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第1話

 いつからだろう。

 いや、きっと最初からだ。

 物心がついた時からそれは始まっていた。

 ずっと生きづらかった。

 僕は普通と違う。

 自分では普通にしているつもりでもどこか周りと違って浮いていた。

 幼かった頃からそれをおかしいとも違和感とも感じながら、だけど疑問に思う事はなかった。

 だけどその生きずらさや違和感は生きていく中で、成長していく中で嫌でも現実として思い知らされ疑問に思う事となる。

 自分ではどんなに周りと同じようにしようとしてもどこかが違って歪とも違うおかしさ。そう、違和感、自分だけ他の周りの人とは何かが違う存在のような。


 

 僕は今日もその違和感を感じながら中学校に通う。

 小学生低学年の頃から勉強の大切さを知っていた僕は中学受験をしてそれなりにレベルの高い私立の中学校に電車を乗り継いで通っている。全く誰とも話さない訳ではないけど友達は1人もいない。ただ話しかけられたらそれに対して返事をして言葉を返す。正直友達は欲しい。人は孤独には勝てない生き物だし1人でも多くの本気で気を許せる友達が欲しいし作りたいと思っている。出来れば彼女も作りたい。13歳にもなれば男子も女子も恋愛に興味を持つのが自然だし、何なら今時小学生でも彼氏彼女がいるのは当たり前と言っても間違いじゃない。当然、思春期を迎えた男子ともなれば女子とお付き合いをしたいと思うのは当然であり、当たり前であり、自然な事だ。

 「はぁ、友達が欲しい・・・」溜息とともに心の奥底にある本音が漏れる。

 電車を降りて駅から出ると同じ学校に通う生徒が学校に向かって通学路から徐々に集まってきて友達同士楽しそうにお喋りをしながら僕と同じように登校している。

 学校に着き校庭を横に進んで校舎を目指し途中で工事用のトラックが止まっている事に気付く。比較的出来て新しい学校でも順々に工事をして新しくしていくんだな、等と思い下駄箱で外用のスニーカーから室内用シューズに履き替えて教室を目指す。

 僕の通う学校はスマホを持ち込みOKで髪の色も原則として黒髪でなければいけないとは決まっていない。もちろん、あまりにも周りから見て異常な髪色や目立ちすぎてその生徒の人間性を疑うレベルのヘアカラーだったらさすがに先生から怒られるし染め直されるけど、それなりにレベルの高いこの学校でそんな異常者はほとんどいない。“ほとんどいない”というのがこの事への答えとして正しく、つまり何にでも例外というモノはあるものでこの学校にもいわゆる“不良”と言われる生徒も少ないけどいたりはする。そういう異常者とは関わらないほうが良いのだけど同じ学校に通っている以上少なからず接点は存在する。ただ幸いなのはまだそういった不良たちから目を付けられていなくて安全な中学生活を送っている。まあ、友達もいないから安全であるのと同時に誰とも関りの無い孤独な中学生活だ。

 自分の席に着きいつも通り早めの時間に学校にいるので自分の席でスマホを開いて今日のニュースを観る。何気にこの時間が落ち着く時間でありいろいろな事を知るための重要な時間でもある。友達がいればここで知った情報を話のネタにして会話が弾むんだろうけど。

 「へぇ・・・VRとARを合わせて全く新しい世界への体験かぁ・・・。あれ?なんだろう・・・。前にもあった?デジャヴかな?」時々襲ってくる存在しない記憶がまるで以前にもあったような感覚。このデジャヴも僕は割と頻繁に襲われる。最初は気にも留めていなかったけどあまりにも頻繁に襲われるので僕はこの感覚が少し怖い。

