69 試練のダンジョン その3
前話のおはなし:敵に遭遇した・
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ティーナが少し慌てた様子になった。
杖に灯した明かりで周囲を探るように照らす。だが敵の姿は見えない。
「敵はどこにいるのです?」
「気配はするけど見えないよ!」
アルティの剣にも魔法灯の魔法がかかっている。
だが、ティーナと違って、アルティは探るために剣を振り回したりしない。
「ティーナ。闇雲に探ってもあまり意味はないです」
「は、はい。わかったわ」
「灯りを増やすか、増やせないなら近づいてきたところを倒すしかないです」
「ウィル! 周囲を照らす魔法は使えるかい!? あるなら使って!」
「了解。任せておけ」
試練だから、なるべく手出ししないようにしようと心掛けてはいる。
それがレジーナの意思だろうと思うからだ。
俺が主導し、フルで能力を発揮することを前提にするならば、この試練はぬるすぎるのだ。
だが、頼まれたら助けるのがパーティーメンバーの役割だ。
そして、それがレジーナの意思でもある。
もし、俺に全く手出ししてほしくないなら同行させないはずだからだ。
「魔法照明弾!」
あえて使った魔法の名前を大きな声で言う。
魔法の種類と効果を知ることは、ロゼッタにとってもプラスになるに違いないからだ。
魔法照明弾は、明るい魔力弾のようなもの。
シュルシュルという音ともに少し飛ぶと、天井付近でボンという音とともに明るく光る。
光の強さと効果持続時間はつぎ込んだ魔力依存だ。
俺はかなり魔力を込めたので、周囲は昼間のように明るくなった。
「見えた! でもあれなに? でかいね!」
「あれは大飛鼠です。全部で四匹ですね」
アルティがロゼッタの問いに答える。
大飛鼠は四枚の翼を持ち、鋭い牙と爪を持つ。
高速かつ俊敏に飛びまわり、簡単な魔法すら使う厄介な相手だ。
体長は二メートル、翼を広げた長さは四メートルもある。
「これが大飛鼠……。初めて見たよ」
「わたくしも初めて見ましたわ。たしか不可視の攻撃が脅威と聞きましたけど……」
「そうです。最も危険な攻撃は口から出す不可視の魔法攻撃です」
大飛鼠の魔法攻撃を食らうと強烈な目眩に襲われ、平衡感覚を失わされる。
「まれに魔力弾を使ってくる個体もいるから気をつけてくれ!」
「わかった!」
俺もアドバイスをしておく。
この大飛鼠はレジーナの仕込みに違いない。
アルティの剣が届かない魔物を用意したのだろう。
つまり、レジーナはロゼッタが中心となって大飛鼠を倒して欲しいのだ。
「襲ってこないね? ウィル。大飛鼠は大人しい魔物なの?」
「いや好戦的な魔物だ。だが警戒心が強い。今は隙を窺っているだけだろう」
「そうなんだね」
大飛鼠は、こちらの様子をうかがいながら天井近くを旋回している。
隙をみせれば一斉に襲い掛かってくるだろう。
「それにしても天井が高いですわね」
「少なくとも、ここは恐らく古代の遺跡部分だろうな」
これまで歩いていたところは竜人族が作り加工したダンジョンかもしれない。
だが、ここは恐らく竜族の遺跡だ。
かつての竜人族が竜族の遺跡につながる通路を掘ったに違いない。
「先制攻撃すべきだね」
「そうだな」
「ウィル。魔法照明弾ってどのくらいの時間持つの?」
「今は効果時間については気にしなくていい」
一般的な魔法照明弾の効果時間は十秒前後だ。
いま天井付近で輝く魔法照明弾は、俺が解除しない限り三十分は持つだろう。
「俺は魔法照明弾の明るさを維持する! ロゼッタは自分のタイミングで攻撃してくれ」
「任せて! アルティは急降下してきたときの迎撃をお願い!」
「わかりました」
「ティーナは魔法で援護しておくれ!」
「わかりましたわ!」
ティーナの返事と同時に、ロゼッタは矢を弦につがえた。
そして、一匹に狙いを定め矢を放つ。
高速で飛び回る大飛鼠の胴体に見事に命中した。
だが、落ちてこない。矢が貫通しながらも飛び続ける。
「「「KIIIIIKIIIIIIIKIIIIII」」」
四匹が一斉に鳴きだした。
「大飛鼠は耐久が高いんです」
「そうなんだね!」
アルティの声をうけて、ロゼッタは冷静に再び矢をつがえる。
そして、矢を連続で三本放った。すべてが命中。
最初に放った矢と合わせて、合計四本の矢が体に刺さった大飛鼠が落ちて来る。
高速飛行する大飛鼠相手に矢を外さないのは見事というしかない。
「ロゼッタ見事」
「まだ、一匹倒しただけだよ!」
俺は褒めたが、ロゼッタは油断せずに、すぐに矢をつがえる。
「魔法行きますわ!」
そう言って、ティーナが火球を三匹目掛けて同時に撃ち込む。
二つ外れたが、一匹には当たる。
「GIIIIGIIII!!」
大飛鼠が悲鳴を上げて落下すると同時に焦げくさい臭いが漂ってくる。
「この調子だよ!」
そう元気にロゼッタが言ったと同時に、
「「「「KIIIIIIIIIIIII!!」」」」
天井付近を旋回している大飛鼠二匹が同時に鳴いた。
同時に、俺は目眩に襲われる。
そして、ロゼッタとティーナは片ひざを地面についた。




