61 レジーナの面接
前回のおはなし:総長室に行ったら、野太くて低い声の人物がやって来た。
※明日は金曜日なので「ひざに矢」を更新する予定です。
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「なっ!」
「えっ?」
突然、聞こえた声に、ロゼッタとティーナが一瞬びくっとした。
「そう警戒しなくともよい」
隣の部屋から全身鎧にフルフェイスの兜をかぶった人物がゆっくり出て来た。
身体よりも大きな巨大な斧を肩に担いでいる。
顔を全て隠しているが、身長から判断するにレジーナだろう。
レジーナの異様な風体に、ティーナとロゼッタは驚いているようだ。
俺も少し驚いた。
――シュコォォォ
兜から変な音が漏れている。兜の中に何かを仕込んでいるのだ。
声を変えるために、ミルトに何か作らせたに違いない。
レジーナが昨日言っていた準備とはこのことだったのだろうか。
現世の俺と初めて対面した時、レジーナは威圧的に殺気を飛ばしてきた。
レジーナは人を試そうとするとき、威圧する習性があるに違いない。
レジーナは身長が低いので、舐められないようにということなのかもしれない。
レジーナが一生懸命考えて声を変えたのはわかる。
だが、元々のレジーナを知っている俺としては面白くて仕方がない。
笑わないよう我慢するので精一杯だ。
だが、ゼノビアはそんなレジーナの様子に慣れているようで着席したまま平然と笑顔で言う。
「ティーナとロゼッタは初対面だったな」
「はい」
ティーナが困惑した様子でうなずいた。
「では紹介しよう。この者が我が妹弟子のレジーナ・エデル・グラシアだ」
「……勇者レジーナさま?」
ロゼッタは驚いてレジーナを見つめる。
そしてティーナは優雅に頭を下げた。
「お初にお目にかかりますわ。ティーナ・ディア・イルマディと申します」
「ディオンの弟子だな。名前は聞いている。頑張っているそうじゃないか」
「ありがとうございます」
「そして、そなたがロゼッタか」
「は、はい! 初めましてロゼッタです!」
「うむ」
そして、レジーナはロゼッタに歩み寄り、限界まで顔を近づけた。
「あ、あの、……レジーナさま?」
――シュコオオオ
困惑するロゼッタをじろじろとレジーナはにらみつけた。
だが、レジーナは身長が低いので、ロゼッタを見上げる格好になっている。
「ふしゅ」
シュコオオオオという音が面白すぎて、つい俺は噴き出しかけてしまった。
「し、失礼。くしゃみが」
俺がそう言うと、みんな気にしていないようだ。
怪しまれなくて助かった。
「ふむ。なるほど」
そうつぶやいてレジーナは距離をとる。
「いきなり失礼したな」
「いえ、構いませんけど……、一体何を?」
「いや、なにゼノビアからロゼッタを我の弟子にしてはどうかと推薦があったのだ」
「あたしが勇者さまの弟子にですか? え? なんで?」
あまりに驚いて、ロゼッタの口調が乱れた。
「才能がある若者だから、ぜひ弟子にしてはどうかとな」
「あ、あたしなんて、とてもとても、そんな!」
慌てた様子でロゼッタは両手の平を前にしてぶんぶんと振った。
「ロゼッタよ。つまりゼノビアは見る目がないと言いたいのか?」
「ち、違います、違いますけど、」
――シュコシュコシュココココ
おかしな音がリズミカルになった。
これは、恐らくだが兜の下でレジーナは笑っているのかもしれない。
笑いたいのはこっちである。勘弁してほしい。
俺は太ももを思いっきりつねって、笑いをこらえる。
「レジーナ、あまり我が学院の生徒をいじめてくれるな」
ゼノビアがそんなことを言う。
すると、レジーナは、ロゼッタに向けて軽く頭を下げた。
「意地悪を言った。すまない」
「い、いえ。あたしも言葉を間違っていました」
「まあ、我が弟子になるのを躊躇う気持ちもわかる。じっくり考えるがよい」
レジーナは「シュコオ、シュコオ」音を出しながら隣の部屋に戻っていった。
「――ふぅぅぅ」
俺は息を思いっきり吐いた。
よかった。あれ以上あの格好でシュコシュコ言われたら吹き出してしまっただろう。
レジーナを笑顔で見送ってから、ゼノビアは言う。
「ロゼッタ。驚かせてすまないな」
「いえ、そんな」
そして、ゼノビアはシロとフルフルを手招きした。
シロはこっちを見て首を傾げる。ゼノビアのところに行っていいか尋ねているのだ。
大人しくしていなさいと、入室前に言いつけたからだろう。
「シロ。フルフル。大人しくしていて偉かったね。もういいよ」
「めえっ!」
「ぴぎ!」
シロとフルフルはゼノビアのところにかけて行く。
ゼノビアは神獣たちをひざの上に乗せて、お菓子を食べさせながら言った。
「そなたたちもとりあえず、座りなさい」
「はい。ありがとうございます」
ゼノビアはお菓子を俺たちの前にも出してくれた。
そのうえ、大きめのお茶入れから、全員にお茶をカップに注いでくれた。
「淹れてから少し時間は経っておるゆえ味は保証しないが、よかったら飲んでくれ」
どうやら、大きめのお茶入れはちょっとした魔道具らしい。
なかに入れた液体がなかなか冷めないようになっているようだ。
俺はひとまずお茶を一口飲む。
ゼノビアは保証しないと言っていたが、とてもおいしいお茶だった。
ゼノビアは、お茶を飲む俺たちに笑顔を向ける。
「なにか質問があれば、答えられる範囲で答えよう」
「総長先生は……。どうしてあたしを推薦されたのですか?」
「アルティに聞いたが、ロゼッタは魔王討伐を決心したのだろう?」
「はい。あたしがどれだけ力になれるかわからないけど、魔王討伐を目指しています」
「ロゼッタは、どうして魔王討伐することに決めたのだ?」
「あたしは非力かもですが、ウィルやアルティ、ティーナの力になれたらって」
ロゼッタの答えに、ゼノビアは満足げにうなずいた。
「うむ。そういう性格はレジーナの弟子向きだと思ったのだ」
「でもあたしには才能が……」
「守護神が、人神と狩猟神の二柱だけなのを気にしているのか?」
「……勇者さまの弟子になるには不足していると思います」
「ミルトの弟子になる予定のウィルは一柱だ。守護神の有無で我らは判断しない」
そう言って、ゼノビアは微笑んだ。