 予冷が鳴りクラスメイトは全員自分達の席に着きすぐに担任の教師が教室に入ってくる。

 「おしっ、ホームルーム始めるぞー」担任の教師は特に問題児もいない平和で誰とも敵対関係にもいない生徒達とスムーズにホームルームを始める。

 連絡事項を話し終えてすぐに担当教科の先生が教室に入ってきて授業が始まろうとする。

 1コマ目が数学で次が英語だ。数学は計算問題が難しくもあるが必ず答えが存在する。大学で習う数学には答えが存在しないとされている問題もあるのだがそれは“答えは存在しない”という答えが存在している。英語は数学と違って答えが必ずしも決まっているモノではないけど数学と違って英語は普段の生活で使う日常的に扱うモノなので全世界共通で同じレベルの数学を受けていたとしてそれは中学で習う範囲の内容だけど英語はレベルの高いとされているこの学校でも習う事はその言葉を使って生活している国の人達から見れば幼稚園児が扱うレベル、良くて小学生が扱うレベルの内容なのでそういった意味では英語という教科は1番レベルの低い事を教わっているとも言える。

 逆に国語はこの日本という国で使われる内容の語学を習うので英語の比ではないくらい難しく、その学校で習う相応のレベルの問題を解かされる事になる。特にこの日本で扱う日本語は他の国とは比べ物にならないくらい表現の仕方や言葉の使う順番、どの言葉をどのように使うかで無限ともいえる答えが存在する。国によっては自国の言葉や文でも難解なパズルみたいな作りのモノもあってその国の人でも理解する事が難しいとされているモノもあるので日本語は優れてはいるが必ずしも世界で1番難しい語学という訳でもなかったりする。


 

 午前の授業を終えて昼食の時間となり僕は1人でお弁当箱を広げる。この学校は給食が無く生徒は各自自分達でお弁当なりスーパーやコンビニで買ってきたパンやおにぎり等を用意してそれを食べる。

 「選人くん、良かったら一緒にお昼食べない?」

 !?!いきなり自分の名前を呼ばれて僕はビクッと驚く。僕の名前は息吹選人(いぶきせんと)だ。

 「あ・・・!月夜野さん!良いんですか?!」とあまりにも話慣れていないのでクラスメイトに敬語を使って話してしまう。同じクラスメイトのこの女子生徒の名前は月夜野麗(つきよのれい)さんという名前だ。

 月夜野さんはふふっと笑い「敬語じゃなくていいよ?クラスメイトなんだし」と柔らかい笑顔で僕に話しかけてくれる。そういえば今気づいたが月夜野さんは僕のことを下の名前で選人くんと呼んでくれている。優しい…!

 「俺も良いか?」と男子生徒も話しかけてきてくれる。

 やはりビクッと驚いてしまうが「こ、こちらこそ迷惑でなければ!」と緊張して若干大きな声ではあるけど反応できた。ずっと昼食の時間は1人でお弁当を食べていて学校にいる間ほとんど誰とも話す事が無い、友達もゼロの僕から見たら天にも昇るような気持ちになってしまった為つい興奮気味に言葉を発してしまう。

 「迷惑なもんかっ!実は俺前から選人と話してみたいと思っていたんだ。ただ、選人繊細そうだからいきなり話しかけて嫌われちゃったら嫌だなって思っていて話すタイミングを計りかねていたっていうか」と爽やかな笑顔で気さくに話しかけてくれる。

 「いつでもウェルカムです!!」興奮気味に発してしまい気持ち悪い奴と思われていないか急に不安になる。

 「ちなみに俺の名前って知ってる?」

 「芦谷勇気(あしやゆうき)さんですよね!」

 「さんはいらないってっ!」と笑顔で話してくれる。

 「ちゃんと俺の名前覚えていてくれていたんだ。嬉しいな!じゃあ、さっそく弁当食いながら一緒にいろいろ話そうぜっ!」と本当に気持ちの良いくらい爽やかで優しい。

 こんな日が僕にもくるとは・・・。神様、ありがとうございます・・・!!とそう1人で神様に感謝をしつつ一緒に昼食をとる。

 普段の僕からはありえないくらいいろいろな事を月夜野麗さんと芦谷勇気(さんはいらないとの事なので)に話題を振って話せた。自分でもこんなに人と上手く話せるとは思っていなくてビックリしている。

