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剣と魔法のセカンドワールド  作者: K.T
第二話 偶然の再会
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偶然の出会い



 エレファントバッファローを『ワンド A (インフェルノ)』のカードで倒した後、素材を取るために倒した場所まで行くとエレファントバッファローが凶暴化した時の黒の角に赤い模様が入った角が2つと魔核が1つ落ちていた。それらを拾い女性プレイヤーの所に戻ると、未だ唖然としたまま女性プレイヤーはエレファントバッファローがいたところを見ていた。


「大丈夫ですか。まだ立ち上げれないですか?」


 声をかけられたことに女性は反応してふらつきながらも立ち上がると、こっちに詰め寄ってきた。


「あ、貴方は一体何をしたの!あんな強力な魔法どうやって・・・貴方って、剣士じゃなかったの!?」


「まあ、とりあえず落ち着いてください」


 両手を前にしてなだめるように距離を取りつつ落ち着くように伝えた。


「・・・そうだね。ごめんなさい」


 女性プレイヤーは一度大きく深呼吸をして気持ちを落ち着つけたのか、掴んでいた服を放しながら一歩下がると頭を下げて再度お詫びとお礼を言ってきた。


「今回は私のせいで迷惑かけてごめんなさい。そして、助けてくれてありがとうございます」


「いえいえ、手助けしたのは事実ですけど迷惑はかかってないですよ。俺としても戦っていない草原の魔物と戦うことが出来て良かったですから。でも、なぜあんなことになっていたかぐらいは聞いてもいいんですかね?パーティーの壊滅から逃走するようになったのではないということは、なんとなく分かるんですが・・・」


「そうですね。巻き込んでしまったわけだから私の話せる範囲で全部話すね。最初は―――――」



 女性の話を聞いた内容を簡単にまとめると、街で3人組からパーティーの勧誘を受けて断ったがしつこくついてくるようになったのが発端らしい。断っているときに3人組とはリアルでの知り合い?だったらしく、それが分かってからはさらにしつこく付きまとってきたので、逃げるように街の外に出て道沿いから外れて移動していると、追って来ていた男が魔物を引き連れて追われるようになったという事らしい。


 それにしても話を聞いていて思ったんだが、戦闘中はよく見ていなかったから分からなかったけど、この人かなりの美少女キャラなんだな。ゲームのキャラメイクで作ったにしては違和感がないほど。だからだろうか?美人だから目を付けられて、さらに知り合いだったから余計に付きまとってしまったのだろうか・・・・・なんだか最近にも似たような話をどこかで聞いたような・・・まあ、今はいいか。


「そうですか。それにしても知り合いなのにひどいことしますね」


「知り合いじゃないです。ただの同学年ってだけだから・・・」


「同学年?」


「あっいや、何でもないです。(ゲームの中でまで付きまとわれるなんて、どこまで私を困らせるの)」


最後に小声で何か言った後、改めて怒りが湧いてきたのか見てわかるほど怒っているようだった。


 しかし、女性プレイヤーは素早く振り返って後ろにいた子を捕まえるようにして、俺から隠れるように女性の後ろにいた精霊のホムラを自分の前に抱き上げて持ってくると、左手で抱きしめて右手を頭にのせて撫で始めた。最初は驚いたような顔をしていたホムラも撫でられているうちに気持ちよさそうにしていて、女性もホムラを撫でているうちに怒りが収まってきたのだろう徐々に笑顔になっていった。


 怒りが収まったのはいいけど、癒し動物の動画を見て笑顔になっている姉さんみたいな顔をしているな。一度指摘したら大変な目に遭ったから触れないようにしようとは思うけど、少なくとも赤の他人に見せる顔ではないと思うんだけどな。


「ありがとうホムラ。MPが回復したら、また呼び出すからね」


 数十秒ぐらい撫でた後、満足したのかそう言うと抱きしめていた手を放して、精霊のホムラは一瞬で体全体が大きく燃え上がるように火が広がっていくと、消えるようにしていなくなった。


 さてと、この人はもう大丈夫そうだしさっきの火柱をもし他の人にも見られていたら誤魔化すのが面倒だから、素材の配分だけして今日は予定より早く街まで帰る事にするか。まだ時間はありそうだけど、流石に切り札がない状態で森に入るのはやめておきたい。


「それでは、エレファントバッファローを倒した時の素材を配分したいのですが。エレファントバッファローから取れた素材がこれなんですけど、分配はどうしますか?」


「エレファントバッファローのドロップアイテムなら貴方に全部あげるけど?最終的に倒したのは貴方だもの、戦闘に巻き込んだのも私なんだから全部貴方の物でも私は問題ないよ?」


「いえいえ、あの状態まで追い詰めることが出来たのは貴女の攻撃のおかげなので独り占めは出来ません。それでは俺が一番欲しいのが魔核なので、この魔核だけもらっていいですか?」


「貴方がそれでいいって言うのならいいんだけど・・・」


 納得はしていない様子ではあったが、残りの素材を女性プレイヤーに渡して受け取らせると、俺は魔核をアイテムボックスにしまって立ち去ろうとした。


「・・・ねえ、貴方。まさかとは思うけど、このまま立ち去ったりはしない・・・よね?」


「・・・」


「剣で戦っていた貴方があんなに強力な魔法を使える事は冒険者だから聞かないでおくけど、協力して魔物を倒した仲としてお互いの自己紹介ぐらいはしてもいいと思うんだけど、どうかな?」


