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鏡界館  作者: 織優幸灔
三章
117/155

27.双子

 とりあえず戦いが一段落し、マネージャーとマネージャー歴のある人たち総動員で記憶を消している間に未優は一人でふらふらと更地を歩く。

 あちこち燃えていたのを警察と消防と協力して消火して、今はかなり静かになった。


 時間で言うと五時半すぎぐらい。




 衝羽が買ってきたケーキを食べたので気分は悪くないが、静璐は日蔓と界魔とトラックにいるし衝羽たちは怪我人の手当で忙しいし専務は三人ともいないし。



 一人暇なのでほっつき歩いていると、適当に歩いた先が家だった。

 周りのビル群が壊れ、瓦礫の山となっている中そのおんぼろ平屋の周りだけは妙に綺麗。

 別に塀や何かで守られていたというわけでもなさそう。


 なんなら瓦礫の山に死角になって見えなかった。




 どうせ誰もいないしと思って足を振り上げると、傷に激痛が走ると同時に何かに弾き飛ばされた。


 頭を抱え、瓦礫の上に落ちる。あと十センチ飛んだら頭に鉄筋刺さってたな。




「なにこれ……」


 一瞬混乱し、界魔の何かかと思いながらフードを被って扉のドアノブに手を伸ばした。が、また弾かれ、慌てて足を着いて着地する。




「みゆー? どうしたの」

「この家弾かれる」

「何言ってんの」


 歩いてきた日蔓と衝羽に今起きたことを話したが、そりゃ眉を寄せて首を傾げるだけで。



 口で言っても埒が明かないのでまた警戒しながら近付くと、今度はドアノブに手を伸ばす前に弾き飛ばされた。


「危なッ……!」



 頭に激痛が走り、受け止められた日蔓の腕の中で頭を押さえた。



「未優!?」

「あ、たま……痛い……」



 何かで殴られたような痛みに襲われたかと思えば、衝羽がまた顔の前であの眠り香を焚いた。

 未優とよく一緒にいる人は全員持っている。



 未優はガクンと脱力して眠りに落ち、衝羽は未優を平たい地面に寝転ばせると異常な症状がないか確認していく。


 界魔屋になってからでもちゃんと医学の勉強は続けている。




「……特に症状はなさそう。……これ界魔関係……としか言いようがないよな」

「だねー」

「今の衝撃で記憶が戻りかけたのかも」

「今まで頭痛なんて症状なかったよ」

「今まで混乱とトラウマで頭痛なんか気にしてる暇なかっただろ。今回はお前の腕の中だったし」

「関係ないでしょ」

「知らんけど。一応検査はしといた方がいい。起きる前に」

「一台手配しとく」




 日蔓は他の人が近付くと危険だからと衝羽に未優を任せ、自分は家の前に立った。

 あの爆発の中で残っているのだから相当強い結界的なものが張られているんだろうが。



 恐る恐る手を伸ばすと、意外にも普通に触れた。さっきの未優のあれはなんだったのか。




 失礼承知で戸を開けると、廊下なしの小さめの居間に子供が二人、くっ付いて座り込んでいた。



 髪の長い子の方は唖然とした表情で、雑に髪の毛が切られた子はもう一方の頭を抱えて庇う。



「誰……!」

「君らだけ? よく生きてたね」

「あ、あの、化け物は……」

「外にいた白いヤツでしょ? もういないよ」

「し……死んだの……?」

「逃げたの。ここ鏡とかある?」

「あ、ある、けど……? 割れてるよ……」

「見せてもらっていいかな」



 台所の反射も洗面所の鏡も和室の窓も、どこも鏡界は開いていない。未優がいないので中がどうなっているかは分からないが今の一瞬で逃げ仰せたというのはさすがに無理があるな。

 逃げたなら鏡界を守らないとという危機管理能力のある多少知恵のある界魔だが、そんな界魔が人間の生気を吸わずに放っておくわけがない。守りたいなら鏡界につれていくだろうし。



