07.パーティの生命線が消えた日の笑えない冗談
絶望はいつだって呆気なく、そして残酷にやってくる。
俺たちが大きな岩陰で束の間の休息をとろうとした、その瞬間だった。
――ケヒ、ケヒヒヒ!
空を裂くような、歪な笑い声。
狂笑のジャッカル。
そいつは俺たちが立ち上がるよりも早く、黒い魔力の糸で俺たちの自由を奪った。
「全員で休んじゃダメじゃないか……。
新鮮で、美味しそうで、今にも壊れそうな人間ども」
身体が動かない。
ルカスも、ボルドスも、地面に縫い付けられたように動けず、ただ歯を剥き出しにして呻くことしかできない。
「……メル、逃げ……っ!」
俺の掠れた声に反応し、メルが聖印を握りしめて立ち上がる。
彼女だけは咄嗟に張った浄化の結界で、ジャッカルの糸を弾いていた。
「ケヒ! 聖女様か。
いつ見てもお前が一番美味しそうだな」
「……みんなに、触らせない……っ!」
メルの放った浄化の光が、ジャッカルを貫こうと伸びる。
だが、これこそがジャッカルの罠にハマった瞬間であった。
ジャッカルは笑いながら、その光を素手で掴んだ。
本来なら魔族を滅ぼすはずの聖なる光も限界を超えるほどまで疲労し、魔力も尽きかけている今のメルでは本来の性能の1割程度の効果しかなかったのである。
そして、ジャッカルが掴んだ聖なる光は、ドス黒く濁り変質していった。
「……あ。 ……あ、ああ……っ!」
メルの悲鳴が空気を震わせる。
そして、ドス黒く変質した聖なる光は彼女を拘束した。
高笑いを続けるジャッカルが糸を操ると、彼女の身体が異様な角度で空中に吊り下げられた。
――バキ、と。
生々しく、硬いものが折れる音が響く。
「メ……、メル……ッ!!」
ボルドスが獣のように吼え、ルカスは血を吐きながら魔法を放とうとする。
だが、ジャッカルはその全てを嘲笑い、ドス黒く変質した聖なる光を彼女自身の身体へと突き返した。
「ケヒヒ!
堕ちた聖なる力で、自分の内側から焼かれる気分はどうだ?」
メルの目、鼻、口から、白銀の炎と漆黒の炎が溢れ出す。
彼女の身体が、精神が、魂そのものが、徹底的に焼き尽くされようとしていた。
「……あ……、……が、あ……っ」
喉が焼け、声にならない絶叫が漏れる。
彼女の華奢な手足が、ジャッカルの糸によって操り人形のように引きちぎられ、断面からは鮮血ではなく、どろりとしたなにかが零れ落ちる。
浄化の要、パーティの心臓、みんなの心の支え。
俺たちが人間であることを証明し続けていた唯一の「希望」が、目の前でまるでゴミのように笑いながら解体されていく。
「……ごめ……ん……な、さ……い……」
それが、彼女の最後の言葉だった。
ジャッカルは満足そうに、もはや肉塊と化した彼女を地面に投げ捨てた。
「ケヒヒ!
ついに浄化を失っちまったなぁ!!
せいぜい、魔素に焼かれて苦しみながら死ぬがいいぜ!」
ジャッカルは霧の向こうへと消えた。
残されたのは、静寂と、原形をとどめていないメルの遺体。
俺は…… ただ、自分の震える手を見つめていた。
「俺たちは仲間を……
メルを……
そして浄化を失った。
この時、俺たちを魔素から守ってくれる光を失ったんだ。」
俺がそう言うと、陛下は呼吸を忘れたように震えた。
「それでも俺たちは前に進むしかなかった。
使命感とかじゃない、もはや生きて帰ることができるとは誰も思ってなかった。
なら、せめて魔王くらいぶっ殺さなきゃ割に合わない。」
そして、それがせめてものメルへの弔いになるんじゃないかと俺は思っていた。
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