115 竜神の使徒の祝福
12月にGAノベルから発売です!
ルーベウムとフィーが眠ったこともあり、その日は寝ることになった。
竜たちは一人一部屋ずつ用意してくれていた。
俺は神獣たちと一緒だ。
「起こさないように気を付けて……っと」
俺はすでに寝ているフィーとルーベウムをそっとベッドに乗せる。
シロがはしゃいで、フィーとルーベウムが起きたら困るので、
「シロ、フルフル、ルーベウムたちを起さないように静かにね」
「「……」」
シロとフルフルは無言でこくこくと頷いた。
シロもフルフルも俺が抱きかかえてそっとベッドに乗せる。
そして、自分もベッドに入って眠ったのだった。
次の日の朝、起きると朝食が用意されていた。
ルーベウムの連れと言うこともあり、竜たちは手厚く歓待してくれる。
食後、ドルフレアがルーベウムのもとにやってきてひざをついた。
「至聖なる君主よ」
「朝ご飯おいしかったー。きゅる」
「ははぁ。至聖なる君主にそう言っていただければ、何よりの幸せでございます」
「それで、どうしたの? なにかあったの? きゅるきゅる」
「はい。我らに祝福をあたえていただくことは可能でしょうか……」
ドルフレアは少し不安そうに申し出た。
ドルフレア以外の近くにいた竜たちも緊張気味だ。
「いいけど、祝福ってどうやるの? きゅるー?」
「ルーベウム殿。竜神さまの祝福はですね……」
竜神の神官ディオンがルーベウムに丁寧に教えていく。
かなり複雑な祝詞を述べながら、決められたこれまた複雑な仕草を行うのだという。
「……きゅるぅ」
とても複雑なので、ルーベウムは自信がないのだろう。
少し不安そうだ。
「と、まあ長々と説明させていただきましたが、それは我ら神官が行う祝福ですから」
「きゅる?」
「ルーベウム殿は竜神さまの使徒。地上での代理人ですから。儀式的なものは必要ありません」
「きゅるぅ? つまりどうすればいいの?」
「一頭一頭の頭に手を触れながら、竜神さまにこの者をお願いしますとお祈りすればよいかと」
「それだけでいいの?」
「もちろん。ルーベウム殿は竜神さまの使徒。眷族にして御子。地上での代理人ですから」
子供にお願いされたとき、堅苦しい儀礼を求める親は少ないものだ。
「それならできるよー。それでいいかな? きゅるー」
「もちろんでございます」
ドルフレアも周囲にいた竜たちも、ものすごく嬉しそうだ。
それから俺はルーベウムを連れて別室に移動した。
そして俺の抱っこするルーベウムの前にドルフレアとその一族の竜たちが全員並ぶ。
頭を差し出したドルフレアに、ルーベウムは手を触れると
「竜神さま。ドルフレアをよろしくね。きゅるー」
「ありがとうございます」
次の竜が頭を出す。
ドルフレアと違って、竜形態だ。
「お名前はなんていうの? きゅる」
「graaaa」
ドルフレアのように人語を発話できる竜は少ないのだ。
だが、ルーベウムも竜。咆哮でも理解できたようだ。
「そうなんだー。grrrr」
「grr」
ルーベウムは竜の言葉で、竜たちと会話しながら祝福を与えていった。
一時間ほどかけて、ルーベウムは全員に祝福を与え終わる。
ドルフレアと竜たちは何度も何度もお礼を言っていた。
やはり使徒の与える祝福は、信者にとって、とても重要なものらしい。
「誠にありがとうございます。これでいつ死んでも悔いはありませぬ」
「一生の思い出になりまする」
「grrrgrrr」
「まだ、死んだらだめだよー。ルーベウムが悲しいからね。きゅるー」
「ははあ、全力で生き抜こうと思いまする」
「命を懸けても生き延びる所存でありまする」
「grrgr」
「喜んでもらえてよかったよー」
そんなことを少し和やかな雰囲気でルーベウムと竜たちが話している。
だが、俺は違和感を覚えた。
「ん? ちょっと待ってくれ」
「どしたの? ウィル。きゅる」
「人語を発話している竜さん、増えてない?」
俺の記憶が正しければ、人語を発話できていたのはドルフレアだけだった。
「え? そうかな? きゅる」
「はて?」
「そうでありましょうか?」
「grrgrr」
「いま、『そうでありましょうか?』って言った竜さんだよ!」
「……私ですか」
そういって前に出たのは、結構身体の大きな竜だ。
「実は前から人語を発話できたりしました?」
「いえ……そういえば、発話できていますね。驚きました」
自分でも気づかないうちに人語を話せるようになったらしい。
祝福の効果だろうか。
もしそうならば、使徒の祝福の効果は覿面すぎる。
「まさに竜神さまの奇跡ですね」
ドルフレアがうんうんと神妙な顔でうなずく。
ドルフレアはルーベウムの祝福のおかげと確信しているようだ。
「さすがは使徒さまです」
「ああ、驚いた。まさか人語を話せるようになるなんてな」
「信じられない奇跡だ。流石は至聖なる君主さまであらせられる」
「ちょ、ちょっとまって」
「どうしました? 弟子殿」
「人語を話せる竜さんたち、さらに増えてないかな?」
自然と他の竜たちも人語で発話し始めていた。




