29 【神様】
「本当にありがとうございます! 陽翔さん」
「いやいや、びっくりしたなぁ。いきなり学園長から電話掛かってきたと思ったら“悠依ちゃんの治し方教えるから早く帰りなさい”って言うんだもん。何事かと思ったよ」
「すみません……迷惑を掛けてしまって……」
「いいんだよ。それより、まさか悠依ちゃんのお父さんが“神様”だったとはね」
「あの……その“神様”とは何なんですか?」
「あぁ、悠依ちゃんは分からないか。簡単にいうと“神”という不確かな存在を奉っているんだよ。ジャンル的にはこっちでいう偶像崇拝とか個人崇拝に近いかな?」
「そうなんですか……」
「でも悠依ちゃんのお父さん空狐なんでしょ? ならかなり有名だよ。現世各地に社があるからね」
「そうなんですか!?」
「うん。良い神様だから何も心配要らないよ。胸張ってれば大丈夫」
「……はい!」
「――なぁ、まとまったとこ悪いんだけど。 混血人で、巫女の力持ってて、狐って……狙われないわけなくね?」
「――――そうなんだよ。僕も考えてたんだ。でも狐ってことはまだ学園長しかばれてないだろ? なら大丈夫。あの人は口堅いから。あとの二つはお前が何とかするだろ?」
そう言って遥季の肩をポンと叩いた。
「――当然! 悠依は俺が守るんだ」
そのときコンコンと襖を叩く音がしてカラッと開いた。
「失礼致します。お食事の用意が整いました」
「あ、はい!」
そしてこの日は夕飯を食べ、まったりとしたあと眠りについたのだった。




