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水銀の錬金術師と、姉を殺しにきた妹  作者: 光
第三章 姉と妹と

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最終話 新しいパートナー

 黒い霧が満ちている。静まり返ったストリートの中心を、ベンバドルは一人歩く。


 カタッと、背後で小石が転がった。気配を感じるが、それが悪夢ではないと知っていたので、ベンバドルは振り返らなかった。ここのところ毎日だ。悪夢と出会う日も、そうでない日も。夜更けに出歩くと決まって、子猫に付きまとわれる。


 今日になってようやく腹が決まり、ミラの真似でもするか、と思っていた。


「おーいガキンチョ、そんなとこで遊んでたら危ねえぞ」


「えっ、気づいて……うわっ、わ、と、とと、ふう」


 ゴミ箱が転がって、その影からイーディスが飛び出してきた。呆けた顔をしているので、手招きしてやると、ちょこちょこと歩いてきた。身体を斜めにして「偶然だね、こんなところで、ほんと、偶然……」とかなんとか言ってるが、まあ気にしないでおこう。


「お姉さまが待ちかねてるぜ、こんなところでなにしてんだ?」


「ね、姉さまの世話にはならないから。一時的に協力したけど、また完全に和解したわけじゃないし……むしろぎゃふんと言わせなきゃみたいな……」


 イーディスは身体の前で手を組んで、指と指を合わせたり、絡めたりほどいたりしていた。


「となると、お前、フリーだな?」


「ふりー?」


 きょとんとしてイーディスは大きく首を捻った。


「パートナーに捨てられちまってさ、新しいの探してたんだ。やってみねえか?」


「え、」イーディスは腑抜けたツラで、自分のことを指差している。


「いいの……じゃなくて、イーディスが必要なの?」


「ああ。ま、俺との共同生活が、嫌じゃなければだけどな」


 ポケットに手を突っ込んだまま屈んで、ふへへ、と意地悪な大人っぽく笑ってやった。


 イーディスの顔が、段階的に笑顔に変わっていった。感情を隠さない、子供らしい良いツラだ。が、プライドが介入したと見えて、取り繕う。


「なら、イーディスがパートナーになってあげる。お兄さんだけじゃ、また死にかけるかもしれないしね」


「素直じゃねえな。さすが姉妹、そっくりだ。ま、そういうことなら、契約成立だ」


 右手を差し出すと、イーディスはなぜか服で手を拭いてから、その手を取った。


「うん……うん、よろしくねお兄さん! 姉さまなんて目じゃないくらい働いてあげる!」


「おう、姉さまに妬いてもらおうぜ」


 ふははと笑って、小さな頭を撫でた。子猫は嫌がって頭を振るが、そばを離れようとはしなかった。


 雲間から月が顔を出して、銀色の髪飾りが煌めいた。


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