13
「日中でも暗い我が国では、街灯が欠かせません。おまけに暖房効果もあるんですよ」
主都正門前で、迎えの騎士三人とスノーヴォルフに代わって、案内役を任された女官に丁寧な説明を受けながら、馬車に揺られる。窓の外には多くの人が溢れている。
「聞いてたより普通…だな」
「貧しい暮らしをしている、と思っておられましたか?」
「いっいえ、そういうわけでは…」
相変わらず落ち着かないバスクは身体を竦めて、これ以上余計な事を言わないようにと強く口を紡いだ。―次の瞬間。
――ドォオオン…という爆発音と共に川を挟んだ向こう側、何らかの研究棟と思われる集合建築物から黒煙が上がった。馬車の外に悲鳴が響く。
急いで馬車から飛び出すと、空へと伸びる黒煙の中から、大きな影が飛び出すのが見えた。同時に、建物の屋根を飛び回り、大きな影と戦っているのであろう人影も確認できた。
「危険です!馬車の中へ戻って下さい」
馬車から身を乗り出す形で、女官がバスクを促す。
「でも、ほっとく訳には…」
―やめておけ、お前が出て行ったらややこしくなるだけだぞ
「そうかもしれないけど、あれは…」
―ここがどこだか忘れたのか?余計な事はするな
お早く、という女官の声に馬車へと戻る。乗り込む直前、もう一度振り返り、人影に目を凝らす。煙でよく見えないが、肌で感じる魔力は竜装騎士が放つ独特な波長だった。
「見苦しい所を見せてしまったな。この件、他言無用で願いたい」
目の前に座る白髪混じりの中年男性、彼はガルヴァ連邦軍ツァナフ将軍である。アリスト連合軍は彼に多くの敗戦を味わわされている。
「わかりました。…詳細を聞く訳には?」
「いや、今回の件は貴殿にお願いする案件にも係わるのでな。…まず資料を見て頂こう」
椅子の傍に立つ文官が紙にまとめられた資料を置く。小さな部屋に男三人。落ち着ける環境で、バスクは素早く資料に目を通した。
「―用件はわかりました。質問しても?」
読み終えた資料を机に置きながら視線を移す。
「ああ、機密に係わらない事であれば答えよう」
「先程、あの場で戦っていたのは竜装騎士ですか?」
(―まぁそう来ると思ったよ)
やれやれと言わんばかりにブラッドが呟いた。




