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013 空に舞う

 模擬戦の開始から30分ほどが過ぎようとしていた。 序盤の小手調べから中盤戦に差し掛かり、お互いに焦れが出てくるタイミングで動きが出る。


「βチーム、1人ロスト。戸塚が撤退だ! 他2名の損害は無し」


 熱田さんからの報告……。 武上隊長と熱田さんのチームはそれぞれ南北に分かれ、雑木林地帯を進んでいる。 こちらはハウンドを配置していないので索敵がしづらい場所のため、予期せぬエンカウントに遭ったのだろう……。


「そのかわり、敵2名とハウンド1機撃破だ」


 追加の報告を聞き、思案する。 撃破は悪くないが、1名離脱している状態でのスナイパー攻略は不安だな……。


「暁彦、指示を頼む。このまま予定通り続行か?」


 2名で高台のスナイパー排除は苦戦するだろう。高台に登る途中で標的にされる。 1人地上に援護を置きながら攻略したかったが、仕方ないな……。


「武上隊長に先行してもらいましょう。スナイパーを排除した後に、高台から援護射撃を入れてもらいます」


「……まあ、その方が無難だな。了解した。武上隊長が制圧したら合図をくれ」


「わかりました。武上隊長、申し訳ありませんが、スナイパー排除後、βチームの援護をお願いします」


「了解だ。αチーム、先行する!」


 作戦内容の変更。まあ、許容範囲だろう。 ドローンの索敵情報からは、南側から敵2名のシンボルが雑木林の中を進んでいる。 防衛の人員も防衛ドローンも途中にいないので、素通りされるとこちらが先に襲撃されるな……。


「壱与、威嚇射撃を行う。いいか?」


「分かりました。……射線が通るかはわかりませんが、対象2名捉えました」


 スナイパーライフルを構え直し、方角を合わせる。 スコープは一応反応してるな……。


 カンッ!


 バサバサと木々を揺らし、弾が弾かれる。 模擬弾は特殊なシリコン弾を使用しているので、実弾のような貫通力は見込めない。 だが、狙われているというプレッシャーだけでも敵の足を鈍らせる事は出来る。


「時間稼ぎにしかならないけどな……」


 僕の独り言はそのまま宙に霧散する……。


「壱臣! 目標地点に到着! 突入するぞ!」


 少ししてαチームが高台の地点に到着した。 ゴーグルのモニターを武上隊長のカメラに合わせると、盾役を先行させて敵の射撃を防ぎながら階段を登っていくところだ。


 盾役の後ろに武上隊長、そして高台の下から1人援護射撃を行い、スナイパーを牽制する。 バリケードから出られず、射線を確保できずにいるスナイパーへと少しずつ距離を詰めていく。


 そして、高台に登頂する。 接近してしまえばスナイパーの強みも消失し、武上隊長の射撃が容赦なく火を吹く。


「αチーム、高台確保! βチームの援護につく!」


「了解しました! βチーム、αチームが援護します。突入して下さい!」


「了解した。βチーム突入する!」


 αチームの2人で反対の高台に援護射撃を行う。相手のスナイパーはまたもやバリケードから身を出せず、熱田さんの階段を駆け上がる音を聞くのみとなった。


 予定通りに高台の制圧が完了した。 敵アタッカーの距離も約200メートルほどへと迫ってきたところで、終盤のクライマックスへと一気に畳み掛ける。


「壱与、出番だ! ……暴れ過ぎるなよ」


 僕は壱与に向き直り、予測不能なこのヒューマノイドに不安げな言葉を投げかける。


「マスター、戦場に情は無用ですよ!」


 会話がいまいち噛み合わないが仕方ない……。 グッと飲み込み、花里さんに通信を送る。


「プランA発動だ。残りのドローンをテイクオフしてくれ」


 最後の総仕上げ……ヒューマノイド運用の戦術としては悪くないだろう。


「了解です。3機発進します」


 ビークルからの通信の合図と共にドローンが3機、空中に舞っていく。 一人のヒューマノイドを連れながら……。



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