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第5話

 あれからサティスファクションとのレギオン同士の戦争(たたかい)が始まる3日が経って僕達は指定されていた迷宮とも捉えられる廃工場へと着いていた。時間は指定されていた0時より約20分早く着いている。前にも言ったように、本当は待ち合わせ場所に着く時間は指定の10分前に着くのが1番失礼の無い礼儀正しい着き方だ。だけど、集団で集まって何か大きな事をしようと行動するために集まる場合は20~30分前について集まるのがこれから何かを始めようとする時に相手の作業も、自分達のするべき事への把握と準備をするために1番礼儀正しくこれから始める事をスムーズに取り組む事が出来る時間だ。

「相手のほうはまだ着いてい無いみたいですね?」僕は今現在相手のほうから指定してきた場所にいるのに相手側、サティスファクションが待ち合わせ場所に着いていない事に疑問を感じる。自分達から戦争を仕掛けてきておいてその時間に遅れるのはどういう心境なのか。

「奴らは時間にルーズなようだな」奏が短くそう言う。

「最終的に殺せればそれで良いのさ。そこに至るまでの過程を奴らは重要視していなくて無頓着。結果だけを得られればそこに至るまでの過程はどうでも良い、短絡的で一種の幼稚園児みたいな論理的価値観なんだ」明が自分が今まで読んできた人の考えと心のデータを照らし合わせてそう解説する。いつも思うけど明のこの考えと心を読む特異体質は凄すぎると思うし、まず隠し事は通用しない。

「それでもこれから人を殺したり殺されたりする戦いが始まるんですよね?待ち合わせの時間に20分前に来ないのはこれからの命のやり取りを始めるという現実から周りを見れていないように思えます。僕だったら怖くて気が気じゃないですよ」今の自分の心境も含めて敵であるサティスファクションの心境を疑問視する。

明は肩をすくめて「相手さんは自分達が殺されるかもしれない事への意識が無いのさ。自分達がこちらを殺す事だけを見ていて自分達が殺される事を全く考えていない」と冷静に分析をする。

「そもそも論理的価値観と呼べるかどうかも怪しいけどね。自分達がこの世界の主役で何があっても終わる事のない選ばれた人間で負ける事も殺される事も無い、そう思えているからこそノンオリジナルを人間ではない、とも思えるしノンオリジナルを殺しても何とも思わないんだよ」ネクも明の分析に自分の分析を付け加える。

「ネクもこういう事への考えの理解力って凄く鋭いですよね」僕はいつもネクのこの鋭さに驚かされる。

 何気にネクは明みたいな人の考えと心を読める特異体質は持っていなくても、そうした人の心境や考え方への理解力が高くて凄く鋭かったりする。

「僕は空気が読めない訳ではなくてネガティブなだけだからね。むしろネガティブだからこそ相手の負の感情と思考パターンはある程度自分に置き換えて理解も出来る」目を逸らして普通に聴こえはする音量だけど自信を持った時のようなほどの大きな声では喋らない。

 そんな会話をしているとこの場所に向かって明らかに違法改造した音量のエンジン音を響かせたバイクがこの場に集まる。

「よお!逃げずに来たみたいだなっ!」何十人と集まりバイクから降りてヘルメットを外す。サティスファクションだ。

「逃げずに来たも何も指定時間に遅れているのはそっちなんだけどね」ネクがボソッと言う。それを聞いてサティスファクションのメンバーたちは不快そうに眼付を鋭くする。

「今の発言に対してこちらは謝るつもりは一切ない。ネクの言っている事は事実だしもっと言えば場所も時間も指定してきたのはそちらでこちらにはその拒否権も無かった。その中での待ち合わせ時間の遅刻はとても肯定出来る事ではない」奏も表情を鋭くしてサティスファクションを睨む。

 僕も勇気や麗さんを殺した奴らのレギオンなのでこれから行う事を怖く思うのと同時に正直怒りが頭まで上っていて不愉快だ。それでも今の今までプレイス オブ ソーレスの皆と話している時はまだ怒りを抑えられていたし冷静でもいられた。だけど、こうしてサティスファクションが目の前に現れるとどうしようもないくらいの怒りが湧き上がって殺意を感じる。自分の感情を制御出来ているのかが怪しい。

「はっ!弱者が強者に従うのは当然の事だしお前らが俺達を待つのはそれこそ“礼儀”なんじゃねぇの?」目付きを鋭くしたままこちらを当たり前のように侮辱してくる。

 不快な気持ちをぶつけるのと同時に、不快でなかったとしてもたぶんこれがこいつらの考え方であり姿勢なのだと思う。

 僕はそれを本当に我慢出来ないくらいの不愉快さを声に乗せて、たぶん顔にも出ていると思うけど「集まったのですから早く始めませんか?」といつもなら怖くて絶対に言えないような殺し合いを早く始めよう、という趣旨の発言をしてしまう。こうして自分の口からそのような言葉が自然に出てきた事に自分でも驚く。