「・・・・・」


 完全に立ち去るつもりだったのでどう言い訳しようか考えていると、女性が回り込んできてじっと顔を見ながら聞いてきた。


「・・・ねえ、貴方どこかで私と会ってないかな?」


「・・・?、いえ、初めてだと思いますが」


 間違いなくゲーム内で出会った事はないはずだ、この世界に来て話した女性は最初に説明してくれた人工AIのアンナさんと自称北通り一の看板娘アイリの親子とギルド職員の女性ぐらいで、プレイヤーの人達とは話した事すらないはず。


 何かを確認するようにずっと見てくるので自ずとこちらも女性プレイヤーを見ていたら、違和感はあるけど確かにどこかで見たことがあるような気がしないでもない。

 違和感の正体が何なのか悩んでいると、女性プレイヤーはこちらを見るのをやめてギルドカードを見せながら自己紹介を始めてしまった。さずがに無視して立ち去るわけにもいかなくなってしまった。


「それじゃあ、自己紹介がまだだったわよね。私の名前はリーナ、それで貴方の名前は?」


 相手が名乗ったからこちらも名乗らなければ失礼だという一般常識があるのは分かるが、ここで名前を告げることが後々非常に面倒な事になると俺の予感が告げているんだが・・・・・偽名を使うことも考えたが、もしギルドカードを見せることになったら偽名を使った事をさらに追及されるともっと面倒になると思いやめたのだが色々考えた結果、結局上手くごまかせる方法が思いつかずそのまま名前を伝えることにした。


「え~っと、・・・・・シュウです」


「ふ~ん、シュウね・・・(名前が同じで顔も同じ、髪は少し違うけど、それに声は間違いない・・・となると)」


 リーナは何かを考えながら観察するように俺の顔を見ると唐突に話し始めた。


「あと2~3分ぐらいで街に戻れるぐらいまで戦える魔力が戻るんだけど、それまでちょっと愚痴に付き合ってくれないかな?」


 あれ、なんだかすごい既視感を覚えるんだが。今すぐ全力でこの場から立ち去った方がいいと俺の勘が告げている。


「実はね、さっき話した事と似たようなような事が現実でもあったの。困っていた所を助けてくれた二人がいてね。その時に助けてもらった同級生の男の子に解決策があるかもしれないって言われて、藁にもすがる思いでお願いしていたの」


「・・・」


 話を聞いて違和感の正体がようやく分かった。髪の色と髪型が出会った時とは違っているんだな。そして、話を聞いて昼間(・・)忘れていたこと(・・・・・・・)を思い出してしまった。


「それでね、その男の子に連絡してくれるようにアドレスを渡したんだけど一向に連絡がないのよね。帰った時に一度連絡してねと言っておいたんだけど、ちゃんと休みの日でも連絡していいとも言ったんだけどね」


「・・・・・・」


 ゲームだから汗なんかは流れていないはずなんだけど、ゲームなのに体温が冷えていくのが実感できる。


 あの後は授業に遅れそうになって急いでいたし、しかも次の日は引越しだったから寮に帰るとすぐに荷造りしたりしていて電話する件は忘れてしまっていた。その日の内に携帯は修理に出したんだが二日後には代用品が届くと言われたから、結局あの日には連絡できなかったんだけど・・・さっき昼飯食べた時に代用品の携帯届いていたときに思い出して連絡しておけばよかった。そのうち思い出すだろうと考えて連絡する事は完全に忘れてしまっていた。


「ねえ、どう思う?いつ連絡が来てもいいように待っていたんだけど、一昨日も昨日も今日も連絡がこないの」


「あの、・・・すいませんでした」


「ねえ、どうしてシュウが謝るの?その男子高校生に似ていて、名前の呼び方まで同じだとしてもシュウが謝ることはないと思うんだけど」


 確信をもって聞いているであろう事を笑顔で言ってきている気がするが、まあ確かに日本も広いし俺と同じような出来事があった学生ぐらいいるだろう、日本だけでも1億2千万人以上いてその中の1000人しか参加できていないゲームで会うなんてことはまずないだろうから他人の空似なんだろう、そうに違いない。


「そうですよね。俺が謝るひつよ『ちなみに、その時の男の子にも言ったんだけど私って耳がいいんだよ。顔を見なくても声を聴くと誰の声か当てれるくらいには耳いいんだよね』・・・」


「・・・すいませんでした。色々あって連絡忘れてました」


 あまり変更すると違和感があると思って、一部の髪の色以外変更してないのが裏目に出たなと思いながら頭を下げて謝ると、大きく息を吐くのが聞こえてきた。


「やっぱり、真城くんなのね。別に連絡忘れたぐらいの事で怒ってはないけど、普段は連絡先の登録がない電話は取らないからそのせいでちょっと色々あって、今回の事も含めて少し意地悪したくなっただけ」


 俺が連絡しなかったせいで、何か別の電話で嫌なことがあったのか。


「ほんとに申し訳ない」


「いいわよ。そんなに謝らなくてもこっちでも助けてもらったばかりだからね。それで許してあげる。それにしても、真城くんじゃなくてシュウくんもこのゲームの先行プレイに当選してたんだね」


「まあね、当選発表の視聴者当選で運よく当たって参加することが出来たんだ。それと、別に呼び捨てでいい。ゲーム内でくんづけで呼ばれるのも変だから」


 まあ、当選してから色々あったりして純粋に喜べない部分もあったりはしたんだけどな。


「そうだね、私もリーナって呼び捨てでいいから・・・色々聞きたいこともあるけど、MPも回復できたからまずは街まで戻ってからにしましょう」


「そうだな、ここから早く離れるのには賛成だ」


 そういうと、シュウとリーナの2人は【オノコロ】の街がある方へ歩き出した。




お読みいただきありがとうございます。

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