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ダメな巫女娘に悪魔の加護を。  作者: 琴吹 風遠
My Name Is ...
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158/458

158.悪魔を語ろう

 ゴロン


 目の前にその大悪魔は何かを投げつけた。


 よくわからないもの。を、さらによくわからない

状態にしたよくわからないものだ。


「これは」


 私の下僕”ヴォチュヴェル”さ。


「!!?」


 我慢できなくて、殺してしまった。


「なっ、なんで」


 ***、貴様に会うためさ。私はこの傀儡の

操り師。その糸を切れば当然私が表舞台に

現れるだろう? ようは直々に私が貴様と

面を向かって話したかったのだ。その思いの

代償として、死んだに過ぎない。


 ……答えになっていない。


 いいや、それが全てであり悪魔とは所詮

欲望と恐怖のはざまに住まう存在だ。だが、

人は我々から逃れ続け、長い月日がたち今では

我々が渇望するものとは遠い存在となって

しまった。


 つまり、暇なのだよ。特に上位種であり、

悪魔を統べる長を務める者はね。


 だから私がここに来たのだ。久しぶりの

この世界なのだから、悪魔らしく悪さの限りを

尽くしてもよいのだが、私は紳士なのでね。

ちょっと志向を変えたいのだ。


「それで俺に」


 察しがいいな。紳士であるなら私の名を

名乗るべきなのだが、生憎そればかりは

伝えることができないものでね。


 なぜ? とは聞かない。聞いてはならない

そんな気がしたからだ。が、すぐに


 いいや、そこの「辞書」では読めないからだ。

私の言葉は悪魔の中でも少々特別でね。


 と、言われた。いや”言われた”というか、

”伝わった”という表現のほうが正しいか。


 さて、話を進めたいのだが***、貴様がこの

悪魔に望むのは何だ。地位か? 富か? 命か?

あるいは、それ以外か?


「……友達の」


 友達であるタケちゃんを救いたい。と俺は言った。

相手が正真正銘の悪魔であったとしても、万物を

かなえる神であっても願い、望みは変わらなかった。


 それを私に望むのか、貴様。


 うなずく。少年でしかない俺にははいと礼儀正しく

かしこまるマナーなど知りもしない。


 私は悪魔であり、神ではない。どうやら貴様は

そうその書物を読んだのだな。……いや、なに

貴様は大きな間違いを犯しているとは言わん。ただの

未熟な少年風情にそこまでの読み書きができるとは

思ってもない。証拠に私がここにいるのだから。


 思いこそ、重い。つまり質量を持つのだ。


 と、つづけた。


 だが、先も伝えたが私は悪魔だ。それ相応の

”何か”はあるのだろうな。


 わかっている。相手は悪魔なのだ。その悪魔に

願うとなれば命一つ程度、タケちゃんとの思い出と

比べたら安い。


 命でいいのか貴様。


 またうなづく。下を向いたままの俺に続ける。


 私がいつ”貴様の命”が欲しいと言ったのだ。

私が10も生きていない人間の命をもらったとて

満足するとでも思っているのか。それならずいぶんと

よき人生を謳歌したのだろうなぁ。はっ。


 えっ、そうなのか? 契約者とその対象の命が

対価として必要だというのは書いてあったのは

「辞書」を通じて知っている。


 「辞書」が全てではない。所詮私の”眷属”を

記した程度の書物よ、そんなもの私の前では

使い物にすらならん。


 それならばタダで叶えてくれるのか? そんな

甘ったれた考えを通すほどちょろくはなかろう。


 だから私が来たのだ。貴様は実に面白そうだ。

眷属と契約する程度なら私が出向くことはない。

貴様には私と契約をするのだから。


 この目の前の大大大悪魔と契約をする。いきなり

そう言われた俺は事の大きさと現実味が帯びていない

目の前の光景に何もできずに固まったままだった。


 なぁに、望みは叶う。貴様も望み通り死ぬ。

ただし、死に方と叶え方が変わるだけだ。結果は

変わらん。貴様は私と契約をする、それが何を

意味するかはわかっているか。


 わかっている。と言えばうそになる。一応、

勉強はしてきたつもりだ。


 俺が悪魔に叶えてもらうのではなく、


 俺が悪魔になり、自分で叶える。


 その通りだ。貴様の***としての生はここで

終わり、悪魔としての生が始まる。そして貴様は

悪魔として友のため、身を粉にして救うのだ。


 なぜ?