 「なんか、選人って思ったより話すのが上手くて話題が豊富なのなっ!」

 「私も選人くんがこんなに明るいって知らなかった。話すの上手いよね」

 と2人とも僕に良い印象を持ってもらえたみたいで、これから後はこの好印象を保ち続けれるように努力して上手く人間関係を築いていく事が最重要課題だ、と心の中で自分に言い聞かせる。

 そんな事を思っている時突然グラウンドからドオオォォン!!!と激しい爆発音が鳴りそのすぐ後にジリリリリ、と警報ベルが鳴る。

 「なんだっ?!」僕は教室の全生徒の中で1番早く反応する。僕ってそんなに臆病なのかな?とこの場に相応しくない思考が頭をよぎる。

 すぐに先生が教室に入ってきて「慌てず冷静になれ!何かグラウンドの方で爆発があったみたいだ!今そっちの方にも先生たちが調べに行っている!もしかしたら物騒な話だが異常者が学校に爆弾を仕掛けたのかもしれないが、安心しなさい!爆発地点と思われる場所からここまではかなりの距離がある!爆弾とかも一般人が用意できる火薬や爆弾の規模は映画なんかで見るような規模の大きなモノは個人ではまず作れない。絶対にここまでは届かないからとにかく慌てず冷静にいれば大丈夫だっ!!」と落ち着きながらも教室の生徒全員に聴こえるハッキリとした大きさの声で説明する。ここで下手に事情を教えずにただ大丈夫だ、と説明も無い状態で落ち着かせようとするよりちゃんと今の状況を生徒達に伝えた上でそれでも大丈夫な理由を説明して落ち着かせようとするのが、しっかりとした教師だなぁ、と思う。

 「選人、大丈夫だからな」

 「怖いけど落ち着いてね」

と芦谷勇気と月夜野麗さんが僕を気遣って言葉をかけてくれる。友達(とまだ言っていいのか分からないけど)って良いなぁ、と心が温かくなる。

 先生はそのまま生徒達にどのように行動すべきかを説明していき冷静に対応していく。

 「まずは騒いだりせず言葉は必要最低限で―――」その瞬間先生の頭が横に吹き飛んだ。

 「へ?」僕はとっさには理解出来ないその現実を実のところ誰よりも早く理解した。先生の頭が一瞬で体から離れて横に吹き飛んでいった。それからもの凄い量の血が滝かなんかのように溢れてくる。

 その僕の理解から数秒たってから女子生徒の悲鳴が教室内に響く。それを合図かなんかのように教室にいるクラスメイト達が一斉にパニックになる。

 誰もが我先にと教室から抜け出すように外に向かって走り出す。

 「選人、俺たちもこの場から離れたほうが良いと思う!」と芦谷勇気はどうにかパニックになるのを抑えて僕に話しかけてくれる。

 「うん、この教室にいた先生があんな状態になったって事はここは既に危険な場所という事だからすぐにこの場から離れたほうが良いっ!」

 「選人くん意外と落ち着いているんだねっ。私は怖くて2人がいなかったらパニックになっていたと思う」震えを必死に抑えて月夜野麗さんは僕と芦谷勇気に話しかける。

 教室内では既にほとんどのクラスメイト達が急いで教室から外に向かって逃げ出そうとしていく。普段仲良く話し合っている友達を押し退けて自分が助かる事に必死でそこに友達同士という助け合いが全く見られない。芦谷勇気や月夜野麗さんみたいなほんの数十分前に仲良くなった僕を気遣ってくれる人もいれば、普段から中良さそうにしていてもこうしてパニックになるとその友情は脆くもなる人もいるという現実が嫌でも目に入ってくる。