「……君ら兄弟?」

「あ、あの、誰……?」

「日蔓って言うんだけど。さっきの化け物退治を専門としてる会社の一社員」

「会社……? そんなのがあるの?」

「そうだよー。君ら親は? 兄弟? 近況教えてほしいんだけど」



 片親、引き取り手の父親は昼は女の所へ夜は夜の街へ。酒に溺れる典型的クズ。


 どうやら双子らしい。顔は似ているが、丁字(ちょうざな)兄妹を知っているとどこからが二卵生でどこからが一卵性か分からない。


 さすがに性別聞くのは失礼だよなぁ。




「……学校とか行ってる?」

「いっ……て、ない」

「中学生?」

「うん。……でも、制服とか鞄とかなんにもない。買ってないから……」

「歳は?」

「十三」

「中一か。親の連絡先分かる?」

「す……スマホ、ない……」

「電話番号とか」



 首を横に振ったのを見下ろし、なんかこういう子多いなぁと思いながらスマホをいじった。

 優羽に、新人が二人増える、と。



「よし! おいで。お腹空いてる? なんか買ってあげるよ」

「……身代金ないよ。借金しかない」

「君らが稼ぐから大丈夫。言ったでしょ、会社なの。中学生も君らより幼い子達もいる。学校も生活もこっちで全面サポートする代わり死ぬ気で働く。それが条件」

「な……何するの……? 俺だけなら……!」

「二人とも。まぁあの化け物殺せるようになるまで鍛えるだけだね。大丈夫、才能ない子達なんていーっぱいいるから君らならすぐ上がってこれるよ。さ立って」



 二人を急かして立たせ、家の外に出ると二人は寒さに肩を震わせた。


 ちょうどやってきた優羽からパーカーを貰い、二人に渡す。



「着といて。それ一枚で防寒十分だから」

「あいっかわらずの収集癖」

「そんな収集癖なかったし」

尊音(たかね)から聞いた限りでは八人は集めてたよねー」

「情報通め」

「それほどでも」



 別に褒めてない日蔓は優羽の額を小突き、パーカーに感動する二人を見下ろした。


 十三にしてはかなり小柄な方。まともに食べていないんだろうな。



「あと頼んでいい? 僕病院行かないと」

「未優ちゃんね。大丈夫なの?」

「んー……たぶん。もしかしたら記憶が戻る可能性はあるけど」

「行っていいよ。二人は預かるから」

「助かる。書類はこっちで作っとくー」

「作らなくていいから休めばかー!」



 走って行った日蔓を見送り、おどおどとする二人に声をかけた。



「それじゃあまずは温泉行こうか。……二人とも女?」

「俺は男だし!」

「女々しい体付きだね。おいで〜」



 その二人、太陽(たいよう)恋千(こゆき)を連れて女子運転手の車に乗った。


 ざっと説明して、驚いていたが曄雅と言えば頷くんだから凄い。





 太陽は一人で行かせ、恋千は運転手に預けた。


 優羽は車の外でたばこを吸う。

 たばこは小学校高学年か中学生ぐらいの頃から吸っていた。

 元々性格と品性が終わっていたのを、たばこを吸っていれば多少はマシになった。だから吸い続けていたのだが、三人で班になったあとに日蔓にウザいと言われ禁煙し、部屋から出られなくなると同時にまた吸い始め、そのままずっと吸い。


 よく考えれば悪ノリで十三歳と十五歳が吸うもんじゃねぇな。

 よく考えなくてもそうか。





 馬鹿やっててなんぼの時代だったよなぁと思い返しながら集ってくる女子を追い払っていると、三十分ほどして三人が出てきた。



「優羽さん、お待たせしました」


 風呂の後に牛乳と、おにぎりやジュースは飲ませたらしい。二人とも嬉しそうなのを見ればお気に召したか。



「ん〜、じゃ服買って美容室行って帰ろうか。生活用品はまた明日」

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