75 【エピローグ】
「だから、俺たちと一緒に住まないか?ってこと!」
「へ……?」
予想だにしない遥季の言葉に悠依は変な声を出してしまった。
(一緒に!? 待って、一緒にってことは、朝も、夜も、一緒ってこと!? そ、それは心が、もたないかも……)
「別に無理強いをするつもりはないけど、どうせ今でも部屋は隣だろ? それならいっそのこと一緒に住んだらいいんじゃないかと思っただけなんだ。嫌ならいい、今すぐにじゃなくてもいいしな。俺も卒業してどっか行くとかじゃないんだし」
(嫌ってわけじゃ、ないけど……。急に言われても……)
遥季は優しく悠依を見つめ、「変なこと言って悪かったな、忘れてくれ」と頭を撫でた。
(あっ……、またその顔、昔から変わらない。何かあると優しく笑う癖……)
「――いいよ」
悠依の口からこぼれた言葉に遥季は目を見開いた。
「えっ?」
「一緒に住むの! 嫌なわけじゃないし……、ほら! シェアハウスも流行ってるし!」
必死に弁解する悠依を見て、遥季は吹き出した。
「お前、誰に言い訳してんだよ!」
「仕方ないでしょ! 黙ってられなかったの!」
「まあ、一緒に住むって言っても、今の俺の部屋に悠依が来るだけだから、あんまり変わらないけどな。兄貴もいるし、俺と2人じゃないからそんなに身構えんなよ」
「うん……」
ふわっと撫でる優しい手に悠依は癒されていた。
(やっぱり、犬榧でも遥季は遥季だよ。仕草も、声も、顔だって、昔の遥季のまま。何も変わらない……)
気がつくと悠依はふふっと笑ってしまっていた。
「何笑ってんだよ」
ぶっきらぼうに聞く遥季に悠依はとびきりの笑顔で返した。
「なんでもないよー」
(また、一緒にいられるんだ……)
そうして、悠依と遥季は家路についた。




