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謎のマッチングアプリ【マッチングゥ】から始まる彼女探し〜恋愛経験値0の俺は指示に従うだけです! ほんと彼女できんのっ!?〜  作者: おみくじ


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19/19

初めまして

ムーンバックスカフェに初入店し、エスプレッソラテという今まで頼んだことのない飲み物を無事にゲットして、あとはマッチングゥから課された、『店内で飲む』という、陰キャラの俺にはハードルの高いミッションをクリアしなくてはいけなかった。


 っで、今の俺は小さな木製のマルデーブルの空いている席に、混み合う店内でなんとか座ることができた。あとはエスプレッソラテを急いで飲み干して、このふんわりオシャレ空間から逃げるのに専念すればいい………、わけにはいかなくなった。なぜなら、



 じーーーーー。


 俺の正面には、初対面の女子が座っていた。眼鏡越しの瞳は、俺を興味深けに見つめていて。銀縁のシンプルな眼鏡が、清楚な顔立ちにとても映える。図書委員が似合いそうな雰囲気だ。

 座る席が中々見つからなくて、おろおろしていた俺を、手招いてくれた優しい女子。もしこの子に呼ばれなかったら、空いている席にいまだ座ることもできず、ムーンバックスカフェのオシャレ重圧にテンパっていただろう………、今は、初対面の女子と相席でテンパっているけどねっ!!


 正面にいる彼女が、綺麗なストレートの黒髪を時々片手で触れながら、少し固い笑みを浮かべた。


 どうすればいいか、迷っている感じだ。解る、俺もそうだし。


 ブブブブブ! ブブブブブ!


 そんな俺の気持ちを知ってか知らずか、スマホがふるえる。もちろん、マッチングゥからだろう。


 ブブブブブ! ブブブブブ!


 だぁぁぁぁぁぁ!! もう、このテンパっているときに、煽るようにふるえるんじゃねぇよ!!


 俺は頬がひきつらないよう努めながら、


「ご、ごめん、ちょっとスマホ鳴ってて」

「えっ? あ、う、うん。どうぞ」


 眼鏡女子は少し言葉に詰まりながらも許してくれた。ほんと、良い人過ぎる。


 制服のポケットからスマホを取り出し、画面を見た。もちろん、眼鏡女子に見えないよう隠して。画面には、


『自己紹介!』


『自〜己紹〜介!!』


『自•己•紹•介!!』


『自己紹介✖️自己紹介』


 頭に血が昇る、というのはどういうことか分かった気がした。煽りまくってんじゃねぇぞ!! このくそアプリがぁ!! 今にでもスマホを床に叩きつけたい。なんだよ自己紹介って!!


「あっ、あのぉ」


 思わず体がビクつく。声のした方へ、そっと顔を向ける。


「えっと、大丈夫です? 顔が少し赤いというか」

「うっ!? だ、大丈夫! い、いつも通りというか、あはははっ!」


 そんなわけないと心底思いながらの空笑い。眼鏡女子は、愛想笑いを浮かべた。や、やばい! どうしよ! また静寂が!! 俺と眼鏡女子のテーブルだけ違和感半端ない!!


 周りの席からは会話が聞こえ、どこか賑やかな雰囲気だというのに!


 ふっ、と眼鏡女子の愛想笑いが消えた。辛そうというか、どこか寂しげで、暗い気持ちになっているのが、非モテキモ男子の俺でも手に取るように分かった。このままじゃいけない。脳裏によぎる、煽りの文章。


「あっ、あのさ!」


 俺は気づいたら口を開いていた。呼びかけに、眼鏡女子が注目する。表情の無い雰囲気に俺はゴクリと緊張で喉を鳴らしながらも、頭になんとか浮かんだ言葉を、精一杯、口にした。


「は、初めまして。あ、青木春助です。高校2年生で、は、初めてのムーンバックスカフェで、エ、エスプレッソラテを注文しました」


 自己紹介。今の俺にはこれぐらいしか言えなかった。言い終わると、


 眼鏡女子の瞳が大きく見開く。ドキッとした、女子からこんな凝視されたこと無かったから。あと、距離も近い。


 少しの間の後、眼鏡女子の頬が、緩んだ。


 好意的な微笑みを浮かべてくれた。俺は、その笑みにちょっと見惚れて。そして、眼鏡女子は、艶のある小さな口をそっと開いた。


「初めまして。小川陽菜おがわひなです。高校2年生、行き慣れたムーンバックスカフェで、大好きなホワイトモカを注文しました」


 そう言って、イタズラに笑う。


 緊張の薄れた表情に、俺もどこかホッとする。同じ学年、ていうのも、どこか、安心する。


「えっと、青木くんは、コーヒー好きなの?」


 小川陽菜おがわひなの好意的な笑みと共に、会話が動き出した。

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