㉑ 考察
雷獣が消え去った後も、三人はその場で、今見たモノの正体について、それぞれの見解を出し合った。見た印象としては、悪魔というよりは、神の遣いに近い感じがした。でもそれは外見上のイメージに過ぎない。色々話し合ってみても、結論は出なかった。そして最終的には、由理子がテレパシーで話し掛けてみるしかない。という結論になった。
するとまた近くに、ドーンという音ととともに空が光り、川岸の柳に稲妻が落ちて火を付けた。柳の上には、先ほどの雷獣が再び姿を現していた。
三人は急いでそこへ走り寄る。
そしてすかさず由理子が、テレパシーを雷獣に送ってみたのだった。
『アナタは何がしたいの?ニンゲンに何か伝えたい事が有るの?』
すると、雷獣から返ってきた答えはこうだった。
『空に気をつけろ。空から目を離すな。もうすぐヤツラが帰って来る。よいか。これはオマエに対する予言……つまりメッセージだ。しかと伝えたぞ。他の者には、他のメッセージを伝えるつもりだ。では、さらば。』
またもや、辺り一面が光り、続いてドドン!という轟音が……そして雷獣は再び居なくなった。
「どうだった?何か話は出来た?」
鷹志が、おずおずと尋ねる。
「それが……変なのよ。」
由理子は鷹志と雪子に、今しがた雷獣との間で交わされた、心の中の会話の内容を伝えた。
「じゃあ、この江戸時代の日本にも、雷獣のテレパシーを受け取れるニンゲンが、居るって事になるわね?」
話を聞いていた雪子がそう言った。
「正式な記録には残っていませんが、多分、神社の巫女や宮司などの神職なら、啓示として受け取れるのでは?……それに一般の人々の中に、無自覚にそんなチカラを持っている人が居ても、不思議ではありませんからね。」と鷹志も自分の見解を述べた。
「どうやらアレを、天空から遣わされた伝令として、解釈するしかないようね?」
雪子が結論めいた事を言った。
(そこは敢えて"神から"ではなく、"天空から"と言うんだな。)
鷹志は思ったが、黙っていた。
「……アレは、まるで私たちが何者か、分かっているようでした。」
最後に由理子がそう言ったところで、この調査はお開きにする事となった。
三人でビートルに戻ると、雪子が帰還シークエンスのスイッチを入れた。
後部座席で、由理子の隣に座った鷹志が、ポツリと呟く。
「アレにとって、時間の概念は無意味なようでしたね?まるで、四次元か五次元の住人のような振る舞いでした。ひょっとして、我々より高次の存在からの、使者だったのかな?」
それに対して、答を持つ者は、車内には誰も居なかった。しかし、皆黙り込んで、同じような事を考えていた事は、確かだった。




