40秒で支度しな!!
昼休みが終わってからの午後の授業の間も、俺はずっと気持ちが休まらなかった。
だって初めてギャル系の女子としゃべったし! しかも俺、お、お弁当のハンバーグまであげてるし! そのあと俺はお箸を逆にしてお弁当たべてさ! いやほら、美結ちゃんが使ったから! その、間接なんたらだから!!
令和ギャルこと、甘野美結ちゃんの、ハンバーグを食べた表情が今も脳裏に焼き付いている。
淡く薄い唇に、緩んだ口元。透明感のある白い頬を少し膨らませながら、美味しそうに味わって目を細めている、愛らしい笑み。
可愛さが半端ない! 顔が熱い! ち、違うこと考えるんだ! えっと、あっ! 錦戸舞花にハチワレ猫の写メまだ送ってないじゃん!?
朝の登校でこれまた初めてしゃべった同じクラスのスポーツ系女子。威圧的な猫みたいな吊り目が蘇る。
緊張が半端ない! や、やべぇ! 鼓動が早いんですけど!!
とまあ、下校するまでこんな感じで。
校門を出たらもう早足。この時ほど帰宅部で良かったと心底思った。
早く家に帰って部屋にひきこもりたい! 大好きなゲームでいやされたい!!
午後4時過ぎに帰宅。家には母さんがいなかった。買い物とかに出掛けているのだろう。良かった、もし会ったらこれまた気まずいしさ、マッチングゥのせいで。
自分の部屋へ直行。ドアを閉じて、俺は深いため息をついた。
やっ、やった!! 俺の平穏が訪れ、
ブブブブブッッ!!
「いいっ!? わわわっ!?!?」
思わず声を上げる。制服のポケットから激しい振動音だった。
み、見たくない!! もうどこからの着信か分かるから。
ブブブブブッッ!!
「うぐっ!?!? か、勘弁してくれよ」
俺の平穏を奪う憎き、
「このマッチングゥがぁぁぁ!!」
ムカつきながらスマホをポケットから取り出した。電源を落とそうと思った。でも画面に思わず目を見張った。
『デイリーミッション!!』
「は、はあっ!?!?」
なんだそれ!? ソシャゲーかよっ!!
そう思ったとき、画面の表示が勝手に変わった。
『ムーンバックスカフェでコーヒーを飲みに行こう! 今から、40秒で支度しな!!』
「なっ!? は、はあっ!?」
ラピ◯タのドーラかよ!? って違うだろ!!
俺は自分の部屋で1人、スマホに、いや、マッチングゥ! に対し文句の声を響かせていた。