 俺はまだ死にたくないっっっ!!!と教室にいても聞こえるほどの大声で叫びながら校舎から外に出た生徒達の頭が吹き飛ぶ。そして血が大量に噴き出す。

 外側は危険だけど素早く窓から校舎出入口を一瞬だけ見る。

 「威勢が良いねぇ!」と教室内からでも聞こえるくらいには大きな声でバイクのヘルメットをかぶった大人の人がライフルをその手に持って校舎の出入り口に向けて構えている。

 「“あいつら”が撃ったのか?!」僕は冷静に辺りを見渡す。ライフルで人の頭を狙えば普通はトマトが潰れて弾けたような、もっと頭がその場で爆発したみたいに粉々に吹き飛ぶけど、もし何らかの最新兵器でそのライフルの何倍も威力が高いモノだったら弾が頭に当たった瞬間に頭が爆発するより早く横に吹き飛ぶ可能性もある。ただそれは現実ではありえないほどの弾速と威力を持っているという事になる。

 ただし、あの位置からではさすがに教室にいた先生の頭を撃ち飛ばすのは無理だ。この教室は2階で出入口は当然地上である1階だからだ。だから他にも仲間が複数いると考えるのが自然だ。

 となると、校舎出入口は今はまだ行くべきじゃない。そこを狙っているテロリストか異常者か犯罪者かなんかが待ち伏せている。外から見えない教室の窓ガラスの壁下に潜って一旦あの犯罪者が狙いを切り替えるまで隠れていたほうが良い。そう芦谷勇気と月夜野麗さん2人に説明する。

 「選人って頭良いんだなっ。真っ先に相手が複数人いるって予測したし現に先に逃げ出した他の奴らよりまだ教室にいる俺達の方が生き残っている」とさすがに表情こそ険しいがどうにか今の現状を冷静に見て僕に話しかけてくれる。

 「なんか、心強いよねっ。選人くん頼りになる」月夜野麗さんもどうにかぎこちない笑顔で僕にそう言ってくれる。

 「静かに…!誰か来る…!」僕はこんな状況の中自分でも意外過ぎるほど冷静に行動出来ている。そして誰かが教室内に近づいてくる気配を感じ取った。

 「そんなに頭の悪い奴らばかりではないでしょっ!んでもって頭が良い奴の考えってつまりは俺らと同じ考えをするわけでぇ。という事は俺らが思いつく事をそのまま当て嵌めれば行動が予測出来ちまうってもんなんだよなぁ!」と先ほど校舎の出入口を狙っていた大人とは別のバイクのヘルメットを被った男が教室に入ってくる。とっさに僕は男が教室に入ってくる前に2人に僕を含めて一緒に掃除用具入れに隠れるように指示を出していた。僕がかなり小柄な事と掃除用具入れが一般的なモノより大きい事もありどうにか中学生3人が掃除用具入れに入れている。

 「あれぇ、おかしいなぁ。まだ何人かはこの教室に残っていると踏んでいたんだけどもしかしてもう全員殺しちゃったっ?」と人を殺す事を何とも思っていないどころか人を殺す事を楽しんですらいるように受け取れるセリフが男から吐き出される。

 こいつ・・・!僕はそのセリフにひどく怒りを覚えた。

 「まぁ、でもこの掃除用具入れには誰かいるよねぇ!」と汚い笑い声を発する。

 まずい、まずい、まずい、どうする、どうする、どうする!!!心臓が爆発しそうなくらい速く脈打ち鼓動がうるさいほど鳴る。

 「出てきな、何人いるかは知らないけどせいぜい2人くらいだろうし、先に出てきた方だけ見逃してやるからよっ!」と絶対に誰がどう聴いても噓だと分るセリフを吐いてこちらの出方を楽しむ。

 「まぁ出てこないよなぁ!じゃあ俺から扉を開けてやるよっ!」と掃除用具入れの扉に手を掛けた時、芦谷勇気が勢いよく扉を開けて男にタックルを食らわしながら「この隙に逃げろっ!!」と僕と月夜野麗さんを逃がすため自分が引きつけ役を買って出てくれた。

 「・・・!!」僕はその事を申し訳なく思いつつも芦谷勇気の行動を無駄にしないために扉が開いて芦谷勇気がタックルを食らわしたのと同時に月夜野麗さんと振り返る事無く全力で逃げ出した。

 2人で教室を出てそのまま校舎の出入り口とは別のどこかの一時的に隠れられる場所を必死に頭を働かせて考える。きっと外に出れる場所は全部包囲されていると思った方が良い。相手は最低のクズだけど馬鹿じゃない。

