65 試練の内容
前回のおはなし:レジーナからダンジョンアタックの指示が出た。
ついに「最強の魔導士。ひざに矢をうけて~」の4巻とコミカライズ1巻が発売になりました!
どうか、よろしくお願いします。
「ここは俺に任せて先に行けと~」の2巻も発売中です!
ロゼッタがそれを聞いて驚く。
「え? あたし一人でやらなくてもよいのでしょうか?」
ロゼッタの弟子入りの可否を判断する試練だ。
だから、ロゼッタは一人でやるものと思ったのだろう。
「そなたはスカウトだろう?」
「はい」
「スカウトはパーティーの中でこそ、生きる職だろう?」
「それはそうですが……」
「うむ。アルティ。ティーナ。そなたたちの師匠からも了承を取ってある。参加してほしい」
師匠の了承があるのならば、それは指導の一環だ。
弟子としては参加するしかない。
そうでなくとも、アルティとティーナは協力したに違いない。
「かしこまりました。全力を尽くします!」
ティーナはやる気満々といった感じで答える。
「はい。お任せください」
アルティも静かだが、その目は燃えている。
それを見てアルティの師匠であるゼノビアもうんうんと頷いていた。
レジーナは俺の方に来る。
そしてあろうことか、顔を近づけてきた。
すると、当然「しゅこぉ」という音がはっきりと聞こえるようになる。
「ウィルはまだミルトの弟子ではないが……。ミルトも賛成していた。参加するとよい」
「……わ、わかりました」
笑いそうになるのをこらえて何とか答えた。
「おや? ウィルは気が進まないのか?」
「いえそんなことは」
「ほんとうかぁ~」
「ぷしゅっ」
つい噴き出してしまう。
どうやらレジーナは俺が笑いそうになっていることに気づいている。
笑わせようとしているのが明らかだ。
「どうしたぁ? ウィル。体調でも悪いのかぁ?」
そう言いながら、体温を測ろうとするかのように、レジーナは俺の額に、自分の額を付けた。
フルフェイスなので、ひんやりする。兜を付けても体温が測れるわけがない。
レジーナは、俺を笑わせるために、あえてやっているのだ。
口調がねっとりし始めたのがその証拠だ。
レジーナが俺を笑わせようとしている。
それを考えて、なんとか吹き出しそうになるのを抑えることが出来た。
「大丈夫です、体調は万全です」
「ほんとうかぁ?」
レジーナがねっとりとした口調でそんなことを言う。
小さい体のレジーナが、野太い声でねっとり言うとすごく面白い。
俺が頬をひくひくさせていると、ゼノビアが言う。
「レジーナ。そのぐらいで勘弁してやってくれ」
「うむ。ゼノビアに免じてこのぐらいで勘弁しておこう」
ロゼッタもティーナも俺とレジーナのやり取りの意味が分かっていない。
それゆえ、きょとんとしている。
アルティは意味が分かっているのかわかっていないのか、無表情でじっとしていた。
レジーナが長椅子に座ると、ロゼッタが尋ねた。
「レジーナさま。試練はどのような内容なのでしょうか?」
質問を受けて、レジーナは真面目に答える。
「それは受けてのお楽しみだ」
「わかりました」
「ただし難度は低くはない」
そして、レジーナはぼそりとつぶやく。
「才能がないのに弟子になっても不幸ゆえな……」
ゼノビアが優しい声音で言う。
「明日、明後日は授業が休みであったな」
「はい。そうですわ、総長先生」
明日が休みということは俺にとっては初耳だった。
だが、ティーナが当たり前のように返事をしている。
俺が聞いていなかっただけで、ホームルームで発表済みのことなのだろう。
レジーナがうんうんと頷く。
「うむ。ちょうどよい。今から準備をし、ダンジョンに潜ってくるがよい」
「了解です! 頑張ります!」
「ロゼッタ。良い返事だ」
そして、レジーナは俺たちを順に見る。
「我が弟子となるかもしれないものの試練だ。助けてやってくれ」
「はい。お任せください!」
「はい」
アルティが静かに返事をすると、ゼノビアが言う。
「アルティ。そなたのためにもなろう」
「はい。全力を尽くします」
「ティーナ。ディオンからの伝言がある」
その瞬間、ティーナは一層、姿勢を正す。
「自分の出来ることをしなさい。以上である」
「はい!」
師匠から言葉をもらえて、ティーナは嬉しそうだった。
だが、俺は大切なことを言わなければならない。
「あの、よろしいですか?」
「む? どうした。ウィル」
「託児所に妹を預けたままになっています」
ゼノビアがうなずいた。
「私の方から託児の延長を申請しておこう」
「ありがとうございます。ですが、直接妹に今日外に行くと伝えねばなりません」
「……それもそうだな。ウィル。ロゼッタ。託児所に行ったあと、この場に戻ってくるがよい」
「ありがとうございます」
「助かります」
俺とロゼッタは託児所へと走る。
託児所についたら、
「あにちゃ!」
「おかえりー」
サリアとローズがぱたぱたと駆けて来る。
その後ろからゆっくりとルンルンが歩いて来た。
俺はサリアを抱き上げる。
「サリア。今日、大切なお仕事が入って……。明日か明後日まで帰れないかもしれないんだ」
「……わかった!」
「さみしい思いさせてごめんね」
「だいじょうぶ! あにちゃ、おしごとがんばってね!」
健気にそう言うサリアを俺はぎゅっと抱きしめた。




