73 試練のダンジョン その7
前回のおはなし:ロゼッタの治療をして弓を作った。
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ロゼッタと、ティーナは完成した弓を見て、目を見開いた。
「え? そんなことが出来るの?」
「す、すごいですわ!」
そういえば、魔法による武器生成もアルティにしか見せてなかった
俺はロゼッタに弓を渡しながら言う。
「性能はいまいちかもしれないが、ないよりはいいと思う」
「ありがとう」
ロゼッタは弦をひいたりして、具合を確かめる。
「……これは凄いね。ものすごく使いやすいよ。壊れた弓よりずっといいよ!」
「それならよかった。でも、急ごしらえだから劣化が早いんだ」
恐らく、二か月で八割程度まで性能は落ちるだろう。
前回アルティに急ごしらえで剣を作ったときは1か月で八割程度だった。
確実に武器づくりの腕が上がっている。
そのことに気づけて、とても嬉しかった。
「ウィルは何でもできるんだね、すごいよ」
「褒めるな褒めるな。照れるだろう」
「いや、本当にすごいよ! 心底そう思う。この弓も凄くいい出来だし」
「そんなに気に入ってくれたのなら、今度ちゃんとしたのを作ろうか?」
「え? いいの? 悪いよ」
「いま魔力操作の訓練のために暇があれば武器製作をしているんだ。遠慮しなくていいよ」
「うん。すごい嬉しいよ!」
ロゼッタの尻尾が元気に揺れる。
本当に喜んでもらえているようだ。それは俺も嬉しい。
「あの、ウィルさま」
「ん? どうしたの?」
「お忙しいとは思うのですが……。可能であれば……わたくしにも武器を……」
ためらいがちにティーナにお願いされた。
最近、武器づくりが完全に趣味となっているので、製作依頼はすごく嬉しい。
「うん、わかった。杖でいいかな?」
「はい! 嬉しいですわ!」
弓と杖だけでなく、短剣なども作ってあげたら喜んでくれるかもしれない。
暇を見つけてやっておこう。
そして、治療と死骸の処理、それから弓製作を終えたので、俺たちは前進を再開する。
通路の幅が広いので隊列は二列だ。
ロゼッタ、アルティが前衛、ティーナと俺が後衛となって進む。
罠を探索しながらロゼッタが言う。
「大飛鼠はなかなかの強敵だったね」
「そうですね。手の届かない位置を飛ばれると非常に厄介です」
アルティもそんなことを言う。
会話をしてはいるが、ロゼッタにもアルティにも油断はなさそうだ。
その後、ロゼッタは二つほど罠を発見し解除した。
さらに十分ほど進むと、通路が突き当りになっていて扉があった。
「開けるのはあたしの役目だね」
ロゼッタは罠の有無などを調べ、慎重に扉を開ける。
扉の中は高さ五メートル、縦横二十メートルの正方形の部屋だった。
「これ、なんだろ? ウィルわかる?」
「魔法陣だね」
床には四つの魔法陣が描かれていた。
そして、魔法陣の横には木で作られた立札が立っている。
「『剣士用』『スカウト用』『ウィル用』『治癒術師用』って書いてあるね」
俺だけ名指しなのが少し気になる。
「俺たちそれぞれのために、レジーナさまが用意したんだと思うけど……」
魔法陣の種類も調べず触れるほど俺たちは愚かではない。
「ウィル、ティーナ。魔法陣の種類は調べられるかな?」
「うん。調べてみよう」
「あたくしも調べてみますわ」
俺はざっと見て、ティーナに尋ねる。
「何の魔法陣かわかる?」
「……非常に複雑で、わたくしには解析は難しいかもしれませんわ」
「複雑な魔法陣は要素に分割して解析するとわかることもあるよ」
ティーナは改めて調べるが、やはりわからないようだ。
時間には余裕がある。だから実際に解析してみせてみることにした。
「この部分が座標の特定で……」
「……なるほど。確かにそうですわね」
しばらく各要素を解析して見せた後、ティーナに言う。
「これと似たような魔法陣をどこかで見たことないかな?」
「…………もしかして、転移魔法陣でしょうか?」
「正解! さすがティーナだね」
「いえ、以前見たことがあっただけですわ」
ティーナは皇族なので転移魔法陣を使用したことぐらいあるのだろう。
「見たことがあったとしても、覚えていられるのは凄いよ」
俺が褒めると、ティーナは頬を赤くして照れていた。
ロゼッタが魔法陣をじっくりと観察し始める。
「これが、うわさに聞く転移魔法陣なんだね。初めて見るよ」
「珍しいものだからな。利用料も高いし」
転移魔法陣は基本的に国家の管理下にある。庶民には縁遠いものだ。
それこそ皇族や高級官僚、大貴族でもないと使用する機会はないだろう。
「これはレジーナさまの依頼で、ミルトさまがお作りになったんだと思う」
「……あたしの試練のために、すごいものを作ってくれたんだね」
レジーナが中心となっているとはいえ、実質的に賢人会議四人がかりの試練と言える。
「立札を無視して選んでもいいけど……、レジーナさまの意思に従った方がいいかもね」
「そうだね。みんなもそれでいいかな?」
「もちろんですわ」
「問題ないです」
全員、立札に対応した転移魔法陣の前に立つ。
「これからは一人用試練ってことだと思う。みんな気を付けよう」
俺が皆に向けて言うと、
「うん、ウィルも気を付けて」
「がんばりますわ!」
「あとで会いましょう」
それぞれ、元気に返事をしてくれた。
そして俺たちは転移魔法陣の上に乗った。





