干旄(憧れの士大夫を見送る/文公は偉大)
干旄 引用11件
立派な君子 敬意 名馬 衛 衛文公 善を讃える
孑孑干旄 在浚之郊
素絲紕之 良馬四之
彼姝者子 何以畀之
浚の村で、旗が高くはためく。
真っ白な手綱で結ばれた
四頭立ての馬車。
車上のあの立派な方に、
はて、何を差し上げたものか。
孑孑干旟 在浚之都
素絲組之 良馬五之
彼姝者子 何以予之
浚のまちで高くはためく旗、
描かれるのは、ハヤブサ。
旗は真っ白な組みひもに彩られ、
車を引く良馬は五頭。
馬上のあの立派な方に、
さて、何を差し入れよう。
孑孑干旌 在浚之城
素絲祝之 良馬六之
彼姝者子 何以告之
浚の城で高くはためく旗、
描かれるのは、キジ。
旗は真っ白な組みひもに彩られ、
車を引く良馬は六頭。
馬上のあの立派な方に、
さて、何と言祝ごう。
○国風 鄘風 干旄
立派な車に乗っておるお方を見送る。その称賛ぶりがどんどん度を越していくのがなかなかに愉快である。馬車は四頭立てで士大夫、五頭立てで君子、六頭立てで天子のものなのだそうである。その馬車を見かけるのも街の片隅、中央通り、ついには城の側とグレードアップしていく。士大夫様カッコイイの思いが白髪三千丈がごとく爆発しておるのを感じられる。
○儒家センセー のたまわく
「美好善也。衛文公臣子多好善,賢者樂告以善道也。」
ここで際限なく馬が増えておるのがキーポイントである! 馬の数が増えれば、御すのはそれだけ難しい! 馬の数、すなわち治めるべき民の数である! 衛の文公は実に見事な統治をなされた、それはまた子弟、臣下の手によるところも大きい! ああ、まこと偉大なるかな文公!
■干旄だったり竿旄だったり
史書でしばしば「竿」旄と書かれるところからもわかるとおり、旗の雅語として機能することがしばしばあるようである。左伝の内容は当詩「何以告之」を紹介するためという、ザ引用という感じであるが、ここでたけかんむりが用いられておるのを見ると、司馬相如のものした『大人賦』が、微妙に当詩を意識して書かれたのだろうとほのめかされることに気付くわけである。気付けるかクソが。そして摯虞は晋武帝の天下統一おめでとうポエム。まんま当詩の題を持ってくるわけであるから、それはもう「衛文公も偉大だったけど陛下の偉大さには到底敵いません!」的なノリとなってくるわけである。
・左伝 定公9
靜女之三章。取彤管焉。竿旄何以告之。取其忠也。故用其道不棄其人。
・史記117 司馬相如
垂絳幡之素蜺兮,載雲氣而上浮。建格澤之長竿兮,總光耀之采旄。
・晋書51 摯虞
耀武六旬,輿徒不疲。飲至數實,干旄無虧。
■漢書地理志の詩の紹介コーナー
漢書28 地理
邶、庸、衞三國之詩相與同風。邶詩曰「在浚之下」,庸曰「在浚之郊」。
いつものやつである。河内で集中的に紹介されておるのは、それだけ河内が「洛陽の玄関口」として機能していた、と言うことなのやもしれぬな。
■召南羔羊で拾い忘れた
羔羊の「素絲五紽」であるが、五紽に気を取られ、その前半を気に掛けておれずにいた。引いてみるとこれ単品でなかなかの採用されぶりである。基本的には「真っ白な絹糸」の性質を拾うもの、となっておる。晋書では「その混じりけのない清らかで素朴なさま」と讃えられておるが、劉禅のそれについてはむしろ淮南子、まぁ蒙求でいいか、の、「墨子が白い糸を見て、これからこの糸は様々な色に染められてしまうのだろう、と嘆いた」という故事を引いたよう感ぜられる。ただタイミングとしては晋武帝司馬炎による荀顗追悼の言葉のタイミングの方が早いであろうから、ここは変に系統立てようとせず、完全に違う用語スタンスであった、と思う方が良いのやも知れぬ。
・三國志33 劉禅
傳曰「素絲無常,唯所染之」,信矣哉!
・晋書39 荀顗
太尉不恤私門,居無館宇,素絲之志,沒而彌顯。
・晋書44 鄭袤
退有清和之風,進有素絲之節,宜登三階之曜,補袞職之闕。
・晋書62 評
六戎橫噬,交肆長蛇之毒,於是素絲改色,跅弛易情,各運奇才,並騰英氣
・晋書91 虞喜
往雖徵命而不降屈,豈素絲難染而搜引禮簡乎!
・宋書14 礼一
遂令陶鑄闕日用之功,民性靡素絲之益,亹亹玄緒,翳焉莫抽
■まばゆく美しいお方
・後漢書10.1 和熹鄧皇后 注
姝,美色也。詩曰:「彼姝者子。」
鄧皇后が入内したときの様子を、後漢書はこう記す。「后長七尺二寸,姿顏姝麗,絕異於眾,左右皆驚」。でかいな。この姝麗の注として当詩の用いられ方が引かれるわけであるが、史書で等文字が用いられておるのはこの箇所しかない。いや使われることもあるのだが、割と「妹」時の誤記である。こうした混同の生じやすい文字は割合淘汰されていったのではないか、とも思わずにはおれぬ。
毛詩正義
https://zh.wikisource.org/wiki/%E6%AF%9B%E8%A9%A9%E6%AD%A3%E7%BE%A9/%E5%8D%B7%E4%B8%89#%E3%80%8A%E5%B9%B2%E6%97%84%E3%80%8B




