76 ルーベウムとおはなし
前回のおはなし:竜と仲良くなった。
ついに「最強の魔導士。ひざに矢をうけて~」の4巻とコミカライズ1巻が発売になりました!
「ここは俺に任せて先に行けと~」の3巻が8月に発売です!
「さてと……」
ルーベウムの隣に座って休んでいたおかげで、だいぶ体力も回復した。
俺はゆっくりと立ち上がる。
ルーベウムは俺の方を見て首をかしげていた。
「俺は先に進むが、ルーベウムはどうする?」
「ついてく。いい?」
「いいよ」
ルーベウムは、キュルキュル鳴きながら、嬉しそうに尻尾をびゅんびゅんと振った。
俺は転移魔法陣があった方の逆側、ルーベウムがいた方の壁に向かって歩いていく。
「扉はあるけど転移魔法陣があるわけではないんだね。ルーベウムはどうやってここに入ったんだ?」
「きゅる?」
ルーベウムは首をかしげる。
扉の大きさは高さ二m、幅一メートル弱だ。とてもじゃないが、ルーベウムが通れる大きさではない。
俺は扉を調べてから開く。扉の向こうは五メートル四方の比較的小さな部屋だった。
そして、転移魔法陣が設置されている。恐らく帰還用の転移魔法陣だろう。
「その体の大きさだと、この扉を通れないんじゃない?」
まさかと思うが、ルーベウムは俺の通って来た転移魔法陣を使ったのだろうか。
そうだったのならば、少し困る。
今、俺の通って来た転移魔法陣は使用不可になっているからだ。
「ルーベウムとおれる」
「いや、無理だろう」
そういうと、ルーベウムは慌て始めた。
きゅるきゅるいいながら、羽をバタバタさせる。
置いて行かれると思ったのかもしれない。
だから安心させるために頭を撫でながら優しく言う。
「大丈夫。置いて行かないから。……壁をぶち抜くしかないかな?」
「ルーベウム小さくなる」
「なれるの?」
「きゅる」
ルーベウムはみるみるうちに小さくなる。およそ体長〇・五メートルほどだ。
「シロと同じぐらいの大きさだね」
「きゅるるる」
ルーベウムは楽しそうに鳴くと、俺の肩に乗ってくる。
「小さくなるのは大変じゃない?」
「もともとこっち。怖いときはおおきくなる」
「なるほど。そういうものなんだな」
シロも戦闘時に大きくなったりしていた。それと同じかもしれない。
暗闇の中に一頭で残されたのが、怖くて戦闘モードで待機していたのかもしれない。
甘えてくる理由もわからなくもない。
そう考えると可哀そうだ。たくさん甘えさせてあげよう。
「おや?」
転移魔法陣に気を取られていたが、その奥に立札があった。
『こっちに来てから少なくとも三十分経過後に入ってください。レジーナ』
「なるほど?」
ここで俺が時間をつぶすことは、きっとロゼッタの試練に必要なことなのだ。
この魔法陣を通った先で、ロゼッタが試練を受けているのかもしれない。
試練マスターであるレジーナは一生懸命難度を調整したはずだ。
俺が加勢すると、折角の難度調整が台無しになってしまうのだろう。
ならば、しっかり時間をつぶすべきだ。
「ルーベウム。俺がこっち側に来てから何分経った?」
「……わかんない。十分ぐらい?」
ルーベウムは適当なことを言う。
「少なくとも十分以上は経っているとは思うけど」
「きゅる。楽しかったからあっという間だった」
「そっか」
暗闇の中で一頭で寂しく待つ時間は長く感じられたに違いない。
だから、俺が登場してからは相対的に短く感じているのだ。
俺は客観的に、ここに来てからの時間を計算する。
転移魔法陣を通ってから、ルーベウムと戦って休憩しながらお話しした。
三十分経っていてもおかしくはない。
「でも、もう少し待ってからにしようか。ルーベウムはお菓子とか食べる?」
「たべる」
俺は転移魔法陣の横に座って、魔法の鞄からお菓子を取り出す。
そしてルーベウムと一緒にお菓子を食べた。
「ルーベウムはお菓子以外になに食べるの?」
「お肉」
「そっかー。竜は肉食寄りの雑食だもんね」
「うん」
ルーベウムも食生活は普通のドラゴンと変わらないようだ。
「やっぱり、ルーベウムは竜神の眷族なの?」
「けんぞく?」
ルーベウムには自覚はないようだ。それ自体はおかしくない。
ルンルンもフルフルもシロも、そして俺自身も神の眷族としての自覚はなかった。
「竜神と話したこととかある?」
「卵だったときに話したことある」
竜の卵殻は物理防御を担うだけでなく、魔法的な結界でもあるのだ。
恐らく竜神の眷族の卵殻の中は半分神の世界につながっているのだろう。
「どんなお話ししたの?」
「よく覚えてないけど……。うぃるのことを話してた……と思う」
「……そうなのか」
「うん」
俺が名乗ったときに反応したのはそのせいもあるのかもしれない。
「竜神に話を聞いていたなら、戦わなくてもよかったのに」
「偽物かもしれない」
騙りの可能性や、同名の可能性もある。
だから、本当にウィルか戦って確かめたらしい。
力を重視する竜族らしい考えだ。
「力の強い偽物の可能性は考えないの?」
「考えない!」
「どうして?」
「最初からウィルだとわかったから」
「さっき、偽物かもしれないって言わなかった?」
「…………ごめん」
もう一度改めて、聞いてみると最初から俺のことはわかったらしい。
それでも、どうしても戦いたくなって戦ったとのことだ。
竜族は仲良くなる前に戦うという儀式がどうしても必要なのかもしれない。
ルーベウムと話しているうちに、時間も潰せた。
「よっし。そろそろ、転移魔法陣の向こうに行こっか」
「きゅるるる!」
ルーベウムも嬉しそうに鳴いた。





