃ」

「それじゃ、3章の予告という感じではどうかな?」

「即興になるがよろしいかな」

 周りから、拍手があがった。




【ルノア=ティア】

 ルノアは、血液があふれ出ている傷口に、白い手を当てる。

「ガイアよ。傷つき倒れし者に癒しの奇跡を」

 しかし何も、起こらない。何度も何度も呪文を唱えるが結果は同じだ。

「ガイア様、力をお貸しください。お願いです。ガイアさまぁぁぁ」



【パンドラ=フィス】

「よろしいのですか?」

「何のことかしら?」

 パンドラは、膝の上であくびをする子犬の頭を撫でながら部下に答える。

「レイバ様は、このところルノア殿の部屋に通っておられるご様子」

「何を心配しておられるのかはわかりませんが、別にかまいませんわ。それどころか、世継ぎでも作ってもらえると助かります」

 パンドラはそう言って笑った。



【ジェニス=ハス】

 ジェニスの目の前に、大槍を構えた黒衣の騎士が立ちふさがる。

「兄さん!」

「ジェニス…… 覚悟はいいか?」

 兄の声は、予想に反して穏やかなものだった。

「俺は、今度こそ兄さんを越える」

 ジェニスは愛用の大剣を兄に向かい構えた。

「守るべきものでもできたのか? 良い目をするようになった。しかし!」

 ジェニスは、突然襲ってきた兄の一撃を、大剣の腹で受け止めた。



【ディーヴァ】

「全軍、手を出すな! 一騎打ちである!」

 よく通る。ディーヴァの声に一瞬にして周りが静寂に包まれる。

 敵も味方も、驚くほどその動きを止めた。ディーヴァは満足げに笑う。

「では、始めようか?」

 ディーヴァは拳撃用に改良されたガントレットを、開始の合図のごとく打ち合わせた。



【ダストレス=ヒューガー】

「ルノア殿は、レイバ様をどのように思われていますか?」

 ヒューガーの問いに、ルノアの顔が朱に染まった。だがその口は、はっきりと答えた。

「とても大切な方です。普通の恋人同士のような関係ではないかもしれませんが、私はレイバ様を愛しています」

 ヒューガーは満足したように頷いた。

「レイバ様を頼みます」



【フレイア=セレイ】

「何故、そんなことを言うのですか。私は、私は、指揮官です。部下を失ったことも初めてではありません。私達は戦争をしているのです。レイバ様がおっしゃるとおり、勝敗は兵家の常、こんなことで落ち込んでいたら…… 落ち込んでいたら」

 ヒューガーは何も言わずに、フレイアを抱き寄せた。

「ヒューガー様、駄目です。お召し物が汚れます」

「かまわぬ。それにこの部屋には俺とお前しかいない。それに、こんなことしかしてやれないからな」

「皆・・ごめんなさい・・・ごめん・なさい・・・・ごめん・・な・・さ・・・い・・・」

 死なせてしまった部下達に、詫びながら泣くフレイアを抱きしめたまま、ヒューガーはフレイアの髪をただ撫でていた。



【ハット=レプスリー】

「ルノア様、お願いがあります。ヴァネッサを国に帰してはもらえませんか」

 ハットが地に伏してルノアに訴える。

「そのことは……」

「無理は承知で言っております。どうかレイバ様に口添えを」

 ルノアは困った表情を浮かべる。

「聞き入れてもらえますなら、私はここに残ります。私のすべてをレイバ様の為に使います。どうか口添えを」



【ヴァネッサ=クロウリー】

「何故だ? 何故、私だけ戻れと言うのだ。答えろ! ハット」

 ヴァネッサの言葉には激しい怒りが含まれている。

「あなただけではありません。他の人たちも一緒ですよ。帰れば武将として復帰できます。貴女であれば、クロウリー家の再興も可能でしょう」

 ヴァネッサの怒気を受け流し、ハットはいつもの、のほほんとした口調で答える。

 ヴァネッサはハットの胸に飛び込んだ。ほとんど、タックルに近いものだったが、ハットは倒される事なくヴァネッサを抱きとめる。

「嫌だ。嫌だ…… お前が残るのに、ど、どうして私が帰れる。どうして、私の気持ちに気づいてくれぬ。お前は残酷な男だ。私は、初めてお前に会ったときから、こんなにも、お前を……」

