77 合流
前話のおはなし:ルーベウムが懐いた。
ついに「最強の魔導士。ひざに矢をうけて~」の4巻とコミカライズ1巻が発売になりました!
「ここは俺に任せて先に行けと~」の3巻が8月に発売です!
俺はお菓子を食べていたルーベウムの頭を撫でると、ゆっくりと立ち上がる。
「さてと……。やっぱり石の上に座ると冷えるね」
俺のお尻は冷え切っていた。
俺は相変わらず全裸だ。だから石で造られた床に座るとひんやりする。
「全裸だと風邪ひくかもしれないな。なにか無かったかな……」
それに転移魔法陣の向こうに、ロゼッタたちがいるかもしれない。
全裸でみんなと会うのは、少し恥ずかしい。
俺は魔法の鞄に入っている服の替わりになりそうなものを探す。
服や鎧などは入っていない。今後は気を付けよう。
「このぐらいしかないな……」
俺は魔法の鞄からタオルを取り出す。
タオルは色々と便利なので、一応鞄の中に入れておいたのだ。
「これでよしっと」
俺は腰にタオルを巻きつけた。非常事態なのでこれで充分だと言える。
お菓子を一生懸命食べていたルーベウムは俺の腰に巻かれたタオルを見て尻尾を振る。
「きゅる!」
そして、タオルを引っ張ろうとする。ひらひらして面白そうだと思ったのだろう。
「ルーベウム。引っ張ったらだめ」
「……わかった」
ルーベウムはとても聞き分けの良いドラゴンのようだ。
「じゃあ、ルーベウム。転移魔法陣に入るよ」
「きゅる」
ルーベウムが俺の足に、ひしっと抱き着く。
可愛いが、少し歩きにくいので抱きあげる。サリアに比べたらだいぶ軽い。
そして、俺は転移魔法陣の上に乗った。
ぐにゃりと視界がゆがんで、数瞬後、別の場所に立っていた。
そこは広い部屋だった。鈍い光を放つ照明用の魔道具がそこら中においてある。
真冬の分厚い雪雲に空が覆われた日の昼間程度には明るい。
そして、ロゼッタ、ティーナ、アルティが揃っている。
三人とも見るからに疲労困憊していた。なかなか大変な試練だったようだ。
加えてレジーナ、ゼノビア、そしてディオン、フルフルにシロもいる。
どうやら、俺が一番遅かったようだ。
レジーナは相変わらずフルフェイスの兜に全身鎧だ。武器は自身より大きいこん棒である。
「ぴぃぴぃ!」
レジーナの頭の上に乗っているフルフルが俺を見て嬉しそうに鳴く。
「めぇ!」
ディオンの頭の上に乗っているシロも嬉しそうに鳴いている。
そして、ゼノビアが俺を見ながら言う。
「ウィル。やっと来たな。……して、その恰好は?」
「服はこの子に全部燃やされちゃいました」
俺は抱きかかえているルーベウムを指さす。
「……ふむ?」
ゼノビアは少し怪訝そうな表情をして、レジーナを見る。
レジーナは首をかしげると、ディオンに視線を向ける。
フルフェイスの兜のせいで、レジーナの表情はわからない。
だが、仕草でディオンに「どういうこと?」と聞いているようだ。
ディオンは俺を見てほほ笑む。
「無事に仲良くなれたようで何よりですね」
「はい。おかげさまで」
どうやら、ルーベウムを仕込んだのはディオンの独断らしい。
ディオンはゆっくりと近づくと、俺の身体にちょうどいい大きさのローブをかけてくれる。
「ありがとうございます」
「服はなくなるかもとは思っていましたから」
ディオンは俺とルーベウムを見てにこりと笑う。
シロは、ディオンの頭の上からぴょんと俺の肩に飛び乗った。
そして「めえめえ」鳴きながら、俺の髪の毛をハムハム噛みはじめる。
フルフルも、いつの間にかに俺の足元までやってきてプルプルしていた。
俺はひざをついて順番に神獣たちを優しく撫でてやった。
「よしそれでは学院に戻ろう」
ゼノビアがそう言って,歩き出す。
全員大人しくゼノビアの後ろをついていく。
ロゼッタたちは俺に何か聞きたそうだ。
全裸に近い格好で、小さな竜を抱えて来たのだ。事情を聞きたい気持ちはわかる。
だが、ゼノビアたちがいるので、大人しくしているのだろう。
少し歩いて部屋を出ると、そこはもう外だった。
俺たちが入ったダンジョンの入り口が遠くに見えた。
恐らく徒歩で十分ぐらいの距離だろう。
部屋を出たすぐ外には、俺たちが乗って来たワイバーンが待ってくれていた。
加えて、もう一匹ワイバーンがいる。恐らくディオンが乗って来たワイバーンだろう。
「みな、乗るがよい」
来た時と同じように、ゼノビアの後ろにロゼッタとティーナが乗る。
そしてレジーナとディオンはそれぞれ自分のワイバーンに乗った。
俺もワイバーンに乗ろうと近づくと、
「きゅーん」
ワイバーンが怯えて鳴いて、プルプルする。
ワイバーンは俺の抱えるルーベウムをじっと見ていた。怖いのだろう。
「ワイバーン。怖くないよー」
「き、きゅーん」
「キュルキュル」
ルーベウムも静かに鳴いて、ワイバーンの顔を舐めた。それでワイバーンは落ち着いた。
ワイバーンにとって顔を舐められるという行為が何か特別な意味があるのかもしれない。
そういえば、俺も名付けた後、ルーベウムに顔を舐められた。
あとで、ルーベウムに聞いてみよう。
「落ち着いてくれてありがとう」
俺はワイバーンの頭を優しく撫でた。
ルーベウムを抱えたまま、シロとフルフルと一緒に背に乗る。
アルティもすぐに乗ってくる。
そして俺たちは学院に向けて飛び立った。




