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12【ストーカー】

「ん……!?」


 目を覚ました悠依は焦った。

 理由はもちろん……


「んん。――あぁ起きたのか? 具合はどうだ、悠依」


 そう、架威である。

 悠依が起き、ふと横を見ると架威の顔が至近距離にあったのだ。


「具合は大丈夫! だからその、早く離れて……」 


 それは男子とほとんど関わってこなかった悠依にとっては耐えることのできない恥ずかしいことだった。

 もちろん架威は遥季から聞いているためそのことはわかってはいるのだが、架威の性格から言って素直に離れるはずはなく。


「ん? なんで?」


 架威は妖しく笑いながら悠依に詰め寄る。


「だ、だから……離れ……」


 悠依は顔を背けながら詰め寄る架威を必死に食い止めている。そんな悠依の様子を見た架威のドS心に火がついた。


 ダンッという音とともに悠依はさっきまで寝ていたはずのベッドに押し倒されていた。


「か、架威!? な、なにして……!」

「何って、別にただ押し倒しただけだろ?」


 悠依はパニックに陥っていた。

 そんな悠依とは対照的に架威は嘲るように見下ろしながら妖しく笑っていた。


「なに? 何か期待してたの?」


 そういって悠依の首筋に舌を這わせた……。

 そのとき、妖しく笑う架威の背後に目が笑っていない遥季の姿が見えた。


「架威。お前それ以上やったら札破るからな」


 普段の遥季からは想像できないような低い声。


「ちっ。怒るなよ、遥季。冗談だろ?」

「……一回消されたいか?」

「――悪かったよ」

「で、目が覚めたみたいだな? 悠依、大丈夫か?」


 さっきとは全く違ういつもの遥季にホッとしつつ悠依は答えた。


「うん。大丈夫みたい! また迷惑かけちゃったね……」

「いや、それは大丈夫。それよりお前、今回は誰に噛まれた? 伊織じゃないだろ?」

「何でわかるの?」

「伊織に呼び出されたら俺か誰かに言うだろうと思っただけなんだが、その反応。読みは当たってたみたいだな」

「うん。あの時……」


 悠依はあのとき、誰に呼び出され、何をされたのかを、遥季達に話した。


「久遠織斗か......」


 遥季は深刻な顔をして考え始めた。


「織斗……あいつはやばいぞ」


 そんな遥季を横目に架威が話し出した。


「架威? 織斗を知っているのか?」

「一応クラスは全員と関わっておいて損はないかと思ってな。織斗の仲間に話しかけられたから良い感じの印象はもたれたと思うんだが……」

「だが?」

「あいつはまずい。一見静かでまともなやつかとも思ったがあいつ、目をつけたやつには異常なほどの執着をみせるらしい」

「――それってまさか」

「簡単に言うとストーカー要素の強いやつだ」

「うわー」


 薙癒が心の底からひいているような声で言った。


「え、じゃあ……」


 遥季がなにか気づいたように言う。


「じゃあ、悠依もストーカーされるんじゃ……?」

「――まあそうだろうな」


 架威がすんなり言い放った。

 そして「嫌だー!!」という悠依の叫び。


 この日、この近所では女性の「嫌だー!!」という声が響いたとか響かなかったとか。

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