57 【伯父】
そして時は流れ3月の春休み。4年生となり卒業を控える悠依たちは星劉学園郊外にある、前々学園長の館へと来ていた。
ここにいるのは陽翔、遥季、藜、蓮華、そして現学園長。その4人に悠依は率直な疑問をぶつけた。
「来たはいいけど何するの?」
その悠依の疑問に答えたのは4人の誰でもなく、藜の持つ水晶の中にいる黎羽だった。
「決まっているだろう。お主が望んだことだ。『父の真相を知りたい』と。それを叶えてやろうというのだ」
「だからって黎羽様……。いきなりすぎませんか?」
「そうか? どう思う、藜」
「黎羽様のなさることは基本的にいつも突然です」
「そうか……? まあ、早い方が良いではないか。今年はお主も卒業だろう? 卒業までに済ませておいたらいいんじゃないか?」
悠依は黎羽の言葉に覚悟を決めた。
「それで、ここからはどうしたらいいんですか?」
「そういうのはそこの右京に聞け」
(右京……?)
「ああ、お主から見たら伯父にあたるか?」
「伯父……って」
(この4人の中に伯父っていたっけ?)と悠依が悩み始めると「悠依ちゃんはそのことを知りませんよ。黎羽様」と低い声が聞こえてきた。
「学園長……?」
「私が君の伯父だよ、悠依ちゃん」
「伯父って、ことは。お母さんの……?」
(兄だっけ、弟だっけ)と考え始めた悠依の思考を読むように学園長の右京は話し出した。
「兄だよ。言うのが遅れてすまなかったね。私は君のお母さんの兄、十六夜右京だ」
「そうだったんですね! すみません! 私、全然気付かなくて……」
「いや、仕方のないことだ。元々忙しくて親戚の集まりなども出れなかったからね。こんなことしか出来ないが、私も前々学園長には聞きたいことがある。この件は喜んで協力させてもらう」
「助かります、右京さん」
「蒼麻? 外でその呼び方は……」
「いいじゃないですか、悠依ちゃんにもバレたんだし」
右京はふう、と一息ついてから真剣な顔をした。
「まあいい、それで悠依ちゃん。これからの話だが……」
「はい!」
「まずは私が行く。伺うのは私と悠依ちゃん、そして黎羽様だけだ。しかし会って下さるか否かはおそらく五分五分だろう。話してくださるかもまた然り……。それでもいいんだね?」
「はい。話を聞いてくださるまで、話してくださるまで、何度でも伺うだけです!」
「僕達は外で待ってます。悠依ちゃんのこと、よろしくお願いします」
「分かった。では、行こう」