 なぜかと。面白いからだ。


 悪魔は退屈なのだ。退屈こそ我々を殺す。

人もそうだろう。退屈だから腕を振り脚を動かす。

つまらぬから、他者を食らい、他者を犯し、他者を

殺す。それができねば眠る。永久に眠るのだ。

悪魔もその根本と一寸とも変わらん。所詮は悪魔も

人の性によって生まれた。退屈しのぎの模倣品なのだ。

そして貴様は、実にそれを満たすためには都合が

よい。だから私はここに現れた。数少ない眷属が

一人を殺めてここに来たのだ。


 転がったままの”眷属だった”もののを見下ろし

少し足で遊んでいる。


 こいつは実にはたらいた。よき眷属ではあったが

退屈には負けてしまったのだ。所詮その程度よ


 じつに悪魔らしい。悪魔のアの字を知りマまで

手を伸ばそうとした俺にとってもわかりかねる

発想。


 貴様にタダで死んでもらっては困るのだよ。

もっと楽しませてから死んでもらうぞ貴様には。

友のことを思う気持ちを踏みにじる行為であり、

面白くて仕方がない。


 ビッ


 辞書が燃えた。自然発火という言葉がふさわしい

不思議な光景だ。目の前の事象に比べればただ

モノが燃えただけだろう。


 どうせそいつは使うことはない。だから

私が書き換えておいた。


 燃え続ける辞書にふと手を伸ばした。

確かに書かれていた字は散々読み散らかした

字のそれとは異なっていた。それになぜか

熱くない。炎に見えるだけなのかこれは。


 手をかざせ、そうすれば貴様は死ぬ。


 貴様は死に、「貴様」が始まる。


 願いのために命を懸けろ。それが人の

あるべき姿だろう。


 そして、私の同胞となれ。


 俺は……


 俺は…………


 そっと、


 ……


 「これは、タケちゃんのため」


 そうだ、貴様のためであり私のためだ。

拒むなど下らんことをしたらどうなるかは

わかっているだろう。


「……」


 炎を手にかざす。間近で見るとより鮮明に

綺麗に見える。なぜ炎はこうも美しく見える

のだろうか。これを命の輝きと訳した天才が

いるのだが、どういう生き方をしたらそんな

言葉が出てくるのだろう。


 手に炎が伝ってくるがやはり熱くない、まるで

魔法を操っているみたいで楽しい。いや、そうか

俺はこれから悪”魔”になるのか。なら

こんなことで一喜一憂するのは恥ずかしいな。


 ……


 俺はこれからどうなるのだろうか。


 いや、そんなことを心配する必要はないな。

この物語の主人公は俺ではないのだから、きっと

タケちゃんがこの物語をしめてくれるはずさ。

脇役には脇役なりの去り方がある。それが

名脇役ってものだろう。


 後悔があるとしたらこれくらいかなぁ。


 一度ぐらい主人公にはなりたかったなぁ、と。


 あとはもう何も思い残しなんてない。この場には

命一個落としに来る覚悟できている。友達のために

死ぬなんてなんてカッコイイのだろうかと自己陶酔

なんてしない。脇役の仕事をこなしただけだ。


 御託ばかり並べてる。


 やっぱり死ぬのは怖いのだろうか。


 ……ううん、怖くなんてないな。タケちゃんを

失うことと比べたら怖くなんてない。怖がりな

自分がこんなに勇気が持てるんだ。名誉の死は

それだけの価値があることなんだろうな。


 伝う炎が腕を覆いだした。これもまた

カッコイイ。けど俺はそれを振り払い辞書を

片手に炎を胸に押し当てた。いきなり炎が

熱を帯びて体を燃やすように舞い上がる。


 目の前が炎に包まれる。「命の輝き」を

間近で見る美しさは、きっとこれから一生

見ることはないのだろうな。


 その一生もここで終わるのだが。


 いやここで始まるのか。


 体が熱を持って、頭がぼうっとしてくる。


 きっと目をつむったらよく眠れそうだ。


 ……


 あぁ、きっとこれが「死」なんだろうな。


 案外、いいかもな。


 ……


 ……


 ……


 ……






































 ___________


「えっ」


 気が付いたら寝ていたらしい。せっかく

用意した大きい用紙が台無しになるぐらい

寝返りを打って寝ていたようだ。魔法陣の

上で目覚めるなんて、召喚されているみたいで

悪くはないな。


 ……じゃなくて、あれ?