「威勢が良いねぇ。じゃあ、お楽しみの戦争(たたかい)を始めようか。本当だったら弱者であるお前らが回るべきだけど、主催者は俺達サティスファクションだ。特別に俺達がこのバイクでこの廃工場の反対側に回ってスタート地点に着く。着いたらそこからお前らに連絡をしてその1分後に戦争の始まりだ!」舌ピが気持ち悪く光る。

「ルールは?何をもって終わりとする?」奏が冷静に訊く。

サティスファクションの面々は不愉快そうに表情を歪めて「そんなんはどちらかが全滅に決まっているだろ!お前らは俺達を怒らせたんだ!死んで罪を償うのが当然だろ!」

「違いねぇ!!」

 ガハハと他の奴らも下卑た笑い方をして、ノンオリジナルを殺しておいてその行いをした自分達が正しくてそのノンオリジナル達を守ろうとこいつらを殺したこちらが悪いと本気で思っているように発言をする。いるようにと言うより実際に自分達が正しいと本気で思っている。

 僕はその事に怒りが湧いて溢れてくる。それと同時に決して正しい事ではなくても、良かったとも思っている。これでこいつらを殺す事に一切の罪悪感を感じずに殺せると思えるからだ。

「ほら。早くDGSを出せよ。登録して反対側に着いたら連絡をしてやっから」

 自分達が強制的に始めてこちらはそれに無理やり参加させられているのに、してやる、と言う考え方と認識に心底クズだと思えた。

プレイス オブ ソーレス全員がDGSを出してサティスファクション達と連絡コードを登録する。

「じゃあ、俺らが反対側に回って着くまでに短かった人生を思い返してみて最後の回想にでも思いふけっていな」マフラーから爆音を響かせて廃工場の反対側に向かって走り出す。

 奏は「最後まで冷静になれ」と気遣ってくれる。

 明も僕の目を見て「こんなこと言うものではないとは思うけど、むしろ良かったと思ってくれ」と何に対してのむしろ良かったと思ってくれ、かを僕は理解している。それは僕の考えと心を読んでの発言な為僕が1番その内容を理解出来るのが自然で当然だ。だから言われた瞬間理解出来たし、今まさに自分の中でそう思っていた事だからだ。

「ありがとうございます。奏も明も、皆にはいつも気を遣っていただいて感謝しています。この戦争でもしかしたら何人か死んでしまうかもしれませんし、一生残る怪我を負う事になるかもしれません。当然僕が死ぬ可能性もあります。ですが、だからこそ絶対に生きて皆でまた集まろうとも思えます。必ず生きて帰ってきましょう!」そう決意して皆の目を見て本心からの言葉を発する。ネクは一瞬僕の目を見ようとしたけどやっぱり逸らされる。そして「ごめん」と言われる。

「それでは各自反逆の意志リベリアス・スピリットを生成してくれ!味方同士への指示はDGSで行う。この廃工場の中の地形が複雑すぎて連携を取るのは難しい。訓練の時にしたように各々が自分達の実力だけで奴らと戦う事になるのがメインの戦い方になる。その上で自分達の出来る範囲でメンバー達に連絡は入れてくれ。連携は取れなくても情報を共有して連絡を取るのは大切な事だ。また、劣勢になったら地形を上手く利用して逃げたり隠れたりする事も正当な戦い方だ。正確に言えば命のやり取りに間違った戦い方なんてものは存在しない。戦争は遊びじゃない」奏が最後に皆にそう言う。

「はいっ!!」

「それな」

「わかっているよ」

「だね!」

僕と明とネクと理愛が言う。

 僕は理愛の口数が少ない事に気付き心配になる。だけど理愛はこのプレイス オブ ソーレスの中で1番意志と心が強い。怖いのはその通りだし皆怖い。怖くて当然だ。それでも今は怒りが頭に上っているとはいえ僕でも殺し合いに対して怖いという気持ちより怒りの感情が強く出ていて、どうにかそれを冷静になろうと抑え込み怖さよりそうした気持ちの方が強く出ている。

 理愛は僕より意志も心も強いので僕より怖いという感情は抑えられているはずだ。それなのに口数が少なくなっている事に何かあったのかな、と思う。

「理愛、何かあったんですか?いつもより怖いという気持ちが強く出ているように見えます」と訊く。

 それを聴いて、ごめんね、と言い「私は殺し合いをする事が怖いのは当然だし、皆その事を怖いと思っていると思う。いつ自分が殺されてしまうのかもわからないもんね。だけど、自分が殺されるのと同じくらい人を殺す事が怖いの。あんな最低な人達でもそれでも命を奪う事を怖いと思うのは当然だと思うの。これから戦う相手に対して情けをかけているとか、同情しているとかいう訳じゃないんだけど」悲しそうな表情をしながらそういうのを見て聴いて、僕は頭に怒りが上っていて人を殺す事への恐怖をいつの間にか頭から抜け落ちていた事に気付きハッとする。それと同時につい先ほどまで明に言われた、むしろ良かったと思ってくれ、と言う発言の意味が崩れてしまい明が「よく聴いてくれ。理愛は 、これから戦う相手に対して情けをかけているとか、同情しているとかいう訳じゃないんだけど、とも言った。その点をしっかりと忘れずに自分の中で言い聞かせてくれ。選人の考えも怒りの感情も間違っていない、正しい感情だ。相手に対して情けをかけたり同情をする必要は全く無いんだ」と言ってくれる。

