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22 【式神】

「遥季? あ、悠依もか?」


 遥季はいつもの落ち着いた様子からは想像できないような声色で言った。


「架威」

「は?」

「悠依が、薬飲まされたみたいで、意識も薄れてきたし」


 架威は少し考えた後に言った。


「薬……どんな薬かにもよるが、麻痺系の薬ならあいつ、使えるんじゃね?」


 眉間にしわを寄せた遥季が言った。


「あいつか……あんまり出したくないけどなぁ」

「そんなこと言ってる場合か? で、悠依が飲まされた薬は?」

「あぁ、感覚増進みたいなやつらしい」

「それならあいつの得意分野だ」

「なら呼ぶかぁ? ふぅ……」


 遥季はため息をつきながら薙癒たちを呼び出したあの部屋に入った。

 そして、あのとき唱えた呪文とはまた違う呪文を唱え始めた。

 すると今度遥季の前に現れたのは男子とも女子とも判断しがたい中性的な容姿の金と黒のメッシュを入れたカラフルな髪の青年。


「はる、どうしたの? 珍しいね、はるが僕を召喚するなんて」

緋弥(ひや)。感覚増進はお前の得意分野か?」


 遥季が言うと大きな目をさらに丸くし首を傾げた。


「感覚増進? うん、投薬も解毒も出来るよ」

「そうか、解毒してほしいやつがいるんだ」


 緋弥は先程とは反対の方向に首を傾げた。


「解毒かぁ……投薬しなくて良いの?」

「じゃあ、解毒した後にでもビタミン剤でも投薬してやってくれ」

「りょーかい! ちなみにその子ははるの彼女?」

「彼女じゃない。が、大事なやつだ。助けてやってくれ」

「でも、感覚増進でしょ? ほっといても効果は切れるよ?」

「あいつは普通の人間とはちょっと違うんだ。効果が切れずらく、効きやすい。やっかいなんだ」

「そういうことか。 じゃあちょっと行ってくるね!」

 

 そう言って緋弥は悠依の寝かされた部屋に向かった。


「ん。んん……はぁ……」

「この子か」

「ん……」

「よし」


 緋弥は悠依の額に手をあて、と唱えた。


()()(はん)(びん)。この娘の身体から退け。 一掃」


 すると悠依の体から黒いものが出てきた。


「ん? これは……」

「どうした、緋弥」

「はる、この子って何の力持ってんの?」

「ん? 巫女だけど?」

「巫女? だからか」

「何かあったのか?」

「いや、はる見える? この黒いの」

「あぁ、これは……」

「うん。これ、力を持っていない相手に術をかけたら出るはずなんだけど……」

「そうだな、とりあえずこの状態は大丈夫なのか?」

「うん。一応大丈夫、薬も解毒したし」

「そうか、じゃあここからは薙癒に頼むか」

「ごめんねー、さすがにここからは無理ぽいー」

「いや、助かった。ありがとな、緋弥」

「いいよ~ じゃあ戻るね!」 


 緋弥は姿を消した。


「さて……薙癒!」

「どうしました、主」

「これ、何か分かるか?」

「これは……邪気、ですかね」

「邪気? って確か目に見えないんじゃ……」

「普通はそうです。しかし、悠依ちゃんは巫女です。普通じゃないことが起こってもおかしくありません」

「―――どうにかできないのか?」

「そうですね……私にはどうすることも。しかし、悠依ちゃんは巫女なので自分で邪気を浄化することが出来るはずです!」

「なら、様子を見るか」

「そうですね」


――この日の深夜


「ん。ん?」


 悠依は目覚めた。


(私、一体? でも体は楽だ)


 悠依が自分の体をポンポンと確認し始めたときだった。


「ん?」


 耳に違和感を感じた。お尻にもだ。

 触ってみると以前生えた鎌鼬の耳と尻尾とはまた違う、もふっとした感触の耳と尻尾が生えていた。


(何この耳と尻尾!)


 触った感じ的には耳は三角、尻尾はふさふさしている。


(猫……っていうより犬……? ――とりあえず今日は寝よ。明日になったら消えてるはず)


 そう願って悠依は再度眠りについた。

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