32日目 この魔法の名前は
「マサヤ、オムライス食べたいな」
「料理なら姉ちゃんの方が上手だよね?」
「マサヤのがいいのよ。ほら、私普段は忙しなく働いている設定だから」
「設定って……」
「アカリも姉ちゃんと同じでいい?」
「嫌いじゃないからいいけど、お腹空いたからはやくね」
朝の残りの白米を冷蔵庫から取り出して、ピーマンにハムににんじんと一緒に炒めてケチャップライスを作り、横に置く。
別のフライパンで溶いた卵を流して、ケチャップライスをのせて包む。
「はい、できた。すぐに姉ちゃんのも作るね」
「お兄ちゃんって、友達も恋人もいないのに、モテスキルだけは抜群だよね」
「いいのよ、これで。恋愛アドベンチャーゲームで恋愛せずに学年一位の成績を取って、青春を謳歌せずに卒業していく運命なのよ、マサヤは」
そんな二人のやり取りには構わず、マサヤはヒカリの前にも、白い湯気が立ち上るオムライスを置く。
「お兄ちゃんケチャップ片付けちゃったの? 出してよ」
「ごめん、忘れてたよ」
冷蔵庫から出してアカリに手渡す。
「ねえ、マサヤ。私のオムライスにさ、メイド喫茶のメイドさんみたいな書き文字してよ」
「メイド喫茶なんて行ったことないんだけど」
ニュースの特集で見たことがあるぐらいだ。
「なんて書けばいいの?」
「そうね……、だ、『大好き』ってハートマークを入れて」
「いいよ。――はい、できた」
「お姉ちゃん鼻血出てるよ」
「マサヤ、これ少ないけど取っておいて」
マサヤは3500円を手に入れた。
「なんで?」