「余計な事を言っちゃったよね。ごめんね」と理愛は僕に謝ってくれる。

僕は「いえ。僕はほんの数分前まで自覚出来ていた事が頭から抜け出ていて当然の事を当然と認識出来なくなっていました。忘れてはいけない事を忘れてしまっていたんです。それを思い出させてくれて感謝しています」気にしないでください、と言う。

 そしてこの戦争は当然僕達が死んでしまう可能性もある戦いだ。

 そう思うと戦争はただ相手を殺すとか自分達が生き残るとかそんな単純で簡単に理解出来る事ではないのだな、と改めて認識をさせられる。

 それから僕達は各自廃工場の入り口に立ってサティスファクションからの連絡を待つ。

 ピッピッピッ、と連絡が入り全員がその連絡に出る。

「最後のお喋りは悔いの残らないように出来たかぁ?じゃあ今から1分後に戦争のスタートだ!」と汚い声でそう連絡が入る。

 XPS(サポス)を発動して身体能力を高める。反逆の意志リベリアス・スピリットはすでに胸の空間内から生成されている。準備は出来ている。

 これは奏達に教わった事なんだけど僕たちオリジナルが生成出来る反逆の意志リベリアス・スピリットは元々ある機能や性能を飛躍的に上げて作る事は出来るのだけど、出来ない事、例えば銃口から風の斬撃を飛ばしたり近接武器である剣から水を纏って変幻自在に操る、といったような元々が出来ない事を可能にする事は出来ないらしい。勿論それを可能にする仕組みがちゃんとあるのだったらその仕組みや機能を強化して作る事は出来る。

 1分が経ち僕は廃工場に入って大きめの銃にその銃口の下から先端の前方に向かって中くらいのサイズのブレードが付いたガンブレードを構えて五感と神経を強化する。

 廃工場の広さから見てそんなにすぐには相手に遭遇はしないはずだ。つまり最低限の集中は必要でも今の時点でXPSを使って五感と神経を強化して集中しすぎてしまうのは悪手だ。それをしてしまったら実際に相手と戦う時には精神的な余裕と体力が残っていない。そしてそれは奏との訓練でも助言もされていた事だ。

 僕自身人とケンカした事がほとんど無ければつい最近までXPSの存在も使い方も知らなかった。当然、XPSを使った戦い方とその基礎と基本も知らなかった。

 だけどXPSを使った戦い方がそうである事は真っ先に理解をしていてその事で奏を驚かせて「選人、君は物事の本質をよく理解していて呑み込みが早くとても賢いな」と褒められた。

 廃工場の中は所々に今はもう使われない蛍光灯の光が差す場所と視界の悪い真っ暗な所が混在していて中の地形も広い場所もあれば狭い場所もあって滅茶苦茶で複雑だ。

 数十分警戒しながら歩いて誰かの足音がする事に気付く。

 歩き方の音や足音は人によってそれぞれに違いがある。人の足の形、足のどの部分を真っ先に地面につけて歩くか、力の入れ方、脚の長さと膝の曲げる位置、そこからの重心移動、足をどこから地面に離すか、等で足音に違いが出来る。

 そしてこの足音はプレイス オブ ソーレスの皆の足音ではない。つまり敵であるサティスファクションの足音という事になる。

 僕は気を引き締めてガンブレードを構える。そして気配をワザと出す。

 その気配とガンブレードの向きを相手に悟らせる事で相手を油断させる。

すぐにそれに反応した敵は「そんな誘い込むような罠に引っかかると思っているのかぁっ?お前のいる場所と銃の向きを悟らせるって言う事は当然その位置に罠があるって事だろぉっ!」と大声を出してあちらも自分の居場所を“ワザと”知らせてその後気配を消す。そして僕の構えているガンブレードの銃口の向きとは別の向きから、ただしこちらが強く出した気配とも違う向きから足音が聴こえて、

「残念だったなっ!テメーの作戦はお見通しなんだよっ!」と発砲音は聴こえないけど金属の壁にぶつかった銃弾の音がガキィィィィン!!!と辺りに響く。

「?!なんで誰もいねえんだ!?」と疑問の声が響く。

僕はあえてガンブレードの銃口の向きと自分がいる場所から自分の気配を出した。そして、その気配を察した相手がそれを罠だと思う事もわかっていた。だから地形を利用した。僕のいた所はちょうど金属のフェンスが3方向から囲うように出来ている場所だった。僕のいる場所と銃口の向きから僕の情報はわかる。だけど地形や金属のフェンスがどこにどうあるかまではわからない。そうした地形と置かれているモノを利用して相手の盲点を突いた。

