静謐 Ⅲ
策士虹渡にまんまと引っ掛かった翔。続きです。
俺は虹渡に騙されて、1ゲーム分の負けを背負った。
「……………こんなに早くは割れないはずだけど…運がなかったね。」
「ホッとした表情でそれをいうなよ。」
俺が攻め方を間違っていなければ恐らく透が割っていただろう。
そうして俺たちはゲームを続けた。
その後は透が1ゲーム、虹渡が2ゲーム負けて最終戦。樹が何だかんだのらりくらりと破裂を免れていた。
透と虹渡は経験者にも関わらず、俺と樹のいわゆる「ビギナーズラック」というものでとことん負けを食らっていた。
「むーーー!次負けた人が罰ゲーム!!」
虹渡が涙目でそう言った。誰が負けても一番負け数が多くなる虹渡は実質罰ゲームが決定したことになる。
「初めと言っていたことが違いますが…それも良いのではないですか?かなり緊張感がありますし。」
「……………仕方ないなあもう…」
やれやれと言った表情を浮かべつつ透はため息をつく。これは大体予想できた。しかし樹がそんなことをいうとは意外だった。だいぶ馴染んできたらしい。楽しんでいるようで何より。このゲームを提案した功労賞という意味でもこの提案は受ける意味がある。
「じゃあ次負けた人にするか!」
「負けないぞー!」
「やりますか。」
「……………次負けても泣かないでよ?」
透、それは酷な要求ではないだろうか。
『LCUKY BALLOON GAME ON !』
さっき負けた虹渡が1番初めにスローする。
髪を見る限りシュンとしている。調子が悪そうだ。
…ピュン『SINGLE 4』
…ピュン『SINGLE 15』
『PLAYER CHANGE』
だいぶビビっているようだ。それも無理はない。CHICKENになった時の罰ゲームがない以上、点数が低くても割らないこと第一になるのは無理もない。
「じゃあ今度は私ですね。」
さっきの提案まではそもそも罰ゲームを受ける確率が0だった樹がだいぶ楽しそうだ。罰ゲームなのだから嫌がりそうなものだが。
…パシューン『BULL』
…ピュピュピュン『TRIPLE 13』
『PLAYER CHANGE』
『これでもう回ってこないでしょう。」
こちらも2本で終了。キャッチがTRIPLE 13でこれ以上打たなくても良いと判断したのだろう。今度は俺、透と行くが、風船は今までよりも空気の溜まり方が遅い。まだ風船が黄色い。割れそうな段階まではいかない。
…ピュピュピュン『TRIPLE 20』
…バギュン『DOUBLE BULL』
…ピュピュピュン『TRIPLE 7』
『LOW TON』
TRIPLE 19を狙って外してしまった。まあそこそこ空気は入った。ここからはなすりつけ合いになる。風も紫色になり、爆発まではあとわずか。
「……………これなら攻めてもいいみたいだね。」
次は透の番。このゲームをやったことがある分、その経験値でどのくらい攻めていいのかわかるのだろう。
…パシューン『BULL』
『UNLUCKY』
「「「うぉぉ!?」」」
「……………完全にやらかした…」
あと2本投げるのは正直厳しそうだ。しかし透の技術があれば簡単に2点で抑えるだろう。
…ピュピュピュン『TRIPLE 1』
「……………おっと。」
とりあえずここで深呼吸。
…ピュン『SINGLE 1』
うん。安定感抜群。フォームが本当に綺麗だ。
「いつも不利なところで回ってくるぅぅ…!」
虹渡は泣き出しそうだ。
そう。今回、風船を割った人から始めるだけで特に投げる順番は変えていない。そのため透の後ろに回った虹渡は結果的に不利になる。それもあるからこそ、最終戦で罰ゲームをする人を決めるという提案を受け入れたのだが…
虹渡の番。もう爆発は必至だ。
…ピュピュピュン『TRIPLE 20』
『BOOM !!』
「あ゛!!!!」
「虹渡どんまい!」
「そんなきらきらした笑顔で言われたら余計悲しくなるよ!」
「まあまあ、結局は虹渡くんがやることにはなっていたんですし…諦めてくじを引いてください!」
「……………この中から引いてね。」
袋の中に罰ゲームを書いた紙が入っている。それにしてもなんだろう、この透と樹のテンポの良さ。
「わかったよ…」
渋々くじを引く虹渡。
「ん…えっと、『僕の家の手伝い』って透のやつ?」
「……………じゃあ今日も僕の家に行く感じかな?手伝いって言ってもおそらく忙しくなる時間帯の食器洗いとかだと思うけど。」
「えええぇ樹とダーツ投げたいよぉ!」
「……………罰ゲームだから。やり切ったらね。」
「うぅ…」
虹渡がシュンとしている。相変わらず涙目だ。
そういえば、と樹が口を開く。
「透くんの実家って何をなさっているんですか?」
「……………ダーツバー兼カフェを父親が経営しているよ。」
「そうなんですか!それは上手いのも納得ですね…身近にダーツがいつでも出来る環境があるのは羨ましいです!」
「……………ダーツを始めた人からすると環境を整えるのが難しいと思うから…これからもし練習したくなったら僕の家に投げに来る?」
「いいんですか!?」
ダーツができる環境があるのとないのとでは練習量が変わってくる。つまり実力をつけるのに大きく寄与することになる。樹自身としては恐れ多いと思うこともあるだろうが、正直友達が来るたびにマスターが泣きながら出迎えてくれることだろう。
「大丈夫だよ!マスターいい人だしタダで投げさせてくれるはずだよ!」
「俺も透が友達連れてきたって言うだけで大喜びすると思うぞ。」
「そうですか…?」
知っているからこそ自信を持って言えるのだ。
いかがでしたでしょうか。樹もかなり馴染んできているようですが、今後どうなるのでしょうか。
番外編として今回カットしたLUCKY BALLOONの試合をまた今後どこかであげようと思いますので、どうぞお楽しみに。
ブックマークや評価、そして感想やレビューなどもよろしくお願いします。




