127 魔人対八歳児 その5
1巻がGAノベルからついに発売になりました。よろしくお願いいたします!
――バリバリバリバリ
俺が放ったのは、強烈な雷撃。
空をかける稲妻と同等威力の雷撃である。
周囲に轟音が鳴り響く。
同時に魔人の上半身から放射状に電撃が走った。
その電撃は、かつて魔人の頭蓋や腕だったドロドロした物へと流れた。
そして黒い炎の方へも電撃が走る。
俺と魔人は半径十メートルの黒い炎に囲まれている。
黒い炎は魔人による厄災の獣系列の魔法である。
魔人はこの黒い炎を「檻」と言っていた。
「……なるほどな」
そんなことをしているうちに、見る見るうちに魔人の上半身が元の形に戻っていく。
俺の腕を中に入れたままにだ。
再生した口で魔人がにたりと笑って言う。
「……捕まえた」
「わかってないな。捕まえたのはこっちだ」
「貴様は何を――」
魔人が何かを言おうとした瞬間、俺は魔人の体内で再び雷を放った。
魔人の体内を通り、周囲に放電されていく。
「そのような雷! 我には効かぬわ!」
嬉しそうに魔人が叫び、口を開く。
再び金色の閃光を口から吐こうというのだろう。
だが、口を開いた状態で、魔人はピシリと固まった。
「どうした? 早くそのゲロみたいな閃光を撃てよ」
「……な、なにをした?」
「周囲をよく見てみろ」
「……なんだと」
魔人が顔を上げて、驚愕の表情になって目を見開く。
周囲を囲んでいた黒い炎が消えている。
「ただの雷だと思ったのか? 魔法で作った雷だぞ?」
そこまで言って魔人も意味が分かったようだ。
「キ、きサッま……」
「また、呂律が回らなくなってるぞ」
フルフルが腕を吹き飛ばしても、魔人はすぐに再生した。
シロの白い魔力弾を食らっても、魔人にとっては大したダメージではなさそうだった。
あれほど体を削られたにもかかわらずだ。
つまり魔人のコアは、体外にある可能性が高い。
「魔法で作った雷だ。魔力線を通りやすいようにもできるだろう?」
普通の雷は金属を通りやすい。
だが俺が放ったのは魔力線、つまり魔力の流れに乗りやすい雷だ。
その雷を魔人の体内から撃ち込んだ。
それにより魔人の身体と魔力的につながっているものへと雷は向かう。
「雷はダメージを与えるための物ではない。お前のコアを探すためのものだ」
魔人の体と魔力的につながっている腕や頭蓋骨の残骸に雷は流れた。
そして黒い炎に向けても雷は流れた。
つまり黒い炎は発動したあと燃え続けているわけではない。
黒い炎に魔人は魔力を流し続けているということ。
体が崩壊しドロドロになっている状態でも、魔力を流して「檻」を維持しているのだ。
そんな価値が「檻」にあるとは思えない。
そもそも、黒い炎など、俺にとっても魔人にとっても「檻」になっていない。
魔法を使って大きく跳べばいいだけだからだ。
つまり「檻」というのはごまかし。
俺を囲む黒い炎には別の意味がある。
俺は黒い炎にコアが隠されているのだと判断した。
その後、雷で特に魔力の流れの太いところを探りコアを見つけ、魔法の槍で破壊したのだ。
雷を撃ち込んでいたおかげで、魔人は魔法の槍に気づくこともなかった。
「体から黒い炎に魔力が流れていたのではなく、コアから体に魔力が流れていたんだな」
「ユゆルルるさッヌヌヌぅウ」
許さぬと言っているのだろうが、呂律が回っていない。
魔人の体が、どんどん崩壊していっているせいだ。
「ワれ……ワわレがガッガホロロろびルなナなナど……」
「大人しく死んでおけ」
俺の身体の上で崩壊しはじめている魔人の体を魔力弾で砕いた。
既に魔力のコアは破壊してある。
それゆえ、魔人の体はあっさりと崩壊した。再生する気配もない。
しっかりと倒せたようだ。
「念のためにコアもしっかり確認しないとな」
俺は立ち上がって、コアの方へと向かう。
歩きながら、金色の閃光で焦げた腕に治癒魔法をかける。
解呪も忘れてはいけない。
念のためにフルフルとシロにも治癒魔法と解呪魔法をかけておく。
シロは俺の服の中、首元から顔だけ出して眠っていた。
魔法をかけても起きる様子がない。
疲れ切って気持ちよさそうに眠っている。
俺はシロの頭を撫でる。
「お疲れ様、凄く助かった。フルフルも、ありがとう」
「ぴぎ」
俺の全身を覆ってくれていたフルフルは通常形態に戻って懐に入っていった。
フルフルのことも撫でておく。
ちなみに人神の神霊であるフィーはずっと眠っていた。
「フィーもお疲れさま」
フィーはただ眠っていたわけではない。
俺にひたすら魔力を補給してくれていたのだ。
いわば外部タンクのようなもの。
八歳で肉体の幼い俺にとっては非常にありがたい存在だ。
神獣と神霊たちを少しだけ労わってから、魔人のコアの元へと向かう。
「……これか」
コアは人の頭部ほどの大きさがあり、きれいな穴が開いていた。
その穴は俺の魔法の槍に貫かれた痕である。
ひびも入っているが、大きなものではない。
「しっかりと原型を保っているな」
おかげで調査しやすいというものだ。
コアの中心には大きく密度の濃い魔石が入っている。
魔人の魔石の中でも特に質のいいものだと言っていいだろう。
つまり魔人の中でも、特に強力な魔人だったということだ。
「魔石の周りが肉と……別の魔石にびっしりと覆われているな」
もしかしたら、魔石の周囲を覆う肉が元々の魔人の肉体なのかもしれない。
調べてみないとはっきりしたことはわからないが、可能性はあると思う。
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