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っている。それと同じくして頭部側面には二本の角―竜角が現れていた。その竜角は感覚共有のレベルが高いことを意味している。

 (同化現象まで進める段階に有るということか…)

 バスクたちの後を歩くユラントフは、歩く速度を落としながら距離を開けていく。バスクが横穴を抜けた辺りで、ユラントフは歩を止めた。

横穴を抜けた先、広く開けたドーム型の空洞は空へと抜ける大穴が空いていた。まだ雨雪は無いが、黒雲が既に覆い始めている。

 「―さあ、宴会の始まりだ」

 一度空を見上げたバスクは普段と違う様子で、殺戮を宣言した。目の前にいる三体のキメラと、自身の後ろにいる第三者に対して。

 竜装の展開は始まっていた。バスクの身体は赤い火に包まれ始めている。構わず前傾姿勢で加速を始め、戦闘態勢の手前二体を目標にする。キメラは手前に二体、奥に一体。どういう訳か、奥の一体は壁際で座ったままだ。手前の二体は、バスクの向かって左に獅子をメインとしたキメラ。向かって右に山羊と魔犬のハーフキメラの配置。

先手は左の獅子型キメラからだった。五メートル越えの巨体が前脚を横に薙ぎ払う。爪の大きさと言ったら、バスクの持っていた剣など比では無い。竜装が間に合わないと察知したバスクは、左手に魔力を多めに流す。鋭利になった爪は徐々に赤熱化し、やがて指先に炎が灯る。振り抜いたはずの前脚はバスクの左手に止められた。いや、掴まれた。すぐに炎熱が伝わり始め、獅子型キメラの右前脚は炎上した。轟音と土煙を上げて倒れた獅子キメラは大きくのた打つ。気が付くと視界に山羊と魔犬のハーフキメラの姿は無かった。すぐさま五感を研ぎ澄ます。

 「―がっ!」

 鋭い衝撃が右後方から襲った。接触するまで気付かないほどの速さ、これがこのハーフキメラの売りだろうか。山羊の上半身から伸びる大きな角、それがバスクの右脇腹へとめり込む。衝撃で弾き飛ばされ、地面を転がったバスクの脇腹には大きな横穴が空いていた。

 「屑が!我に傷を負わすとは、灰になる覚悟があるようだな、実験動物!」

 激昂したバスクは、戦闘開始から纏っていた火の衣を更に大きくし、全身を火だるまと化す。近くに飛び散ったバスクの血液が音を立てて蒸発した。それを見て取ったハーフキメラは再び動きだすために、後脚に力を込める。異様な膨らみを見せた後脚で跳躍を始めるその瞬間、赤い一閃が走り、ハーフキメラは左右へきれいにさばかれた。中央から半々に開いた身体はしばらくすると、異臭を放ちながら燃えてすぐに灰塵となった。

 (―動き出す前に仕留めたわね。あの速さは厄介、という判断かしら)

 (早いな、すでに一体。だが獅子型キメラは、まだ…)

 横穴から覗くユラントフが視線を送る先には、燃える右前脚を斬り落とした獅子型キメラが、攻撃態勢に移った様子があった。姿勢を低くし、尾を高く上げる。その尾は大蛇そのもので、

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