83 弟子たちとの会合その3
前回のおはなし:ディオンから色々聞いた。
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「ルーベウムに名前を付けたら急に言葉が流暢になったんだけど」
「ああ、名付けの効果ですね」
ディオンに言われて俺も思い至った。
「……そういえば、そう言うのもあったね」
考えもしなかったが、言われてみたらありうることかもしれない。
「名付けの効果ってなんだ? ディオン、師匠、教えておくれよ」
興味津々なレジーナが尋ねてくる。
知らないことを素直に聞ける性格は百年経っても変わっていないようだ。
とても素晴らしい。
「……そうですね。一部の竜族に名前を付けたときに発生する効果なのですが……」
「ふむふむ」
ディオンは少し困ったようにこっちを見る。
レジーナにもわかるように、簡単に説明するのが難しいのだろう。
「簡単に言うと、魂的なものがつながる感じなんだよ」
「ほう? 師匠。つまりどういうことなの?」
「竜って言うのは、地上の生物の中で、神獣の次に神に近いだろう?」
「それは、まあそうですね」
「神に近いってのは、この世界と違う次元に存在自体が近いということなんだけど……」
「ふむ?」
レジーナはよくわかっていなさそうだ。
後ろから俺を抱っこしたまま、俺の頭をワシワシし始めた。
俺は正面にいるゼノビアをちらりと見る。ゼノビアもよくわかっていなさそうだ。
「レジーナにもわかるように説明すると……。竜にとっては魂ってのが大事ってことだ」
ミルトが説明を引き継いでくれた。
「魂は神の世界に通じやすい。寵愛値測定装置も魂のあれやこれやを使っている」
「ほう? それで」
「名前を付けることで、魂同士が神の世界を通じてリンクするってことだ」
「なるほど? で効果は?」
「魔力の融通が多少できるようになる」
「それはすごいね!」
興奮気味のレジーナに、ディオンが補足する。
「ですが、融通できる魔力量は、極々微量です。一般的にはですが」
「つまり、普通は言葉が流暢になったりしないってことだよね?」
「そのとおりだよ」
だからこそ、俺も名付けの効果に思い至らなかったのだ。
「さすが、師匠だね!」
俺の頭をわしわしするレジーナの手の速さが上がった。
「この場合は、ルーベウムが凄いんだと思う」
「私は師匠とルーベウム、両方凄いのだと思いますよ」
「そうですね、ディオンの言うとおりですよ」
ミルトもそんなことを言う。
「凄いかどうかは置いといて、神の眷族同士だから特殊なのかもしれないね」
「そうですね。それはあるかもしれません。魔力の融通以外にも色々できるかも知れませんね」
「何ができるか、訓練しながら調べた方がいいかも」
「私に協力できることがあれば、何でもおっしゃってください」
「ありがと」
その時、ディオンが「あっ」と声を出した。
「そうそう。忘れないうちに師匠にこれをお渡ししなくては」
「ん? なんだい?」
ディオンは、魔法の鞄の中から白い物を二つ取り出して机の上に置く。
それぞれ直径〇・三メートルほどの半球型だった。
俺はそれを見て、すぐに気付いた。
「それは……、ルーベウムが入っていた卵の殻?」
「はい。ルーベウムの隣にあったものを、私が回収したものです」
「竜の卵にしては、極めて小さいな……」
直径〇・三メートルなら、鳥の卵でもありうる大きさだ。
前世の俺が見た竜の卵は、もっと大きかった。
最も小さな竜の卵でも、直径〇・八メートルぐらい。
大きいものになれば、直径三メートルを超すものすらあった。
「小さいけど、ルーベウムの大きさを考えれば当然か」
「はい。強力な竜ほど体も大きい傾向はありますが、ルーベウムは特別ですから」
ルーベウムは大きくなることも可能だが、本来の大きさは小さい。
俺のひざの上で丸まっている現状の姿が、本来の姿である。
ルーベウムは竜神の眷族、神獣の竜だから、通常の枠で考えることは出来ない。
例外と考えた方がいいだろう。
「それにしても竜人族の卵ぐらいの大きさだね。ディオンの卵を思い出すよ」
「はい。私の殻と見た目と大きさは似ている気がします」
竜人族には、自分の卵の殻を保管する習慣があるのだ。
全員が全員保管するわけではないが、保管する者の方が多いと思う。
胎生の人族の中に、自分のへその緒を保管する者がいるのと同じようなものだろう。
かなり昔、俺はディオンが生まれた際の卵の殻を、ディオンに渡している。
百年は経っているし、さすがに今も持っているとは思わないが。
「ルーベウム、……これがルーベウムの殻だよ」
「……。きゅる」
先ほどから寝かしつけるように俺が撫でているからか、ルーベウムはもう完全におねむだ。
今朝、俺はシロとルーベウムに起こされた。
つまり俺よりもルーベウムは早起きだったということだ。
「ディオン。ルーベウムは眠っているみたいだから、後で渡しておくね」
「はい、お願いします」
とはいえ、ルーベウムは鞄などを持っていない。
卵殻を渡したとしても、結局俺が保管することになりそうではある。
俺は魔法の鞄に入れるために、卵殻に手を伸ばした。
すると、
「――おお?」
俺の手が卵殻に触れた瞬間、卵殻が輝き始めた。





