58 【突撃】
悠依は藜から黎羽入りの水晶を預かり、右京の後を追いかけた。
「大丈夫かい?」
「――はい、緊張してますけど」
「無理もない。こんな屋敷を前にしたら誰しも硬くなるだろう」
悠依はキョロッと辺りを見回した。
「本当、すごいですね……」
「そうだね、私もここに来たのは初めてだ」
「学園長でも?」
「ああ、基本的には関わりがないからね」
「それなのに、なぜ今回……」
「なに、他でもない君のためだよ。幽羽くんの娘さんと聞いてどれほど嬉しかったか……。犬榧も元気だというし、しかも蒼麻に聞いたら2人は付き合っているというじゃないか……! これほど嬉しいことはない。君のお母さんも幽羽くんも喜んでいるはずだよ」
右京はその瞳から一滴の涙を流し微笑んだ。
「――学園長、そこまで私のことを考えてくださっていたんですね」
「瑠李には何もしてやれなかったしね。君には悪いが、ただの罪滅ぼしだよ。私もあの方には直接聞いてみたいと思っていたんだ」
すると前方に両側には背の高い男性が目を光らせている一際目立つ扉が見えた。
「失礼」
学園長は男性達の威圧にも屈することなく近づいた。
「どちらさまで……?」
「旦那様のお客様ですか……?」
扉を守る2人はいかつい見た目に反して物腰は柔らかかった。
「私は星劉学園現学園長、十六夜というものだ。こちらは私の秘書。お客様ではないが、用がある」
「ご用件は……?」
「学園の機密、ということまでしか言えない」
「――少々お待ちください」




