⑪ 対決
山道を少し歩くと、カーブした先に小高い丘が見えて来た。そしてそこに鎮座する存在が、イヤでも目に飛び込んで来たのだ。
ソレは有り得ない姿の生き物だった。
カラダの前半……つまりニンゲンなら、上半身にあたる部分がオオワシ。そして、カラダの後ろ半分がライオンのパーツという、異様な幻獣だった。
ただキメラというだけでもオカシイのだが、鳥類と哺乳類を、シームレスに繋ぎ合わせるというところに、羨望と嫉妬がない混ぜになったような、悪趣味極まりない、作り手の歪んだ心を感じる。
しかもモンダイなのはその足元だった。貨幣の形のモノや粒のモノ、果ては、ありとあらゆる貴金属の形をしたモノまで。たくさんの金……つまりゴールドが、山積みになっていたのである。
前述のように、この道は交易の要所になっている。多分つい先程まで、次から次へと、道行く者たちから、金を奪って来たのだろう。そして恐らく、コイツを派遣したのは爬虫類族。しかも、こんなに悪どい手段を好むのは……。
「……アラハバキね?」
雪村が考えていた事を、由理子が口にした。
あらあら、すっかり兄妹で、以心伝心ね?
少しだけテレパスの素養が有る、弓子はそう思ったのだった。
「さて、どうする?お望みとあらば、一瞬で捻り潰せるけど……。」
雪村が妹に尋ねる。
「もちろん、生け捕り希望です。この子に罪は無いわ。だって、金色のモノを好む修正を、奴らに利用されているだけなんだもの……。」
由理子は答えた。
「そうね。ほんとに無垢な魂の持ち主のようだわ。」
弓子も、そんな感想を述べた。
「よし、二人がそう言うなら、決まりだな。」
雪村は決断した。
彼は躊躇なく、つかつかとグリフォンに向かって歩み寄って行く。
幻獣は唸り声を上げて、彼を出迎える。
そして雪村がリーチ内に入ると、ヤツは大きな翼で羽ばたきながら、鋭い鷹の爪のついた前足を振り回して、攻撃して来た。そこらの隊商なら、荷物を放り出して、一目散に逃げてしまうところだろう。だが雪村の居る半径2m以内の範囲には、爪は届かない。何故なら彼が、鉄壁のバリヤを張っているからだ。
グリフォンの顔に、困惑の色が浮かぶ。
そんな幻獣をしり目に、涼しい顔をした雪村は、ヤツのライオンの形をした下半身の方に回り込んだ。
「やっぱり……思った通りだな。」
彼は呟いた。何故ならグリフォンの右の後ろ脚が、オリハルコン製の丈夫な鎖で、とんでもなく大きな鉛の塊に繋がれていたからだ。




