22日目 名曲
「洗濯はアカリ任せだけど、僕は手伝わなくていいの?」
「私は滅多にやらないし」
基本的には母がやるのだが、帰宅が遅いため体操着などの急を要する洗濯はアカリに頼むことになっている。
「それにお兄ちゃんに私がお兄ちゃんの服を洗ってるところを見られたくない」
「そういうのってアカリの下着を見られたくないから、僕に手伝ってもらうのを拒むのが、一般的な思春期の女の子のセリフじゃないの?」
アカリは兄の衣類に対してなにをしているのか心配になる。
「私の下着、見たいなら別に見てもいいけど、盗んだら社会的に殺す」
見られるのは家族の間だからいいけれど、盗んだら社会的に殺されるとは、その温度差が恐ろしい。
「そもそも盗まないよ! って盗むで思い出したんだけど」
「なに? なにを盗んだの? 回覧板にお兄ちゃんの所業を書き込むから詳しく」
「そうじゃなくて、僕の青いトランクスが最近見当たらないんだけど、知らない?」
「なんで私がお兄ちゃんのパンツのことを知らなきゃいけないの? あ」
「なに最後の『あ』って! なにか知ってるの?」
「……お姉ちゃんかも」
「姉ちゃんがなんで?」
「今夜聞いてみる」
――翌日。
「スクーターが寒いからだって」
「え? 僕それで納得しないんだけど!」
「お姉ちゃんのすることだし。きっと盗んだパンツで走り出すんだよ」
「それでもだよ! うまくもないよ!」




