褰裳(想いを誘う女/救いを求める民)
褰裳 引用14件
恋歌 挑発 思わせぶり 鄭昭公批判 公子突批判 祭仲批判
子惠思我 褰裳涉溱
子不我思 豈無他人
狂童之狂也且
あなたが私を
思ってくださるのなら、
この裾を持ち上げ、
溱水を渡りましょう。
もしそれが叶わなくても、
まぁ、あなた以外にもね?
悪い人は悪いことをするものよ?
子惠思我 褰裳涉洧
子不我思 豈無他士
狂童之狂也且
あなたが私を
思ってくださるのなら、
この裾を持ち上げ、
洧水を渡りましょう。
もしそれが叶わなくても、
まぁ、あなた以外にもね?
悪いひとは悪いことをするものよ?
○国風 鄭風 褰裳
あえて女性としておきたいものであるな。これはまたいい思わせぶりである。「あーあ、あなたにとって私は得難い宝でしょうに。そんな私を手放しても大丈夫なのかしら? 残念ながら私は引く手あまたなのよ? そしてあなたは想いを遂げられないことになってしまうの、狂おしいわよね?」であるな。これはこれは、ごちそうさまである。
○儒家センセー のたまわく
「思見正也。狂童恣行,國人思大國之正己也。」
ここまでにも紹介している鄭荘公の息子、忽は、弟の突、およびその協賛者である祭仲と権力争いを繰り広げた! 鄭国人は諸外国に介入してもらい、このグダグダな状況を解消してほしい、と願った! 「諸外国」が「鄭国人」を思ってくれるなら裾を掲げて、というわけである! 「思ってくれない」のなら別の国に頼ろう、というのである! 「狂童之狂也且」とはすなわち、この動乱を引き起こした突及び祭仲の振る舞いを言うのである!
■これも割とただの慣用句
ここでも「裾をまくって」の意味合いの雅語として用いられておる。それ以上の含意を拾うのは難しそうである。
・後漢書9 献帝 注
裹衣褰裳,當還故鄉。聖主愍念,悉用補郎。
・後漢書52 崔駰
褰裳濡足,冠挂不顧。
・後漢書64 盧植 注
褰裳入山林之中,見女貞之木,
・後漢書71 皇甫嵩
女子可使褰裳以用命,況厲熊羆之卒,因迅風之埶哉!
・三國志10 賈詡 注
如此則攻守無堅城,不招必影從,雖兒童可使奮空拳以致力,女子可使其褰裳以用命,況厲智能之士,因迅風之勢,則大功不足合,八方不足同也。
・三國志35 評
故谷風發而騶虞嘯,雲雷升而潛鱗驤;摯解褐於三聘,尼得招而褰裳,管豹變於受命,貢感激以回莊,異徐生之摘寶,釋臥龍於深藏,偉劉氏之傾蓋,嘉吾子之周行。
・晋書35 阮咸 従子 阮脩
意有所思,率爾褰裳,不避晨夕,至或無言,但欣然相對。
・晋書70 評
卞壼束帶立朝,以匡正爲己任;褰裳衛主,蹈忠義以成名。
・晋書98 桓温
此事既就,此功既成,則陛下盛勳比靈斯前代,周宣之詠復興當年。如其不效,臣之罪也,褰裳赴鑊,其甘如薺。
・宋書27 苻瑞上
遷于聖賢,莫不咸聽。鼚乎鼓之,軒乎舞之。精華以竭,褰裳去之。
・魏書19.1 元洛侯
皓褰裳將上,匡諫止,世宗推之令下,皓恨匡失色。
・世説 言語74
雖未覩三山,便自使人有凌雲意。若秦漢之君,必當褰裳濡足。
・世説 排調7 注
子所謂天刑地網,剛德之尤,不登山抱木,則褰裳赴流。
■歌会のお話
左伝 昭公16
鄭六卿餞宣子於郊。宣子曰。二三君子請皆賦。起亦以知鄭志。子齹賦野有蔓草。宣子曰。孺子善哉。吾有望矣。子產賦鄭之羔裘。宣子曰。起不堪也。子大叔賦褰裳。宣子曰。起在此。敢勤子。至於他人乎。子大叔拜。宣子曰。善哉。子之言。是不有是事。其能終乎。子游賦風雨。子旗賦有女同車。子柳賦蘀兮。
鄭の六卿が晋の大夫、韓宣子を見送る際の歌会における一幕である。日頃鄭を圧迫する立場の晋人である韓宣子より「鄭人の志を知りたい」と求められ、六卿がみな鄭風を歌う、と言うものである。ここで①子齹が『野有蔓草』にて友好関係の確認と晋への賛美を。②子産が『羔裘』にて韓宣子個人への賛美を。③子大叔が『褰裳』にて「鄭を守ると約束するなら行動を、さもなくば他国に頼る」と。④子游が『風雨』にて不安の募る中晋の保護を取り付けられて嬉しい、という意思表明を。⑤子旗が『有女同車』にて晋鄭の協調の美しさを。⑥子柳が『蘀兮』にて「鄭は晋に従う」という服従の意思を表明した、とされる。
毛詩正義
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