 職員室は真っ先に潰されていると考えた方が良い。頑丈な教室や武器になりそうな物が置かれている部屋もダメ。

 どこならまだ安全だ?!思考が高速で働く。

 そう考えていた時に月夜野麗さんが脚を引っかけてしまって転ぶ。そしてそれが合図のように腰が抜けてしまい今まで勢いで走っていたその脚が動かなくなってしまう。

 「選人くん・・・。私もう走れない・・・」と目から涙が滴となって落ちる。

 「諦めちゃダメだっ!絶対に助かろうっ!勇気の分まで!」僕も目から涙が溢れて止まってくれない。

 その時、また誰かが近づいてくる気配がした。さっき掃除用具入れの扉を開けて僕たちを殺そうとした奴の気配と同じ感じがする。

 異常に追ってくるのが速い。近づいてくるとあの男の気配だけでなく勇気の気配も感じる。まだ殺されていない。そして今気づいたが教師が射殺された時も校舎の出入り口から出た生徒たちが撃ち殺された時も発砲音が全くしなかった。サイレンサーとかの消音レベルではない。全く音がしない。撃たれたのかどうかが結果となって表れるまで判断がつかない。

 「おいおい、ノンオリジナルなのにいかにも生きていますって感じの顔をするのやめてくれねぇか?」芦谷勇気を片手で拘束したまま軽々と持ち上げてこちらに男が現れる。

 「わりぃ、選人、麗。全然歯が立たねぇ・・・!」芦谷勇気も顔がぐちゃぐちゃに崩れて泣いている。

 男は芦谷勇気をこちらに投げ飛ばしてくる。

 「勇気っ!」僕は勇気に駆け寄り手を握る。

 身体のあちこちにナイフで刺されたような傷跡があり血が流れている。

 「こんなんなるならもっと早く選人に話しかけていればよかったな・・・」泣きながら僕の手を弱った手で握り返してくれる。

 「勇気・・・!」

 「ははっ。間違いなく俺死ぬのにこんな状況になってもまだその実感が湧かねぇ・・・。俺―――」頭が吹き飛ぶ。

 「なんだよ・・・なんなんだよ・・・!お前らっ!!」

 銃口を向けられてトリガーを引かれ月夜野麗の頭が吹き飛ぶ。

 自分でも信じられないくらい怒りが頭の中を巡って本気でこいつらを殺してやりたいと思えるほど、血管が破裂してしまうのではないかと思えるほどの怒りが溢れかえる。

 殺してやる!殺してやるっ!殺してやるっ!殺してやるぅ!!こいつらを殺してやるぅっ!!!!

 男がこちらに銃口を向ける。

 「じゃあなぁ、ノンオリジナルっ!」男の指がトリガーを引いて超威力の銃弾が発射される瞬間思考が何百倍と加速して銃弾が発射されるまでの銃口の向きがハッキリと分かり軌道が手に取るように読める。

 実際に発砲された後からでは読めても銃弾を躱せはしないが発砲される瞬間のトリガーが引かれる0.何秒かが数十秒以上にも感じられ軌道も手に取るように読めるので躱す事は信じられないくらい容易だった。

 「は?!なんで躱せるんだぁ?!」男が驚いた感情を表したように声に表れる。

 「それはお前が読み間違いをしたからだ」誰か知らない人の声がして男の心臓があるであろう胸が吹き飛ぶ。

 「そしてどの程度かと思ってここまで接近しても俺の気配に気付けない。正直ガッカリだ」

 僕も全く気付けなかったが銃を扱うにはあまりにも接近しすぎた距離に銀髪の男性が立っている。手には拳銃を持っているが男の胸が吹き飛ぶのを見た感じ、男のライフルと威力にそう違いがあるようにも思えない。銃声もやっぱりしない。