 僕は相手がこちらに来た時には既にその3方向に金属のフェンスがある場所から隣の壁の方に移動をしていた。相手は僕の気配を察して更にはその裏を掻いたと思っていた事で油断して五感を強化して僕の足音を注意深く聴き取る事をせずにいて、尚且つ自分の位置をワザと教えて僕がしたように罠を張る事もして自分が主導権を握っている、と思い込んだ事もあり、僕の位置を絶対にそこにいる、と思い込んでこちらの策に引っかかった。

 そして相手の位置はこちらからもうハッキリと把握出来た。ついでにどの向きを向いていて銃口の向きがどこを向いているのかも。

 僕は隣の壁から相手の後ろに回り込んでガンブレードの銃口を向けてトリガーを引く。

 四肢だけを残して身体だけ切り抜いて、トマトを勢いよく投げつけて爆散したような血が大量に吹き飛び身体は一瞬で形を成さずに辺りに飛び散る。

 人が1人死んだ。

 僕は冷静なまま今の敵の発砲して壁に銃弾が当たった事への音を聴いてすぐに誰かがこちらの情報を察する事を理解した。

 DGSに1人殺した事を味方に報告するのと同時に今の音がした場所が自分のいる所、という事も伝える。

 地形が滅茶苦茶だけど大体の位置は把握出来るはずだ。

 そして僕はこの場から離れる時に僕が敵だったらどうするか、を体感速度を飛躍的に上昇させて高速で深く考える。普通ならあえて狭い隠れられる場所に向かって身を潜めようとするだろう。そして裏を掻いて広い場所に出ようとした場合当然全方位から攻撃されるリスクを伴う。つまりどうしても、相手にバレるとわかっていても狭い道の場所に向かうしかない。

 そしてその裏を掻いて広い場所に出る事で逆に安全を確保出来て主導権を握る事が出来るようになるのは実際にこの場面に出くわした僕だけが選択出来て他の人にはその道を選ぶ事を想像も出来ない選択でもある。

 つまりはこの場での主導権を握り他の者達より有利にいる事になる。1人倒せた上にその次に繋がる立場も有利にいる。



俺は選人から入った連絡を受け取り相手が1人死んだ事を知る。そしてそれがどの位置の場所で敵がどう動いて行動するかを計算する。

 敵のメンバーは12人いた。それで全員だという事は把握している。

 そして何人かは2人1組になって行動している奴らがいる事もわかっている。単純に数の暴力で戦えばそれだけで有利になるからだ。

 しかし、当然2人で一緒に行動をすれば気配も強くなり足音等も消す事が難しくなってくる。

 更には選人1人で敵と戦ったという事を知っている以上、敵はその場に早く向かおうと行動が荒くなる。

 そのため2人で行動する事への強みである数の暴力を活かせない狭い道を選んで行動する事にもなっている事に気付けていない。まあ、例え行動が荒くなっていなかったとしても選人が狭い道を選んで行動して移動する事も考えれば2人1組で行動する、という事は完全に悪手になってしまっていて意味を成せない場面にいるという不運は同情するレベルだ。

 そうした敵の行動を読みすぐに居場所がわかり縦になって歩いている後ろから胸を撃ち抜いて2人まとめて身体が勢いよく吹き飛び血が滝のように吹き出し辺りを血で汚す。

 すぐに仲間に2人殺したことを連絡する。

 当然撃った弾丸が金属の壁に当たってもの凄い音が鳴るのでこちらの居場所は割れる。すぐに移動しないとこちらが危険だ。

 感覚を強化してニオイを嗅ぎ分ける。たぶんだが、相手は音や視覚的な情報には気を使って消しているが自分達の体臭には気付けていない。更に言えば奴らはここへ来る時にバイクに乗ってここへ来た。ガソリンは気化させてから使う性質上臭いは漏れにくくはあるがガソリンスタンドで入れる時など少なからずガソリンの臭いはバイクとそれに乗っていた者に付く。

 こちらはその臭いを利用して嗅ぎ分ければ相手の位置情報を把握出来る。



たぶん僕と同じように奏は相手の臭いを嗅ぎ分けて利用して敵の位置を割り出しているだろうね。

「出てきな!そこにいるのはわかっているから!」僕はあえて大声を出してガソリンの臭いのする場所にいる敵の位置と向きと人数を五感を強化して把握する。3人か。普通に戦うにはこちらが不利だよね。

あちらから「なぜ俺達の居場所がわかったのかは知らねぇが大声を出して自分の居場所を教えてしまうのは悪手じゃねぇか?」と笑い声が聴こえる。笑っているのは1人だけ。一応敵は自分達が3人いる事をこちらが把握していないと思っていてその上で1人だけ声を出して発言し笑い声もするところから見るにこちらの裏を掻いているつもりでいるみたいだ。すぐに油断しないのはちゃんとしているし良いけどそもそもがこちらが把握出来ている事を知らない時点で主導権はこちらが握っている。

