42日目 露出の代償
「うーん」
珍しくヒカリが難しい顔をしていた。
「ああ、スマフォの使い方わからないの? なら教えてあげるよ」
「いいえ、使い方どころか構造も全部わかった。写真撮影の時に音を消すアプリも自作した」
「それ犯罪」
「大丈夫よ、私のデータフォルダにはマサヤしか入ってないから」
「それなら合法」
アカリはいつものソファーを奪われたことで寝転がれないので、大人しく座ってヒカリが見つめる新品同様のスマフォに視線を落とす。
「決定的に足りないものがあるのよ」
「なに?」
「マサヤの寝言がない」
「寝言?」
「たまに寝ぼけて『お姉ちゃん』って言うんだけど、そういう声のデータが。こればかりはどうしようもない。前の携帯、データ移す前だから全部パア」
衝動的とはいえ、まずいことをしてしまったとヒカリは後悔している。
「マサヤがこっそりパソコンで見てるエッチなサイトも、検索履歴も全部知ってるんだけど……こればっかりは」
「枕の下にお姉ちゃんの写真でも入れておけば?」
「それだ!」
実際にそれでは効果がないが、ヒカリがあまりに乗り気でアカリはなにも言えなかった。
――翌朝。
「徹夜した甲斐があった」
スマフォをアカリに自慢げに見せる。
「睡眠学習で私の夢を無理やり見せてやった」