 「すまない。助けるのが遅れた。他の所にいた奴らは俺達が全員殺したが君の友人を殺す前にこいつを殺せなかった。彼らはタイプノンオリジナルでも君にとって大切な友達だったのだろう」僕は誰に対して怒れば良いのか湧いて溢れ出る怒りの感情のぶつけ場が無くてこの銀髪の男性に掴み掛る。

 「なんなんだよお前らっ!さっきからノンオリジナルとか訳の分からない事言いやがってっ!こいつらがあんたの仲間ではないのは分かるっ!分かるけどっ!同族だったら僕はお前を殺してやるっっ!!」

 「落ち着け。大切な友達が死んでしまって混乱しているのは分かる。だが俺はこいつらとは関係無い。仲間でも無い。俺を殺しても君の友達は生き返らない。そして同族かどうかで言うのなら君も同じだ」表情を変えず、だけど声音からこちらを本気で心配してくれているのが分かる。さすがに怒りをぶつけられなかった。

 「なんなんですかっ!この男達とノンオリジナルって!?」なぜか冷静に今1番聞き出したい事が言葉になって銀髪の男性に発せられる。

 「君は今までこの世界で生きずらいと思った事は無いか?普通にしているのに周りとどこか違う、周りと考え方が違ったり物事に対する視点が特殊で周りにとけ込めず距離を感じた事は無かったか?」落ち着いた声でそう問われる。

 「生まれて物心がついた時からありましたよ。自分はどこか周りと違う、自分だけが浮いていて周りと同じになれない。それが何だって言うんですかっ!?」抑えたはずの感情がまた溢れてきてしまって銀髪の男性に当たりそうになってしまう。

 「君は“タイプオリジナル”―。この世界に生まれたオリジナルの存在だ。そして君の友人たちは“タイプノンオリジナル”。この世界に存在していて存在していない偽物の存在だ」

 それを聴いた僕は遅れてきたパニックと怒りと到底信じられない内容の情報を聴いて壊れたように笑う。

 「はは・・・。タイプオリジナル?タイプノンオリジナル?僕の友達が存在していて存在していない偽物・・・?この世界はゲームかなんかで電脳空間で出来ていてオリジナルの個体とオリジナルじゃない個体がいるっていうんですか・・・?」もう訳が分からなかった。

 「少し違う。この世界はゲームでもなければ電脳空間でもない。この世界は間違いなく現実だ。そして地獄だ。皆がよく言う神と呼ばれる存在がこの世界を作ってタイプオリジナルに苦しんで辛い思いをさせるためにこの世界は作られた。その世界を機能させるためにオリジナルではない存在、ノンオリジナルを作り存在させている。タイプオリジナルが地獄に堕とされるような悪い事をしたのかどうかは知らないし分からない。もしかしたらただ単に神の気紛れや暇つぶし程度にこの世界に堕とされて苦しめられているのかもしれない」

「タイプオリジナルはタイプノンオリジナルには出来ない事が出来るんですよね?さっきの男もあり得ない力を持っていましたし、僕もトリガーが引かれる瞬間、銃口の向きと弾の軌道がありえないレベルで時間が加速して読めました!その力は相手にも干渉出来るんでしょう?!だったら勇気と麗を生き返らしてくださいよっ!!初めて出来た友達だったんですよっっ…うぅっ…!!」言い終えて急に嗚咽が漏れる。

 「無理だ。干渉出来るのはタイプオリジナルが自分に対して向けてきたタイプノンオリジナルを干渉し操作する事は出来るが、こちらに対して向けてきた訳ではないタイプノンオリジナルの干渉や操作、つまり回復や生き返らせる事などは出来ない」

 「そんなのってあんまりじゃないですかっ・・・!それじゃあ何のために僕達は生きているんですかっ・・・!本当に苦しむためだけに生きているって言うんですかっ・・・!?だとしたらこんな世界で生きていたくなんてないですよぉぉぉっ・・・!!」

 「それでもこの世界で生きていくしかないんだ。この世界で死んだ末に天国があるのか、そもそも終わりがあるのか無いのか」

 「それでも―――“この世界で君はどう生きる?”―――」



第1話 新しい始まり

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