「さっさと出てきな!下手な小細工をせずに正々堂々と早撃ちで決着をつけないか?!」僕はそう大きな声を出して相手を挑発する。

「良いだろうっ!下手な小細工をせずに早撃ち、乗ってやろう!」そう声がして、次の瞬間辺り一帯が激しいフラッシュが襲う。スタングレネードだろう。

「バカがっ!!そんな案に乗ってやる義理なんて無いに決まっているだろっ!!」3人全員がその場に現れてマシンガンの反逆の意志リベリアス・スピリットを連射する。

「?!!いない?!」「どこに行った?!!」「たしかにこの場所で声が聴こえたはずだっ!!」と3人全員が慌て取り乱す。

 そしてその場にヘッドフォンが置かれている事に気付く。

 その瞬間3人全員頭が吹き飛びそれ以上の思考が出来なくなって血が破裂したかのように爆発して滝のように吹き散る。

「僕がいつも首に掛けているヘッドフォンだよ。それ」このヘッドフォンもDGSと同じように僕のXPSで作られている。当然音質は異常なほどリアルでクリアで五感を強化しても肉声と違いが分からず聴き分けられないレベルのモノだ。

 すぐに3人殺したことを味方に連絡する。



 皆どんどん敵を倒している。それもかなりのスピードで。

 そう思い私も敵を倒す、正確には敵を殺す事をこなさないといけない、と強く思う。

 ただし焦りは全く無い。1人何人殺さなければいけない、というルールは無い。

 出来れば人を殺したくもないし、殺されたくもない。ただ、殺さなければこちらが殺されるからその前にこちらが殺す。とてもシンプルでとても残酷な状況にいる事に普通なら精神が参ってしまうと思う。

 だけど私は自分で言うのもなんだけど精神はもの凄く強い方だ。やらなければいけない事は憂鬱でも辛くても何でもやり切れるしやり切ってきた。

 もう既に選人の所も奏の所もネクの所も敵を何人か殺していて少なからず味方の位置も敵の位置も把握出来ていてその上でどこに向かってどう行動するかの戦いになっている。

情報の読み合いだ。

 私は五感を最大限に強化して特に視覚と聴覚と皮膚感覚と嗅覚を強化して敵の位置を探る。そうして壁に風が当たって跳ね返ったり流れが変わったり途切れたり、風の音を最大限に強化した聴覚で、その流れを身体でも皮膚感覚で感じてこの廃工場の複雑な地形をかなりの解像度で把握する事が出来た。そして嗅覚でも廃工場から発せられる臭いをどこで何が臭っているのかも把握出来た。どこに何がどうあるのかがかなり鮮明にわかる。普通のタイプオリジナルなら精神的にもたなくて卒倒するレベルにまで視覚と聴覚と皮膚感覚と嗅覚を強化している。

 生まれつき精神的にタフで鋼やタングステンのように強い私だから出来るXPSの使い方だ。

そして、敵がどこにいるのかを察知する。意外と近い。隣の隣の鉄の壁の向こうにいる。歩き方でわかるけど、あちらは私の存在に気付いていなくてこちらに近づいてくる。

 体感速度も急激に上げて壁からの出入り口に向けて銃口を向ける。気配は消す。

 スナイパーのように息を殺し気配も悟らせずただ出てきた瞬間に撃ち殺せるように銃を向けて構える。相手は私の気配には気付いていないけど壁から通路に出る辺りを警戒している。

 そこへ私の後ろからも人の気配を感じる。味方の気配ではない。数は1人。狙い撃とうとしている側が敵に挟まれる側に変わる。この状況はまずい。基本的に反逆の意志リベリアス・スピリットは1つしか生成できない。元々が2つのモノでない限りは両手に1つずつ生成して扱う事が出来ない。よって前と後ろから挟まれたら一気に形勢が悪くなる。

 どちらかが早く現れればそちらを殺してからもう片方も殺す事は銃弾の当たる音が発生する為難しいけど不可能ではない。

 ただし、このペースで近づいてくると運の悪い事にほぼ同時に2人が私の前後に現れる事になる。

 私は内心で焦りつつも感覚を強化したまま気配を消して耐える。

 1歩。1歩。1歩。気配と足音で少しずつ近づいているのがわかる。

 体感速度を限界まで上げて倒れそうになるほどの上昇をさせ、曲がり角から現れ、こちらの姿を認識して銃を構えて撃ち殺そうとするより速く私は相手の胸に銃弾を撃ち込み、弾が壁に当たって音が鳴るのと同時に後ろにいる敵が現れて私を撃ち殺そうと射撃体勢に入るけど体感速度と五感を限界以上に強化している事で弾の軌道は読めるので1発目を躱して2発目を撃たれる前にこちらが敵の胸に向かって撃って前後にいた敵2人の身体が勢い良く飛び散る。血が噴き出す。

