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鏡界館  作者: 織優幸灔
一章
2/155

2.案内

 クレープをかじりながら、課長室に呼ばれたので課長室に向かう。





「失礼しまーす」

「……遅い。三分」

「迷った」

「いい加減道覚えぇ」

「なんの用っすか」



 パーカーに片手を入れ、足で扉を閉める。


 この薄暗いとてもじゃないが三十には見えないおっさん(おじ様)未優(みゆう)日蔓(ひかづら)の上司にあたる。



 未優は平社員。日蔓が主任でこれが課長。




「その子が第三班に加入する。色々と説明してやれ」



 課長がさした方を見れば、ソファにはどこかで見た気がする少年が座っていた。

 傍には大きなリュックと小さな荷物もいくつか。



「誰? なんで私が」

「嘘だろあれで忘れたの!? まだ一週間も経ってない!」

「何日前? 何時?」

「五日前の二時……ぐらい!」

「私この五日間で十三件入ってるんだよね。君みたいな高校生は何十と見た」

「自己紹介の時にいなかったから名前言っても分かんないでしょ!? 車花宮(しゃかみや)静璐(せいろ)!」

「………………なんか日蔓(ひかづら)が言ってた」

「ほんまかよ」



 明らかに不自然な間ができたせいで課長が思わずツッコミ、未優はぎこちなく頷いた。絶対適当に言ったなこいつ。



「今日は日蔓が休みでいんからこれに案内を任せるけど、後で戻っといで車花宮君。分からんかったとこは全部教えるから」

「課長が今教えりゃいいじゃん……」

「一旦は目通した方が分かりやすいから」

「ふーん」





 課長から教えることのメモを貰い、クレープのゴミを捨てるとそのメモを見ながら課長を出た。


 あとから静璐が慌てて付いてきて、正面の階段を降りる未優の後を追う。





「全寮制で寮は1LDK、八畳でトイレと風呂は別。キッチンは二口で。えーと……未成年には学校が付いてて年齢ごとにクラスがわかれる。あとは……そんぐらい?」

「少なっ!? 消灯時間とか食事とか!」

「消灯時間はない。仕事は二十四時間休みは週一。食事は各自でもいいし売店と地下に食堂にはある。ほかは?」

「そのメモ何書いてあんの……?」

「寮と仕事の説明って」

「大雑把だなぁ……」




 静璐が色々と聞いていき、未優が色々と答える。

 部屋は一零六三号室。何ヶ月か前に引退した方の部屋。

 計三千八百六部屋あり、各階十三部屋で五棟に別れて五十九階から六十階。一零六三は二棟目。




 入寮は何歳でも家族持ちでも強制。外出時間や制限時間はないが仕事以外で三日間帰ってこないと捜索が始まる。私事でそれ以上空ける場合は必ず届出を出すこと。




 病院は付属病院があり、緊急時は警察と協力することも多々。


 今未優が所属している班は課長が率いる六班構成内の一つ、第三班。班と言っても第三班は未優だけ。

 数字が小さくなればなるほど強い人がいる。



 まずは見習いから始まり、研修生、平社員、平社員内の班所属、主任、課長、次長、部長、専務、会長。

 課長より上はあまり関係ないので省くとして、見習いは静璐のような入ったばかりの人のこと。まずは平社員たちと軽い仕事に行って見て覚える。


 研修生は平社員とともに仕事をこなして覚える。


 平社員は見習い、研修生の管理、班所属が出向くほどでもない仕事をこなしたり、各地で見張りをしたり。地方の仕事依頼を入れてくるのはだいたいこの平社員たち。


 班所属の平社員は、全平社員内から選ばれた選りすぐりの精鋭たち。課長が三人、各課長が一人六班ずつまとめ、各班には一人の主任がつく。

 班は基本的に三から多くても五人。一人二人は珍しい。と言うのも、その人数で班に回ってくる仕事をこなせる実力なら主任や課長、その上に上がっているから。


 主任は今の説明通り、班の面倒を見る。だいたいはスケジュール管理だったり仕事を取ってきたり。

 あとは知り合いの見張り平社員から直接仕事を受ける人もいる。



 課長に関しては六班の活動記録を作って上に給料を請求するだけ。それ以上はあとは知らん。






「未優は……」

「さんをつけろ。あと敬語。歳下でも上司だかんな?」

「うす。未優さんは主任とか課長にはならないんすか? 一人なんすよね」

「私の場合は仕事能力がまだ育ってないから。主任も過去最年少で十九だし」

「なるほど。……俺は見習いからだから……また別の人が教えてくれるんですか?」

「たぶんね。誰も教えてくれなかったら課長に泣き付きな」

「……うす」

「他分からないことは?」







 とりあえず寮の鍵を渡せと書いてあるので寮に向かう。


「あれ、三棟だけ……」

「残り二棟は北と南にあるよ」

「そっか。見張りの人達はその……」

「いやホテル。その二棟は家族用だから」

「まだ親元離れられない子達っすか」

「それとか見張り以外で赴任してる夫婦とか」

「ほへぇ……」

「いくら特殊な業種と言ってもプライベートはあるからね」




 三棟建っているうちの中心にあるマンションの中に入り、窓口に声を掛けた。




「すみません」

「こんにちは太薰蛇(たしげだ)様。お仕事お疲れ様です」

「ありがとうございます。新入居のえーと……君名前なんてったっけ」

車花宮(しゃかみや)静璐(せいろ)です」

「車花宮様。鍵をお預かりしています。少々お待ちください」



 綺麗な女性は立ち上がると奥に入っていき、少ししてから戻ってきた。

 紙の小袋を渡され、静璐はそれを出す。




「このマンションは厳重ロックなので鍵を開けてから隣のボタンで決めたコードを入力して下さい。忘れたら身分証と社員証で再設定が必要になります。番号はどうされますか?」


 マンションの説明を聞いているうちに未優は消えており、静璐と窓口から身を乗り出した女性がキョロキョロしていると外に未優が歩いているのが見えた。



「……今のうちに決めておきましょうか」

「はい」





 マンションの説明を聞きながら色々と登録して設定していると、未優がふらっと戻ってきた。



「君帰りの道覚えてる? 私仕事の時間なんだけど」

「あ、大丈夫です!」

「それじゃ」

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