11 【発見】
「なぁ、悠依どこいったんだろな?」
悠依が屋上を出て行った後、不意に遥季が言った。
「そうだな……」
「そうですね……」
「うーん……」
いくら考えても答えは出なかった。ついに悠依は授業が始まっても帰ってこなかった。
放課後になり、遥季、薙癒、梨緒、架威の4人は悠依を探すため、生徒玄関に集まった。
「よし、じゃあ誰か見つけたらみんなに連絡ってことで」
遥季の提案に3人は無言でうなずく。
そして架威は2階に、薙癒は3階に、梨緒は保健室にそれぞれ散っていった。
他の3人がキョロキョロしながら探しているのに対し、遥季には心当たりが合った。
そう、数日前の悪夢のような事件の現場となった場所、裏階段である。
しかし悠依は何も言わずに出て行った。
そのことが遥季にとっては最も引っかかっていた。
(もし伊織に呼び出されたのなら俺じゃなくても誰かに言うはず……)
そう思いながらも遥季の頭には確証のない自信があった。
走って数分。
裏階段に着いた遥季は唖然とした。まさにデジャブだったのである。
悠依の倒れている場所、倒れ方、服装の乱れ方までそっくりだった。
「……ゆ、悠依!! おい! しっかりしろ!」
いくら呼びかけても悠依が目覚める気配はない。
遥季はとりあえず3人に連絡をした。
「遥季くん……これ、どういうこと……」
梨緒は動揺を隠しきれない様子だった。
そんな梨緒を無視して話し出したのは架威と薙癒だった。
「主。これは……?」
「遥季、これはまた?」
「薙癒。悪いが見てやってくれるか」
「かしこまりました」
淡々と進んでいく遥季達のやり取りをボーっと見ていた梨緒だったが、ふと我に返り、「ねぇ。」と遥季に話しかけた。
「あ! 梨緒……。えっと、」
はっきりしない様子の遥季に変わり架威が答えた。
「詳しいことはまた今度だ。悪いが今日は帰ってくれ」
「――わかった。悠依のことよろしく」
そういい残し梨緒は帰った。
***
そしてここは遥季の家。
「架威! ああいう言い方は……」
「なんだ、遥季。“もう少し優しく”ってか? ああ言わなきゃあいつは帰らなかったよ」
「そうだけど……」
2人の会話にわって入ったのは薙癒だった。
「主」
「どうした、薙癒」
「悠依ちゃんが」
「悠依がどうした!?」
「命に別条はないのですが……」
そこまで言って薙癒は黙ってしまった。代わりに架威が答えた。
「血が足りないのか」
「うん」
「悠依は珍しいからな……」
「何型なんだ?」
「A型のはずだ」
「A型!?」
この世界では多い順にO型、B型、AB型、A型となっている。しかもA型は滅多にいない、希少な血液型なのである。
「A型……誰かいなかったかな」
薙癒と遥季が考えていると架威が話し出した。
「俺はダメなのか?」
「架威?」
「式神にも血は通っているだろ? それに俺の記憶が正しければA型のはずだ」
薙癒はハッとして遥季を見る。遥季はジッと目を閉じ何かを考えているようだった。
「薙癒。架威の血を悠依に輸血してくれ」
「主! いいんですか。式神の血を……」
「それしか方法はないからな」
「――わかりました」