 限界まで感覚を強化していた事で倒れそうになるけど私はすぐに2人殺したことを連絡する。



 まだ1人も敵を殺していないのは俺だけか、と正直驚く。敵がどのように行動するかは読めるのだが地形が滅茶苦茶複雑な為そもそもがどこに誰がいるのかがわからない状況で相手の考えと心が読めてもどこにいるのかが全くわからない。

 もっと言えば自分がどこら辺にいるのかも大体しかわからない。

「まずいな」独り言ちる。

 そこで一つ思いつく。今俺がいる場所に液体燃料が置かれているのでこれをばら撒いて反逆の意志リベリアス・スピリットで撃てばもの凄い爆発をするはずだ。そしてその爆発した事で相手がどのように行動するか、どのようなリアクションをするかはある程度読める。まずは警戒。その次に身を隠して気配を消しながら慎重にこちらにある程度の距離まで近づいてくる。その後に何か策を練って裏を掻いて来ようとする。ならばこちらはその更に裏を掻いて戦えば良いだけだ。

 液体燃料をばら撒いて離れた距離から銃で撃ち、ドッゴォォォオオン!!とかなりの規模の爆発が起きる。その爆音に相手の気配が一瞬だけだが数名分把握出来た。やはり警戒しながらこちらに近づいてくる。

 暗かった廃工場内が炎で明るくなる。人は電気のある生活に慣れてしまったが炎も思ったより周りを明るくする。ただし煙の量も思ったより凄いので普通は見つからないだろうが俺達タイプオリジナルのXPSを使えば煙くらいでは大した目隠しにならないし、この場にいたら明るさから姿が丸見えだ。

 俺はある場所に向かって隠れる。

 敵がこの場を包囲して武器を構える。人数も3人とそれなりの人数いる事で強気になっている。

 「隠れていても無駄だ!!テメェの負けだ!!」「何を思ってこんな自分の居場所を知らせるような規模の爆発を起こしたのか理解出来ねーが自分で蒔いた種だ」3人共銃を構えて辺りを見渡して少しずつこの場に近づいてくる。

 「脳無しが俺達を侮るからこん―――」広い場所まで敵が入ってきた瞬間、敵に頭が吹き飛ぶ。その頭を吹き飛ばされた敵の両側に1人ずついた奴らは滝のように溢れる血を浴びて酷く驚く。

「な、なんで・・・―――」右にいた奴の頭も吹き飛ぶ。

「ど、どこから…」俺はその敵の前に現れて銃口を向ける。

「種明かしは簡単だ。大規模の爆発が起きればどうしたってその爆発に神経が行く。その場の炎にも目が行って、尚且つXPSで煙の中でも見えるようにと余計にその爆発が起きた地点のみを凝視して神経を尖らせる。だから液体燃料のあった場所から少し離れた場所にあった重機のアームという本当だったら凄く目立ってすぐに見つかる場所に登ってもすぐには俺の存在に気付けない。そして俺からは辺り一帯が良く見渡せてお前らの位置が丸わかりな立場上俺が有利な状況になったっていう訳だ」敵に対してする必要の無い説明をする。これにはちゃんと目的がある。

敵は酷く動揺して「ま、まってくれ・・・俺はこいつらに言われてしたくもない戦争に参加させられただけなんだ」と命乞いをする。

 先ほど1人だけ調子に乗らずに、発言しなかった奴だ。

「1つ訊きたいんだが、俺の大切な友達の初めての友達をお前らが殺したんだけどそれは楽しかったか?タイプノンオリジナルは存在していて存在していない偽物の存在だから殺しても良い、そう思っていたりするか?」

「いや…。ノンオリジナルだって生きている。そのあんたの大切な友達の友達がノンオリジナルで俺の所属しているサティスファクションのターゲットにされてしまったのは気の毒だと思う……。だが、俺はノンオリジナルを人間として見ているし、殺して良いとも思っていない・・・それは間違いない」神妙な顔でそう言う。

「じゃあ、俺の友達に謝る事は出来るか?本当にお前はタイプノンオリジナルの事を本当の人間だと思っていて命に価値があるとも思っていて、お前が直接殺したわけではなくて所属していたレギオンの仲間が勝手に殺してこの戦争も自分はしたくないのに無理やり参加させられた、という事を誠心誠意説明して謝罪出来るか?」相手の目を見てそう話す。

「ああ・・・誠心誠意説明して心から謝罪させていただく。俺は本当に―――」頭がその場で吹き飛び血が溢れる。

「悪いけど俺、そういうの嘘か本当かわかるんだわ」

 3人殺したことを連絡する。



 奏から連絡が入る。

「敵は全員で12人いた。そして選人が1人、俺が2人、ネクが3人、理愛が2人、明が3人、殺した。残りは後1人だ。そしてそいつがサティスファクションのボスだろう」

 僕はそれを聴いて最後の1人となった敵を倒す事に気を張り詰めたまま皆が生きている事に安堵もする。

 まだ終わりじゃない。終わっていない。最後の1人を倒すまで殺し合いは続いているからだ。勿論、情況的にはこちらが圧倒的に優勢だけど手負いの獣ほど何をするかわからないし自爆的な事をしてくる可能性も無くは無い。


