116 祝福の効果
12月に発売です。
俺の指摘で、竜たちは互いに顔を見合わせる。
「あ、そういえば。弟子さまの言う通りでありますね」
「確かに。我も人語を発話できているぞ」
「しとちゃま、ちゅごい!」
小型化したルーベウムより二回りぐらい大きいだけの子竜まで人語を話している。
一般的な聖職者の祝福は大した効果はない。
だというのに、使徒の祝福とはここまで劇的なものなのだろうか。
「ディオンさま。これは一体、どういうことなのでしょう?」
「竜神さまの代理竜が直接祝福を与えたのですから、奇跡ぐらい起こるでしょう」
「ディオンさまはここまで予想されていました?」
「多少は変化はあると思いましたが、ここまでとは思いませんでした」
ディオンにとっても予想以上の効果だったようだ。
「そうなのですか……。全体的に魔力も上がっている気がしますし……」
「言ってみれば寵愛値を上げたというかんじでしょうね」
ミルトの作った寵愛値測定装置は人族以外は測定できない。
だが、寵愛値自体は、ミルトの装置で測定できないだけで竜族にもあるのだ。
「ここまで劇的ならば、味方みんなにルーベウムが祝福するというのは……」
「あの! あたしにも祝福って……」
「ロゼッタさん、信者ではないのなら効果は薄いかもしれません」
「そうでしたか」
ディオンが言うには、敬虔なる信者でないと効果は薄いようだ。
もしくは元々寵愛値を持っていても大丈夫らしい。
「竜神の信者であるディオンさまにも効果はあるのでしょうか?」
俺がそう尋ねると、ルーベウムがパタパタとディオンの肩の上に飛んでいく。
「きゅるー? やってみる?」
「ありがとうございます。お願いできますか?」
ディオンは手を前で組むと跪いて頭を下げ目を閉じる。
「わかったー」
ルーベウムがディオンの頭の上に手を置いた。
「竜神さま、ディオンはいい子なのでよろしくお願いします。きゅるー」
祝福が終わると、ルーベウムは少し不安そうに首を傾げた。
「きゅるきゅる?」
「ありがとうございます。身体能力と魔力が向上した気がします」
それを聞いて、ルーベウムは満足そうにうなずくと俺の肩まで飛んできた。
「気のせいではないのか?」
レジーナが疑わし気な目をディオンに向ける。
「身体能力はわかりませんが、魔力は確かに……」
「ウィルがそう言うのならば、そうなのかもしれぬな。ドルフレア殿はどうなのだ?」
「我も能力が上がった気がするぞ」
「……なるほど」
そしてレジーナは俺に近づくと、俺以外に聞こえないほど、極々小さな声で耳元で囁く。
「師匠も同様のことができるのでは?」
「かもしれないな」
「……後で試してみましょう」
そう言って、レジーナは離れて行った。
俺の懐の中に入っているフィーはこっちの方を見上げていた。
流石にフィーには聞こえていたのだろう。
俺自身は沢山の神々の弟子なだけでなく、眷族、つまり使徒である。
だが、メインはやはり人神の使徒だろう。
そしてフィーは人神の神霊である。
その身に人神を降臨させなくとも、ある程度は人神の意思を聞けるかもしれない。
「……フィー。あとで色々お話を聞かせて」
「わかった!」
フィーはどこか満足げにそういうと、またもぞもぞと俺の服の内側に入っていく。
一方レジーナはドルフレアの方へとすたすたと歩いていく。
「竜王殿! 髭をもらいたいのだが!」
「そうであったな。我が髭を渡そうではないか。ついてきてくれぬか?」
「うむ」
「製作は弟子殿がやられるのであろう? 弟子殿もついてきてくれぬか」
「わかりました」
俺はルーベウムを肩に乗せたままついて行った。
フルフルとシロは、ロゼッタや竜たちと遊んでいたので置いて行く。
俺とレジーナ、ルーベウムとフィーはとても広い部屋に案内された。
すぐに、ドルフレアは竜形態へと戻る。
竜形態に戻るために部屋を移動したのだろう。
そして竜形態に戻ったドルフレアは、自分の髭を根本近くから切り取った。
「そんなに思いっきり切って大丈夫なんですか?」
「さほど、かからずに伸びるゆえな。役立てていただけたら嬉しい」
「ありがとうございます。助かります」
「ついでに、これも差し上げよう。ぜひ活用してくれ」
ドルフレアは竜の鱗を二十枚ほど用意してくれていた。
他には角や牙などもたくさんあった。
「こんなに沢山、いただいて良いのですか?」
「もちろんだ。生え変わった物を取っておいただけだからな」
「ありがとうございます」
「ついでにこれも……」
ドルフレアは、少し不安げに革製の抱っこ紐を取り出した。
ルーベウム用の抱っこ紐だろう。
「ありがとうございます。必要だと思っていたものです。助かります」
「きゅる?」
用途のわかっていないルーベウムは首をかしげている。
「これはこうやって……」
俺は抱っこ紐を装着すると、中にルーベウムを入れた。
「きゅるるる! なんかいいかんじ! ドルフレア、ありがとー」
「至聖なる君主よ。過分なるお言葉、ありがとうございます」
ドルフレアはとても嬉しそうに、満面の笑みを浮かべて頭を下げた。