 ヴァネッサの涙が、ハットの胸を濡らした。



【グロウ】

「ルノア行く。ここは、お、俺が守る」

「グロウ」

 ルノアはまだ躊躇していた。

「戦、止めたい。グロウも、お、同じ。ルノア行く」

「ごめんなさい。グロウ、ありがとう」

 グロウは、ニコリと笑った。



【ミレイ=アレス】

 ミレイは、ジェニスの手を取ると自分の腹部に当てた。

「この子の為にも、生きて帰ってきて下さい。戦死なんて私が許しませんからね」

 ジェニスは、驚きの余り言葉も出ない。それでも、数瞬のあとミレイをその隻腕で抱きしめた。

「ちょっ、ちょっと、そんなに力をこめられると、苦しいです」

 ジェニスは腕の力を緩める。

「すまなかった。必ず帰ってくる。君と子供を抱く為に。絶対に。約束だ」



【ルナ=ハーフムーン】

 癒しの光、回復魔法の輝きがいつもより暗いことに、ルナは気が付いた。

「ルノア様?」

「気が付いちゃった? 後10日もしないうちに、魔法がつかえなくなります」

「そうですか」

 ルナは微笑みながら言った。原因はわかっている。どうやら、自分がやきもきする必要はなかったようだ。



【リュエル=セレス】

「ヒルト。僕は君が嫌いだ!」

 リュエルは、言い放った。

「だが、君がこれを、アイオリア様に届けてくれ。僕ではあの激戦区を走り抜けるのは無理だから」

 ヒルトはリュエルから本国から送られてきた命令書を受け取る。

「アイオリア様を頼む!」



【ゼロ】

「………」

「なにしているのよ?」

 星空を見上げているゼロに,フェンリアが声をかける。

「星を見ていた」

 ぶっきらぼうに答えるゼロ。

「それは、分かるけど」

「星が、落ちる」

「えっ?」

「大きな星が、ふたつ落ちる」



【フェンリア=ヒルデガルド】

「ルノア……」

 フェンリアは、ルノアを見た。そして、その腕の中にいるのは……

「姉さん、ごめんなさい…… 今、余裕なんてないの」

「ルノア」

「ごめん、一人にして」

 フェンリアは、なすすべもなく最愛の義妹いもうとから離れた。何もしてやれないことが何よりも辛い。

「フェンリア」

「ゼロ。私は何もして上げられなかった。私はどうしたらいいの? あの娘に何をしてあげられるの? 何を言ってあげられるの? わからないよ、わからない。教えてよ、ゼロ」