 俺は炎を押し当てた(はずの)胸を服を

めくって確認する。うん、我ながら子供らしい

綺麗な肌をしている。焼け跡一つない。


 試しにと手をグッパーと開いて閉じてみる。

閉じた拍子に手のひらに爪を食い込ませてみる。

ちょっと痛いかもしれない。”痛い”ならと

テンプレートではあるが、頬をつねってみる。

痛い。


 痛いということは、夢じゃない。


 夢じゃないということは、俺は生きてる?


 俺が悪魔になったのであればもっと何かしら

変化があるだろうに、今の心境と言えば冷え込む

朝に何も上にかけずに、床で寝てしまって

体が痛いぐらいしか思わない。


 ようは、夢?


 けどしわくちゃになった用紙には魔法陣が

描かれているし、何かがあった形跡はある。

が、いかんせん昨日の眠い頭で行った行為で

ある以上、自分がやったことであると言われても

そうかぁと納得がいってしまう。


 ……


 とりあえず、悪い夢だったとオチをつけるか。

結局のところ俺は、タケちゃんにまかせろ!

とおおいに意気込んで悪戦苦闘した挙句に

ただおえかきをして楽しく満足してうっかり

寝てしまったという最悪のオチをつけて

しまったに過ぎないのか。


 というか今日は学校があったよな?


 ならこんなところでうかうかと出来事を

振り返っている時間はないんじゃないか!?


 と思ったが、そうだ日付を超えただけで今日は

日曜日だ。ほっと胸をなでおろす。昨日燃えた

はずの胸を。


 って、今日は月曜日じゃねーか!


