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「神獣と妖怪とサン・ジェルマン」(セーラー服と雪女 第29巻)  作者: サナダムシオ


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⑯ 怪物の正体

 大王の軍勢が、全てその場から立ち去ると、伯爵と京子は、クルマを地上に降ろして下車し、怪物の跡をつけて、林の中に入って行った。 


 すると二人はそこで、信じられないモノを見た。

 大きな岩の上に、まるでニンゲンのような姿勢で座った怪物は、おもむろに前脚を頭にやると、そこにハマっていた、ノコギリのようなトゲトゲが付いた兜を、まるでカツラを取るように脱いだのだ。


 結果的にその姿は、ただの大きな、ホワイトタイガーになったのだが、本当に驚くのはそこからだった。

 何と、その大きなホワイトタイガーのカラダが、段々と縮んで行き、同時に毛皮も無くなり、最後には白くてツルツルな素肌で銀髪の、可憐な少女の姿になってしまったのだ。やがてその少女は、ナニ食わぬ顔で、近くに隠してあった衣服を纏い、岩の上から地上に降りて来たのである。


「こんにちは。」

 そのタイミングを見計らって、最早、怪物でも何でも無いその少女に、京子が声を掛けた。もちろん、左腕のデバイスの自動翻訳機能を使っているから、彼女にはプラークリット語に聞こえているはずだ。


 少女は突然の来訪者に、カラダをビクッと震わせながら「誰!?」と言った。

「ああ、そんなに警戒しなくてもいいのよ。私たちは、ただの通りすがりの旅の者よ。」

 京子は、出来るだけ穏やかな声で、そう言った。 


 伯爵も隣でにこやかな顔をして、会釈をして見せた。

「私はサン・ジェルマン伯爵という者です。そして先程から話し掛けているこちらは、妻の京子です。私たちは、世界の東の果ての、日本という国からやって来ました。」


「それにしても貴女、素敵な変身能力をお持ちなのね?」

 いきなり核心に触れる京子。

「……見られたからには、貴女たちを、生かして帰す訳にはいかないわ。」

 眉を釣り上げて、そんな事を言い出す少女。


「でも、私の見立てによると、あの変身状態で大きなチカラを使うと、しばらくはアレに成れないのじゃないかしら?」

 相変わらず冷静な調子で語る京子。


「……クッ!」ほぞを噛む少女。

「まあ、まあ、京子さん、そんなに責め立てたりしないで……。」とりなす伯爵。

「あら、アタシはただ、冷静にお話をしているだけよ?」


「でも、その子が困っているでしょう?」

「ああ、ごめんね?私、まわりくどい喋りが苦手なのよ。悪気は無いのよ?」

 気づくと少女は、涙目になっていた。

 彼女がさっきまで、あんなに恐ろしげな怪物だった事が、信じられなくなる。


挿絵(By みてみん)





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