「情報ありがとうございます。皆最後の最後まで集中を切らさないようにしてください」と通話をする。


「勿論だ」


「選人も言えるようになってきたね」


「選人もね」


「その集中絶対に切らすなよ。俺から見て立場的に悪いのは選人だ」


「?どういうことですか?明」


「いや、今は説明するのもそれはそれで―――」ガキイィィン!!とDGSが吹き飛ぶ。

 危なかった。今僕が反応出来ていなかったら当たっていて吹き飛んでいたのはDGSではなくて僕の頭だった。

 目の前にサティスファクションのボスが立っている。反逆の意志リベリアス・スピリットはちゃんとこちらに向けて構えている。僕は身体能力と五感と神経、体感速度の全てを飛躍的に上げて敵のボスがトリガーを引くまでの銃口の向きとそこからの銃弾の軌道を計算して0.何秒が数10秒にも感じられる体感速度で銃弾を躱していきこちらもガンブレードを向けて撃ち込む。

 よく相手の顔を見るとこの場に着いて最初のセリフを発した奴とは違って、そもそもこんな顔の奴がいたっけ?と思えるほど印象にも記憶にも残っていない顔の奴だった。

 たぶん、普段からあまり目立たないように意識して行動をしているのだと思う。

 チームのリーダーやボスに必要とされる能力は皆をまとめ上げる能力や周りを引っ張って行ける能力、カリスマ性や人を引き付ける魅力の他に、もっと根本的な能力に危機感知能力がある。そしてその能力が高い人は自然と自分を目立たせようとしない、目立つ事で真っ先に狙われるリスクから逃れてその感知した危険を周りに伝えてチームを生き残らせる事に力を入れて動かしていく。

 たぶん、こいつもそれが出来るのだろう。

 お互いが引き延ばされた時間の中での銃弾の軌道の読み合いの中で僕は敵のボスに言葉を投げかける。

「お前らはノンオリジナルの事を人として何とも思っていなくて偽物の存在だから殺しても良いってそう思っているよな!」僕は叫ぶ。

「当たり前だろ!偽物の存在だ生きている事自体が間違いでそもそも生きてすらいない!人間でもないのに人間面されて自分達も生きています見たいな顔をされるのが腹立だしくて仕方がない!」

「ノンオリジナルだってちゃんと生きている!僕の初めての友達だった勇気と麗さんも死ぬ最後までちゃんと意思があって死にたくないと思う心もあった!まだまだこれからやりたいと考えている事も沢山あったはずだ!将来の夢だってあったと思う!他にもお前らに殺された生徒の親に僕は理不尽さとそこからくるやり場のない怒りと悲しみを泣きながらぶつけられたぞ!あの時の顔は忘れたくても一生忘れられない。お前らはその泣きながらやり場のない怒りと悲しみをちゃんと感じられて意志も心も1人1人考えもする人間を殺したんだ!!」僕は怒りがまた頭に上っていって冷静さを欠く。それこそ人を殺しても何とも思わないくらいの怒りが煮えくり返って沸騰しているのではと思えるくらい怒りが際限無く湧いて出る。

「それも過ぎた感情だ!ノンオリジナルが持つに相応しくないモノだ!!ノンオリジナルは存在そのものが偽物でまがい物。存在していてはいけない存在なんだよ!!」本心からそう思っているのがわかるくらいに真顔でそう吐き捨てるように言う。

「!!おまえ!!!お前だけはッ!!!」僕は敵のボスに向かって走り出して接近する。

ボスは一瞬ニヤリと笑ったような表情になり僕のこの行動に対する一瞬の隙を突いて正確にトリガーを引いて撃ち込む。

「!!!!」

 僕は身体能力を極限まで上げた手でしっかりと僕の反逆の意志リベリアス・スピリットであるガンブレードを握り銃口の下から前方に伸びるブレードを使ってボスが放った銃弾を切断しながら粉砕する。

 そしてそのままブレードで敵のボスの両手と片脚を切りつける。

「ぐッ!?!」ボスはその場で倒れ込む。

 僕は冷徹に「まだ殺さない!お前にはまだ訊きたい事と言ってやりたい事が沢山あるッ!!」と酷く凶器じみた声を出す。自分でもこんな声が出せる事に驚くけど今は怒りでそれどころじゃない。

「お前はこの世界でオリジナルとして生まれてきた事、周りのノンオリジナルがどんな事を思って生きているのかを考えた事が無いのか?」

「しょっちゅう考えるさッ!!その度にノンオリジナルの不必要さに反吐が出るッ!!心と意思があるだと!?ちゃんと自分の考えを持った人間だと!?笑わせるなッ!!そもそもそれ自体が持っていてはいけないモノだ!!オリジナルとして生まれてきた事を考えるかだと?考えた上で俺は自分がオリジナルとして生まれた事に歓喜したさ!!そしてこの世に不必要なノンオリジナルを自由にも殺せてそれが理由で警察に捕まる事も無いッ!!殺したいモノを自由に殺せる!!そしてそれがこの世界で正しい事なのだから―――」

