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55日目 蒼天すでに死す

「私が蜀軍。アカネは魏軍かしらね。そして、こいつは呉軍ね。奇しくも三国志の様相を呈するとは」

「お姉ちゃん、それだと最後には全部滅ぶよ」

「いいのよ。もう! この封筒からは女の匂いがするわ」

「開ける前に聞くけど、これがどんな手紙だったらお姉ちゃんは満足するの?」

「いたずら!」

「じゃあ逆の場合は?」

「恋文」

 とはいえ、携帯電話が中学生にも当たり前のように普及しきっている現代において、いくら女の子はかわいらしい封筒や便箋を集めるを好きだといっても、それをわざわざいたずらのために買ったり、使ったりは考えにくい。

「開けるよ」

 両手で顔を覆っても、ヒカリはそこから目を逸らせず指の間から覗く。

 そこにはかわいらしい丸文字で何行もの文章がたくさん書かれていたが、まるで魔法の呪文のように見たくない言葉だけがよく目に付く。

「好きです」「見ていました」「付き合ってください」


「これは間違いないね。基本的にお兄ちゃんは優しいし、イケメンではないけど悪くはないから……」

 惚れる女がいるのも考えられないわけではないとアカリは冷静に分析する。

「これは犯罪予告ね」

「もう無理があると思うよ」

 この日、ヒカリが真っ白に燃え尽きたという。

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