 まるまる一日寝ていたってのかよ! って

そうか、昨日はいろいろ用意して夜にまで

いろいろあって……まぁ、いろいろがいろいろ

あったいろいろの2乗分だけあったのだから

疲れていたのだろうな。と、思う反面

もしかしたら悪魔になった俺があの大悪魔に

使役か何かをされていた可能性もなくはない。


 が、とりあえず今日が月曜日であることに

変わりはなく、日曜時点で学校が爆破されている

という薄い望みを信じる以外には、これから

学校の用意をしなければなるまい。


 月曜だから国語と、算数と、生活はなくて、

体育があったはずだから、運動しやすい服に

着替えて、いつもの「辞書」も持っていくか。


 昨日の記憶が正しければ、辞書にされたはずの

もの以外はしまい込んでいたはz


 ……


 ない。


 記憶が間違っていたとしても、


 ない。


 そう断言できるのは、自分の記憶能力に絶大な

自信があるからではない。


 あきらかに何かが燃え尽きた跡があるのだ。


 夢の中で見た自然発火が起きたとでも言おうか。


 つまり、夢ではない、のか。


 なら今の俺の状況は一体なんだ。しっかりと

生きているし、ちゃんと腕も足も口もあれば

しゃべることもできる。これが死人なわけがない。

あの大悪魔が言っていた「悪魔」らしくもない。

さっきから開けたカーテンの光すらも眩しい程度で

体が灰になるほどの痛みすらもない。


 まるで人だ。まるまる人のそれだ。


 ……そうだ。燃えたと言えば。


 散乱した本たちの中から昨日「辞書」として

使った本、夢では熱くない炎で燃え落ちたあの

本を探し出す。


 あった。というか一番手元近くにあった。


 ……うん、見たことがないコレは。


 燃えたからというよりかは言った通り表紙

まるごと書き変えられたと表現するほうが正しい。


「……」


 俺はそれを開いた。開くべきではなかったかも

しれないと自分を律したが、見るべきだと本能が

語った。


 ……読める。辞書の役割を捨てたとしても読める。


 つまり、今まで読めなかったものが読める。そして

そこにはメモ書きがあった。これもよくわからない

言語ではあるが読める。読めてしまう。


 ___________


 自らを暴け少年、


 貴様は私の眷属


 そして、失ったものを思い出せ


 この物語は貴様のものだ


 綴り方は己が知っている


 ___________


 見たことのない筆跡。


 これはどういう意味なのだろうかと疑問に思うが

それはすぐにわかることになる。今朝のニュースが

それを語っていた。


 学校が爆破されていた。いや、焼失していたと

言ったほうが正しいかもしれない。これは知らない

俺がやったことなのだろうか。あるいはぽっと出た

あの大悪魔がサービス残業をした結果なのだろうか。


 この際どちらでもいい。悪魔なのだから。


 彼も、俺も。


 何事もなかった町でのこの事件は大きく騒がれた。

雷による自然発火だと報じているが、放火の説も

濃厚だという意見も飛び交っているが、小さな町で

何一つ問題もなかったこの場所で、そんな犯行に

及ぶ人物も考えられないという結論に至った。

いや何よりも、事件が起きたのが日曜日だったのが

不幸中の幸いとも報じていた。が、それでもやはり

犠牲というものはつきもの。その犠牲者には


 マコト、ユウヤ


 そして、***。俺がいた。


 そしてその場で保護された生存者にタケがいた。


 ……


 あぁ、そうか、悪魔なのだからこういう救い方しか

できないのも当然か。俺はやはり死んでいるのか。


 これでタケちゃんに会いに行ったら驚かれるだろうか。

それはそれでワクワクしてきたな。けど騒ぎがある

今、外に出たら驚かれそうだ。と思ったが、俺はすでに

幽霊みたいにふよふようろついている状態かもな。


 あ、それはないな。だって痛かったもん。

それにテレビが見れているのだから肉体はある。


 半分が人間で、半分が悪魔みたいなものだろうか。


 失ったものは大きかったかもしれないが、これは

これでハッピーエンドになってくれたんだ。


 これから一人で生きていく、いや死んでいく

ことになるのだろうか。それでもいい。俺には

まだ体がある。また一からやっていくさ。


『失ったものを、思い出せ』


 思い出すほどのものではなかったな。この日の

ことはきっと忘れることはない。感謝の言葉を

述べるのはおかしいが、これが俺の物語の序章と

してはちょうどいいd


『失ったものを、思い出せ』


『失ったものを、思い出せ』


 思い出せ。


 ……なにかをわすれている。それもきっと大事なこと。

まさかこんなもので願いが叶うとは思っていない。

もっと大事な何か……でも、タケちゃんはしっかり

生きている。俺は死んだとしてもタケちゃんは

生きてくれている。失ったものは大事な友との

これからの未来……


 ……じゃあ俺の過去はどうなったんだ。


 そういえば今日は朝ごはんの用意はしていないな。

あぁ、そうだ一応腹は少しは減るんだな。冷蔵庫に

何を入れていたっけ……


 ……


 あ、


 ああ、


「はぁっ!!!!!????????」


 なんで俺は、いつから俺は朝ご飯を”自分で”

用意していたなんて思っていたんだ……!?


 俺のあまり好きじゃなかった白米とみそ汁を

出してくれていた、


 父さんと母さんはっ……!!!????


 いない!!!


 いないのは悪魔なのだから当然だろう、じゃない!

この家もこの食卓も全部全部俺一人のものじゃない!

忘れたなんてものじゃない! だってそこに……


 ……


「……なんで……なん、で」


 家族を映していたはずの写真たてが……


「なんでいないんだよぉ!!!」


 頭を抱える。思い出せ、思い出せ、思い出せ!!


 家族との思い出や父さんの顔、母さんの顔、ずっと

昔に転んだ時にばんそうこうを張ってくれたやさしい

彼、彼じゃない! それが父さんなんだ! 出ない!

どうしても出ない!! いつも眠い目をこすってでも

朝ご飯を用意してくれていた人は誰だ!! 母さんの

はずだろう!! なんで俺の顔が出てくるんだ!!

俺はそんなことしていない! もっと包まれるような

ひび割れた指……だったか? 違う違う違う違う違う!

そうだ! そうだろう! 忘れてたまるかよ!!!

ここにはもっと、「愛」があったんだ……もっと。

あ”ぁ、頭が痛い。痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い

痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!

そんな思いでなんてないだろう? そんな無い

思い出は頭と目頭を押さえても出てこない!!

思い出せよ! そうだ、あのとき転んだ時には

ばんそうこうを張らずに帰ったんだ。そうだった。

ようはそれは父さんは関係ないのか? あれ、

そうだったか、なんだそうか、朝も一人で食べて

一人で学校に行ってたんだ。じゃないだろ!!

思い出せよ!思い出せ思い出せ思い出せ思い出せ

思い出せ思い出せ思い出せ思い出せ!!!!!

違う! 俺は一人じゃなかったんだ! タケちゃん

だけがいたんだ俺には。それ以外は俺にはいなくて

それが俺自身の望んだこと。そうか、俺は一人……

家族なんて、俺には最初から……


「はぁっ、ダメだダメだダメだダメだダメだ」


 俺はっ……一人なのか。


 一人……


「……」


 あぁ、心が汚れていくみたいに孤独に染まっていく。

タケちゃん、タケちゃん、タケちゃん、タケちゃん!!


 助けて


 誰か…… 俺を……


 ___________


 それでこそ面白い。


 ようこそこちら側へ。


 神はもう貴様を救わない。


 眷属”ディア・ネ・グレイスタルーク”


 それが、少年。貴様なのだ。


 ___________


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