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鏡界館  作者: 織優幸灔
四章
152/155

12.時の男

 人間らしさのない動きで界魔と支配人を同時に相手する日蔓を見下ろし、あくびをする。




「呑気だね」

「まー俺もう死んでるし?」

「あはは同じだ」



 ローブの男と結楽の似た性格二人がアホな会話をしていると、屋上に七竈(しちくど)がやってきた。



「結楽」

「あ、せんせーやっほー!? 腕残ってるー?」

「なんとかな。……これ使え」

「……俺やっていいの?」

「問題ない。そもそもこいつも予定外の存在だ」



 結楽は七竈からケースを受け取ると、それを開けてライフルを出した。


 本を読む少女に許可を貰った結楽はそれをセットし、優羽はタブレットを開いた。



「ライフルとか使えるの……!?」

「うーん、作ってくれる専門職がいるからね」

「ねーこっちにはそれできないの?」



 ローブの男が少女に話しかけると、少女は少し顔を上げる。



「……まぁ、ないだろうな。同じような世界観なのに同じ設備があれば一方の面白みが減る」

「メタくない? 作者の都合って感じ」

「そもそも世界が別れる理由は作者(創作神)の娯楽だ」




 曄雅や未優、静璐と連絡の取れた優羽は結楽を見下ろした。



「腕なまってないよね?」

「四十年触ってないからね」

「大丈夫だね」

「唯一の仕事を放棄するわけないでしょ」

『子供二人支配人側、曄雅界魔潰すよ』

「どーぞ」



 界魔の肩に手を置くとそれを軸に逆さまになり、足を撃ち抜かれ動揺した界魔の首に短剣を突き刺すと爆破させた。




 体を蹴り飛ばし、支配人の方へ加勢する。




「未優、静璐下がって」

『えうっそ』

「やるよー」



 結楽は曄雅の後ろ側から支配人を撃ち抜き、久しぶりの援護に曄雅はやりにくさを感じる。懐かしすぎてちょっとやだ。




「現代日本で銃声聞くことになるとは」

「生きた人生死人に会うとは」

「……まぁ、それはそう」



 本を閉じた少女がまだかなーと空を見上げていると、その視界の端に何かが写った。見れば、さっき日蔓が首を破壊した奴。



 目を丸くするのも束の間、ローブの男、火光(かこう)は手を伸ばした。




──妖心術 霍壁(らくへき)──

──妖心術 守衛(シュエイ)の牢──



 界魔の前に黄色っぽい緑っぽい壁が現れ、界魔の手が当たった瞬間バチバチバチと何かが弾け界魔の手が焼き切た。



「わ……なに……!?」

「あれ、案外脆い?」

「お前が相手にしていた奴らからすればそうだろうな。言ってしまえばボスが身体強化と術なしで殺せる程度だ」

「あそ〜……」



 現れた壁は界魔を通さず、しかし内側からの結楽の弾は通す。


 数秒もしないうちに背後に未優が現れ、界魔を蹴り飛ばした。





「あの子強いね」

「死んだら困るからな」

「意外と過保護?」

「物語を成立させるためのものだ」

「自分は興味ないくせに」

「創造神の意向だ」

「ツンデレちゃん」



 優羽と結楽が鼻で笑い、少女は宜しくない言葉というのを察したのか火光を睨んだ。


 火光はふいっと顔を逸らして、月を見る。




 もう二時間ほど経っているが。





「ねむーい……」

「眠いよねぇ。早く終わんないかな」

「その呑気さが羨ましいよ」

「気張ってたら老けるよ!?」



 喧嘩する優羽と結楽を曄雅が怒鳴って止める。




「優羽界魔交代させて。再生間に合ってない」

『未優界魔と交代。静璐と支配人行って』



 日蔓は支配人の頭ばかり狙ってくる動きを払い、胸や腹部を蹴り殴る。が、全くと言っていいほど手応えがない。ある程度予測範囲を立ててから使いたかったが。



「未優静璐一旦下がって」

「え!?」

「一旦ね」



 二人が下がると、刀を抜いて支配人の手を真正面から受ける。

 後ろに流し、懐に入って切り上げた。はずなのに、たぶん皮一枚、ほんとに一枚しか切れていない。



『かった……』

「あれの強さってどんなもん?」



 優羽から無線を借りた火光が少女を見下ろすと、少女はどこからか分厚い本をもう一冊取り出した。


 それをめくって、辞書のように引いていく。




「えぇと、お前が四年前にやったやつより弱い」

「んじゃ余裕だ」

「やるか?」

「これ動きにくいから嫌」

「やるなら動ける服装と見られても問題ない体を用意してやろう」

「ほんと! じゃあやる!」

「日を越える五分前になったらな」











 と言ったが、日を越える前に壊滅状態になりそうだな。


 支配人が思ったより厄介な異能を手に入れている。これじゃあ、ここの人間は太刀打ちできない。




「……降りるか」

「せめて準備運動の時間ぐらいほしかったなー……?」

「諦めろ。怪我する体じゃない」





 火光が立ち上がると、少女は火光のローブを掴んだ。


 勢いよく引くと、ローブは消えジャージに変わる。



「おぉすごい!」

「存分にやってこい」



 優羽と結楽は愕然とし、火光はそれを見付けるとにっと笑った。





 赤に近い朱色の髪に、綺麗な紫の目。身長はたぶん、190を超えているんじゃないだろうか。



「色素どうなってんの……!?」

「身長たっかッ! いいなー!?」

「いいでしょー。……こっから離れないでね。守れなくなるから」

「言われずとも」




 少女は柵に座り直し、火光が下に降りようとした時、驚きが抜けなかった優羽が声をかけた。




「ね、ねぇ! パーカー! 怪我しなくなるから……!」

「いらないかな。これの方が動きやすいし」



 火光は飛び降りると、屈伸の勢いを使って支配人を蹴り飛ばした。



「は、誰……!?」

「下がって。邪魔になる」

「あッ!?」

『曄雅下がって』



 曄雅は吹き飛ばされて気絶している未優を回収する。




「優羽あれ誰」

『さっきの白い人』

「……マジ」

『壊滅する前にーだって』



 まぁあの強さなら、たしかに壊滅する前に終わりはするだろうけど。



「人間の強さじゃないじゃん……」




 未優を医療班に預け、自分も手当してもらいながら変な術を使いながら支配人を圧巻する男に目を向けた。


 異能、じゃあないよなぁ。









──妖心術 氷壁(ひへき)──

──妖心 座敷童子──

──妖心術 香昏(かぐら)──



 ほんとに、これじゃあまだ生徒たちの方が強いかな。



 足を振り上げ顔面を横蹴りで地面に叩き付けると、首に足を置いて勢いでへし折った。



 うん、()()()()よりは弱い。





「終わったか」

「んー、だいたい!」

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