 ゼロに、彼の強さに甘えている。それが、わかっていても言わずにはいられなかった。

「君が、君が思ったことを言ってあげればいい。してやればいい。きっと通じる」



【カーライン=ライア=リュティア】

「今回は、僕も戦場に出る。よろしく頼むアイオリア」

「本気ですか?」

「こんなこと、冗談では言わないよ。ミシェイルを泣かしてしまうからね」

 さらっと、のろけるカイン。

「あぶなくなったら、逃げるよ。それに、僕はアイオリアを信頼している」



【ミシェイル=アントネッリ=リュティア】

「アイオリア様の言うことを聞いて、怪我しないで。それから無茶もだめ。それから、それから」

「ちょっ、ちょっとストップ。心配してくれるのはありがたいが、僕は初めてのお使いに出る子供じゃないよ」

 カーラインは、苦笑を浮かべる。彼の大切な新妻のこういうところは、出会った頃から変わらない。

「で、でも、貴方は無茶ばかりするから」

「大丈夫。ちゃんと帰ってくるからさ。帰ってきたら、子供作ろうか?」

 耳元で呟いたカーラインの言葉に、ミシェイルの顔が紅く染まった。

「な、な、な、なにを人前で言うのよ」

 少しはなれたところに控えているメイド達には聞こえていないはずだが、慌てる妻の姿に声を上げて笑う。

「あはは、それじゃあ、行って来るよ」

「ガイア様、あの人を、カインをお守りください」

 ミシェイルには、祈ることしか出来なかった。



【ウッド=ハス】

「ウッド様お呼びでしょうか」

 ミュラーは、黒衣の聖騎士の前に出る。

「今度の魔族征伐。我が聖騎士団からも1000騎派遣する」

「1000も、ですか?」

 1000騎、聖騎士団の約半数に当たる。

「そうだ。そこでその旨、アイオリア殿に伝えてほしい」

「王国軍の下にはいるのですか」

「いや、いつもどおりだよ。だがスジは通さなければなるまい」

 そう言い放ち、酷薄に笑う。



【シャリアール=ライ】

「ほら、リュエル飲め!」

 リュエルの杯にシャリアールが酒を注ぐ。

「あ、明日は、魔王軍との決戦・・」

「馬鹿野郎、だから飲むんじゃねえか」

 シャリアールは、酒瓶から直接酒を煽る。

「この戦が終れば、おめぇも嬢ちゃんも騎士に叙勲されるかもな」

「僕とヒルトがですか?」

 一瞬、顔をしかめるリュエル。その一瞬の表情をシャリアールは見逃さなかった。

「なんでぇ、まだ嬢ちゃんが、アイオリアの命を狙っていると思っているのか?」

「いえ、そんなことは」

「アレはな、命を狙っているヤツの目じゃねえよ。本当の恋をしているヤツの目だ。お前さんにもそんなヤツが現われるといいのだがなぁ」



【ミュラー=ミュウ】

「ルノア殿。従軍神官ミュラー=ミュウと申します」

 ルノアからの返事はないが、ミュラーは構わずに続ける。

「こちらには、停戦交渉の準備があります。我が軍も終戦を望んでいます」

「ディーヴァ殿」

 ルノアは、獅子の頭をした将軍を呼んだ。この場にいる者の中で彼が、一番地位が高い。

「はっ」

「よろしいでしょうか?」

「ルノア殿のお考えのままに」

「停戦交渉…… 受けましょう。ただし、詳細は明日」

「分かりました。では、明日こちらから使者を送ります」



【アイオリア=ロウ】

「ヒ、ヒルト」

 アイオリアの目の前には、一糸纏わぬ少女の姿があった。

 はじめてあった時の、やせて細い少年みたいな裸身ではなく、やわらかな丸みをおび。蛹が蝶へと羽化するように、急速に大人の身体に変化を始めていた。

「私は、アイオリア様が好きです。今日は、抱いて欲しくて来たのです」

 それだけ言うと、俯いてしまった。よく見ると肩が小刻みに震えている。まだ、寒いという季節ではない。

 アイオリアは、ヒルトの裸身に自分の着ていた上着をかけると、ヒルトを抱きしめた。



【レイバ=レスト】

「でや!」

 裂帛の気合と共に、両手に持った剣を振り下ろす。

 ガキン! と金属同士が、ぶつかり合う音が響いた。

「やるな!」

レイバが嬉しそうに言う。

「僕はこんなところでは死ねない」

「それは、同感だ! だが、お互いに剣を引くという選択肢は?」

「悲しい事に、宮仕えだ」

 アイオリアが剣を構え直しながら自嘲ぎみに答える。

「行く所まで行くしかないか?」

「そうだな」

 両者ともに動きが止まる。息が詰まりそうなほどの静寂が辺りを包む。ここが戦場であることを忘れてしまいそうだ。




聖魔戦記前奏曲第3章

連載開始予定は未定(年内(2008年)は多分無理)です(笑



第三章の開始時期は未定です。

転職やら引越しやらの予定がありまして(笑

年内の復帰は厳しいです。


まことに勝手ながら、もし聖魔戦記第三章を、見つけていただいたときはお付き合いしてもらえるとうれしいです。

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