最終日 ミックスオーレ
「お、おと、乙男君……?」
「何? 白井さん?」
朝。
いつも通り登校しようと家を出て、正門をくぐった時に呼び止められた。
オレを呼んだのは――――乙男君。
そこまで良かった。
しかし、何かこう……変だ。
いつも通りの乙男君のはずだが、何か雰囲気が違う。
「乙男君、何か変わっ――――」
「一護」
「……え、お?」
「一護。
乙男君じゃなく、一護って呼んで?」
そう、これだ!!!!
なんか、乙男君が乙男君らしくない……いや、男らしいほうが良いんだけど、昨日の今日で変わりすぎじゃね!!?
「いや、ちょ、乙男く」
「一護」
「…………い、一護、お前変わりすぎだぞ?」
「白井さん……ううん、里恵ちゃんが《もっと胸を張れ》って言ったから、彼氏らしく堂々としようと思ったんだ」
昨日のオレ、前言撤回しろぉおおおおお!!!!!
胸を張りすぎた!!
いや、これが本来の乙男君なのかもしれないが……ギャップ以前の問題だぞ!?
あれだ、外見は草食だが中身は肉食っつーやつ!!
何て言うんだっけな……たしか、ロールキャベツだっけ?
「これからは里恵ちゃんの彼氏に相応しい振る舞いを勉強するから、応援しててね?」
「お、おう……」
「そうだ、この前の約束通り……今日はお弁当作ってきたよ」
鞄からお弁当箱を取り出し、オレに見せてきた。
素直にお礼を言って、受け取る。
「じゃあ、里恵ちゃん。
今日からは里恵ちゃんも一緒に頑張ろうね」
「おう、いつも通り全力でお前と特訓を――――」
「ううん、里恵ちゃんはボクと別の事をするんだよ?」
「え、はあ?」
別? 別って何だ?
首を傾げていると、乙男君はにっこりと私に微笑んだ。
やべえ、嫌な予感しかしない。
「里恵ちゃんは、里恵ちゃんが感じている感情を知りたいんだよね?」
「おう、そうだぞ」
「なら――――
里恵ちゃんは女の子らしくならきゃ、駄目じゃないかな?」
「………えええええええっ!!??」
オ、オレが女の子らしく!!?
あの、王子様だとか言われているオレが、本来の女の子らしく振る舞えってことか!!?
いや、無理だ無理!!!!
「流石にオレは無理だぞ、おと……一護!!」
「無理じゃないって、ボクで証明できたよね?」
「うぐっ……だ、だけどよ……」
「きっと里恵ちゃんが分からないのは、男らしくなりすぎちゃったせいだよ。
だから女の子らしくなれば、きっと分かるはずだから」
乙男君が微笑んだまま、「ねっ?」と言った。
いやいやいや、マジか……マジなのか、オレ!!!!
「じゃあ、またお昼休みに会おうね。
ボクが教室に迎えに行くから」
「ちょ、まだ良いって言ってないからな!!!!」
「《一緒に》、頑張ろうね?」
――――その後、オレと一護はそれぞれの新たな課題をやり遂げる事になった。
一護はオレの彼氏に相応しくなれるよう、より男らしさを磨く事。
そして、オレは……女の子らしくなる事。
ぶっちゃけ不可能かもしれないが、オレは乙男君が短期間で変わった事を証明してしまった。
だから、やらなきゃいけない。
見てろよ、一護!!!!
お前より先に、オレが女の子らしくなってやるからな!!
覚悟しろっ!!!!
【おしまい】
以上、ミックスオーレはおしまいです。
果たして白井ちゃんは女の子らしくなったのか……そして、今後も二人は付き合うのか。
幸せでハッピーエンドも良し、はたまたバッドエンドも良し。
二人の末路は、皆様がご自由に想像してください。
それでは、最後までこの中編に付き合ってくださりありがとうございました!!!!