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雷が落ちたと思った。
花に囲まれて座るあなた。
髪は自分が見たどんな髪より艶やかで。
シャツから覗く細い首筋。
あなたの耳が静謐への乱入者の気配を捉え。
首を巡らせ。
あなたの青い目が自分の方を向いた。
その瞬間、僕はあなたのものだった。
***
幼少の砌から騎士になりたいと願っていた。
ある日、めかしこんだ母に連れられ、然る御方の屋敷を訪れた。
「おくがたさま」にお目通をして御挨拶を申し上げて、自分のみが女中に庭へ案内された。
庭に続く木戸の手前にて。
こちらにおわすのは貴い御方、とある理由で身分を隠しておられるのだからくれぐれも無礼のないよう云々。
女中はつらつら並べ立てた。
自分は殆ど聞いていなかった。
この先に待ち受けているのが何者なのか。胸中に占めるのはただその一点のみであった。
かの御方は香しい香りを放つ花々に囲われていなすった。
舶来の長椅子に腰掛けて、本を開いていなさるその姿は、あれから何年も経た現在も鮮明に脳裏に描くことができる。
恐る恐る前方に進み出る。
その方は顔をお上げになった。
「お前が僕の護衛かい。」
暫くは気づけなかった。
その方が言葉をお掛けになっているのが自分であると。
その御方が青い瞳で自分をじっと見つめるので、返答を求められていることを漸く察し、慌てて答を返した。
「左様で御座います。」
同年代の子共の中で抜きん出て武芸に秀でた自分がさる貴き御方の護衛として抜擢されたことは、数日前に父母から告げられていた。
忠誠を誓い我が身に代えても御守り申し上げるように、と重々言い含められていた。
しかし、そのようなことは全くの不要だった。
その御方を目にしたとき、この方の為であれば命も惜しむまい。
ただただ思ったのだ。




