静謐 Ⅱ
翔視点に戻ります。
「いやーすげぇ豪華だな!」
「上位クラスのダーツバーって凄いですね…。ここまでとは思いませんでした。」
廊下から聞き慣れた声が聞こえて来る。しかし入るには上位クラスの学生証が必要なため、簡単に入ることはできない。
「おーい!透!開けてくれー!」
「……………はいはい。…あれ、そこにいる男子は?」
「透ってあの御影 透くん、ですか?」
「……………そうだけど、なんで?」
「僕のクラスでも話題になってますよ。中等部から上がってきてとてつもなく強いプレーヤーがいるって。特に女子たちの間では憧れの的だそうで。」
「なんだよー、透って有名人なんだな。…モテる男は辛いねぇー…」
「……………翔、声のトーンが低くてちょっと怖かったんだけど…」
いかんいかん。嫉妬が声に出てしまった。
「虹渡、彼が新しいチームメイト?」
「まだ入るかは決めてないって!考えるって言ってた!」
「…よろしくお願いします。」
左手には本が握られている。本を読むのが好きなのか。知的なオーラが溢れ出ている。なんというか…同い年か疑いたくなるくらい大人びた雰囲気がある。
「Aクラス、特待生編入の八神 翔。よろしく!」
「……………Aクラス、中等部からの内部進学の御影 透だよ。よろしくね…」
「Iクラス、一般編入枠で編入してきた日下部 樹です。よろしくお願いします。」
目に見えて透が緊張している。これを解す方法は…
「じゃあ早速だけど、軽くダーツ投げてみようぜ!」
「いえ…僕は初心者ですから…」
「関係ないって!初心者の樹でも楽しめる面白いゲーム紹介するから!」
虹渡、ナイスだ。透がダーツをやればうまく話せるようになるのは俺で実践済み。
でもどんなゲームやるのかな…初心者でもなんとかできそうな種目って言ってもいろいろあるだろう。
パーティーゲームという、多人数で遊びやすいゲームもあるが、そのなかでもめぼ
「これこれ!LUCKY BALLOONってやつ!これ初心者でも楽しめるし、ダーツ始めた人にはいいと思うな!」
「僕まだ自分のダーツ持ってなくて…」
「そういうのも安心だよ!ハウスダーツって言って、誰でも投げていいようにおいてあるダーツがあるんだ!」
「そうなんですね!初心者にも安心です。」
「……………じゃあ準備しようか。」
ダーツのことになった途端透の用意が良くなった。
「……………これ、お菓子とドリンク。」
実家のバーで身についた接客業が遺憾無く発揮されている。流石だ。
樹は自分なりにダーツを投げて、虹渡から少しアドバイスをもらっている。
「うん!投げられそうな気がしてきました!」
「……………じゃあ早速ゲームスタートだね。」
今回やるゲーム『LUCKY BALLOON』は完全な運ゲー、初心者でも安心のゲームである。
プレイヤーは全員で1つの風船を膨らましていく。ダーツを投げて得た点数分だけ空気が入るルールになっていて、最終的に風船を割ったらアウト。スロー数は1本~3本まで状況によって自分で選択可能だが、UNLUCKYマークが出てきたら、3本全てスローしなければならない。
また、低い点数ばかり出していると、『CHICKEN』の烙印を押されてしまうので注意。
今回は5ゲーム行って1番風船を割った人が罰ゲームということになった。罰ゲームは各々で紙に書き、後々抽選で決める。
早速ゲームスタートだ。
『LUCKY BALLOON GAME ON !』
「……………順番はどうする?」
「じゃあまずボクからいくよ!その方がなんとなくゲームの感覚がわかるでしょ!」
虹渡がそう言ってくれたこともあり、まず虹渡、そして樹、俺、透という順番になった。
モニター画面には風船が写っている。そしてその風船と、得点表示の場所と管で繋がっている。多分ここは空気入れになるのだろう。こういったパーティーゲームはやったことがないので、透や虹渡との試合とはまた違った意味でワクワクしている。
虹渡がスローの体制に入る。
…バギュン『DOUBLE BULL』
…ピュン『SINGLE 2』
…ピュン『SINGLE 14』
得点とともに風船に空気が入る。ゲームスタート時は小さかった風船がかなり大きくなっている。もう早速やばいんじゃないだろうか。
「もう割れそうじゃないですか…?」
樹も同じ考えだったようだ。
…ピュン『SINGLE 4』
…ピュピュピュン『TRIPLE 19』
「…!」
樹が息を飲んだのが伝わってきた。初心者ならではのキャッチでBULLの50点より点数の高い57点を入れてしまったのだ。
キャッチ、というのは狙っているところと違うところに入ったダーツのことをいう。
…ピュン『SINGLE 5』
「危なかったですがなんとかなりました…」
2回投げてやめてもいいのだが樹は攻めた。かなり緊張したようだ。
「まだ1ROUNDしか投げてないじゃん!これからこれから!」
「……………NICE DARTS。」
初心者にしてはかなり攻めた方だ。そして何より思った以上にフォームの基礎がしっかりしている。まだ肘や体の軸がぶれるが、今後の練習ではかなり伸びそうなのではないか。
「このゲームは攻めても案外風船割れないよ!」
「そうなのか。じゃあ今回は見せようかな!」
俺はスローラインに立ってダーツを構える。
…パシューン『BULL』
『UNLUCKEY』
悪魔のマークが出てきてCHANGE BUTTONが押せなくなった。
ダーツのゲームでは、どのゲームにも共通して、プレーヤーが3本ダーツを投げるたびにCHANGE BUTTONを押す。それが押せないということは必然的に3本ダーツを投げないといけなくなったことを意味する。
モニターの風船は紫色になり、いつ割れてもおかしくないくらいに大きくなってきている。正直投げるのは怖い。正直なところ、2本適当に投げたらすぐCHANGEして透に割ってもらおうと思っていたのだが。
「まあ攻めても大丈夫って言ってたし。投げるかBULL。」
息を整えて…投げる。
…バギュン『DOUBLE BULL』
…投げる…!!?
…パシューン『BULL』
『BOOM !!』
「やったー!引っ掛かったー!!」
信じた俺がバカだった。
いかがでしたでしょうか。樹はチーム加入するのでしょうか…??気になりますね。ですが樹がいつか無双する瞬間が見られるかも…?乞うご期待です。
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