「お前に“この世界で生きる資格”は無い!!」敵のボスの頭が吹き飛ぶ。もうこれ以上は聴いていられなかった。これ以上こいつの話を聴いていたらこの世界を壊してやりたいと思うくらいにメチャクチャでグチャグチャな感情が湧いてくる。

 滝のように血飛沫を上げてこの辺り一面を鮮血で染める。人の身体にはこんなに血が巡っていて循環しているのか、と改めて思える量の血を見て、そしてこの戦争が終わった事を認識したとたんに身体の中からウジ虫が泥水と一緒に湧いて出たのかと思えるような不快感に襲われて「げほっ・・・!」と胃の中のモノを全部出してしまう。

 張りつめていた神経と殺さなければ自分が殺されるという状況と今の今まで際限なく湧いて出てきた怒りの全部がその状況が終息した事で、自分が人を殺した、目の前の数秒前まで人として生きていたモノが肉塊になったのを見て耐えられない気持ち悪さに襲われる。

 そして全てが終わった後に皆がこの場に集まる。

 僕は胃の中のモノを全部ぶちまけて吐き出してしまう。

「げほっ・・・!がほっ・・・!!」

「大丈夫!?」理愛が心配して背中をさすってくれる。

「選人、君にはまだ早い経験だったようだ。無理をさせ過ぎてしまった事申し訳ない・・・」奏が謝る。

明は今の僕を見て「集中を切らすとこうなる事がわかっていたから伝えようとしていたのに・・・。いやそもそも防げる事ではなかったけど・・・」珍しく少し取り乱している。こうなる事がわかっていて解決案を出せなかった事を申し訳なく思っているのだと思う。

「吐けるだけ吐きな。中途半端に抑えて我慢しても辛いだけだから。胃液まで吐いちゃうと口の中痛いかもだけど」ネクも僕が吐いていて汚い吐瀉物を見ても嫌な顔一つしないで気遣ってくれる。目は見てくれないけど。

「すみません。皆ありがとうございます・・・」少し楽になってくる。

「これでいったんは終わったんですよね・・・」不安になってそう訊く。

奏は「この事に関しては終わった。ただし、何もタイプノンオリジナルを人間として見ない過激派はこのサティスファクションだけではない。今回の事は終わっても同じようにタイプノンオリジナルを殺そうと思う過激派はいくらでも存在するし、中にはタイプオリジナル同士で殺し合いをしようと狙ってくる奴らもゼロではない。そしてそれはこの世界の警察なんかでは対抗も出来ないし解決も出来ない。俺達が自分達で解決しようと行動に移さないといけない事だ」と説明する。

 僕はそれを聴いて「本当にこの世界は辛くて苦しいんですね」と改めて現実を見て聴いてそう思う。

「それでも生きていくしかない」奏が前にも聴いたセリフを言う。

「今はいったんその事は置いておけ。今は選人のメンタルケアが最優先だし氷山の一角が終わっただけのようなものでも休むべき時だ」明も心配しながら僕を気遣ってくれる。

 理愛はずっと僕の背中をさすってくれている。

 本当に皆優しくて掛け替えのない仲間で友達だと思う。

 そして今日の“人を殺す”という事を経験した僕は今後どのように人の命を思うようになるのか正直に言うと凄く怖い想いで1日が終わる。

まだ何も終わっていない。この世界でどう生きるのかまだ何もわかっていない。オリジナルとノンオリジナルについて何がどう違って、人とは何なのか、何をもって人と定義するのか、何もわからないまま今日という日を終える。人の寿命は思っている以上に短い。その上病死や事故死、事件に巻き込まれて死ぬ事だってある。せめて自分が死ぬ前にその事への答えに辿り着きたいと心の底から思う。それだけでも知ってからでないと死ぬに死ねないとも思う。

 僕はこの先何を知って、何を思って生きていってどこに辿り着くのか。それは神以外誰にもわからない。



 僕は自分の家に着いて家族からもの凄く心配されて同時にこんな時間に外に出ていた事をひどく怒られた。親も気が動転しているのだと思う。僕がこれほど顔色を悪くしていても怒る事を後回しにしない。と言うより正確には出来ないんだと思う。それほど気が動転しているんだ。

 僕の親はノンオリジナルだけど僕をちゃんと心配してくれる。オリジナルはノンオリジナルには出来ない事が沢山出来るけどこの世界の大多数はノンオリジナルでその境界線も凄く曖昧だ。

 僕はこれからもこの世界の事を知っていきたい。そう思い約1時間ほど仮眠を取って今日もいつも通りの学校生活が始まる。



第5話 この世界で生きる資格




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