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ダメな巫女娘に悪魔の加護を。  作者: 琴吹 風遠
My Name Is ...
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142/458

142.チョコを渡そう

「よしっ」


 俺はそう言って、カバンに手のひらサイズの

小箱を入れる。そしていつものように冷える

朝空を歩いて学校に向かう。


 小箱云々以外はいつも通りの行動ではあるが、

今日に限っては少し早めに学校につくように用意を

している。これだと今日の第一登校生徒になるな。


 なんでこんなに急いで学校に向かわなくては

ならないかと言えば、別に日直だからクラスの

生徒が来る前に色々としなくてはならないわけ

では決してない。ましては来るよう命令された

わけでもない。ただ自分の意志でそうしたかった

からそうしたのだ。


 その理由はただ一つ。

 今日が2月14日、バレンタインだからだ。


 だから早めに向かって誰よりも先にげた箱と

机に入っているチョコレートを見たい……なんて

ことはない。むしろ逆だ。


 というかこんなクラスでの存在意義を失っている

俺にチョコレートを贈る、頭のねじが緩んだヤツが

いるとも思わない。あるいは同じ部活ということで

ミコから贈られることがあるかもしれないが、

それはまた後の話であり、これほど早くに学校に

来てチョコレートをげた箱に入れるのは無理だ。


「小恋@久しぶりのツイッタネタ


  クワッ!!\(゜Д゜)>

  おはよう!<(゜Д゜)/

  飯だー!!\(゜Д゜\)


  7:11」


 なんてツイッタも登校中に確認したし、まだ

家で飯を食べて髪をとかしているぐらいだろう。

それにしてもこの様子だと愛しき部員に義理でも

チョコを用意しそうではないな…… なんて

ヒロイン感のないヒロインなんだ。


 言いそびれていたが俺がやろうとしているのは

チョコレートをもらうことではない。


 チョコレートをあげることが目的だ。


 おっと先に言っておくが、これはいわゆる逆チョコ

ってやつではない。俺があげるのは女子にではなく

男子にだ。……いや、むしろこっちのほうが問題だな……


 勘違いをされる前に言っておくと、これは

いわゆる「ドッキリ」だ。本日バレンタインに

下駄箱にチョコレートがあれば、それはもう

テンションが駄々上がりになるのは、男子学生

諸君ならわかることだろう。だから俺が”優しく”

そのチョコレートを用意してあげようではないか

ということである。


 入れる下駄箱はもう決めてある。俺のクラスで

一番か二番目に、空気が薄い(俺除く)町田という

人物だ。そういうやつに限ってこういう色恋沙汰に

関わることに対して面白い反応を見せてくれる。


 まさかこういう形で俺の趣味だった人間観察が

活きてくるとは思いもしなかったけどな。


 だから俺は誰よりも一足お先に学校に向かい、

町田の下駄箱にチョコレートを仕込み、のちに

誰からかの愛情のこもったチョコレートを見た

ときの反応を楽しみたいのだ。さらにはそれが

露見して「えww町田チョコもらってるww」

なんてクラスで話題にでもなれば余計面白い。


 それには「誰より」も学校に早く来る必要が

ある。そりゃもちろん、男の俺が男の下駄箱に

ガチの作りのチョコレートを入れているところを

見つかったら自殺するしかないわ。


 けれど今日しかこのいたずらができないからな。

ちゃんと俺が作ったなんてわからないように

女性が作った風に仕上げ、添えてある手紙も

ネットで拾ってきた「丸文字」を採用した。


 いたずらにも手は抜かない。それが俺

悪魔 神前滉樹のモットーだ。


 そして学校に到着。今の時間は7時15分。

朝練をしている部活よりも時間は早いし、学校内を

覗いてみても誰かいる雰囲気はない。先生は多分

数人はいるだろうが全員職員室だろうし、別に

先生に見られたところで痛手にはならない……はず。


 俺はカバンから小箱を取り出す。添えてある

手紙には”好きです。返事はいりません”と

書いてある。名前は書いていないし、書いた瞬間に

それこそ”終末”が来るよ。


 「体育館裏で待ってます」というのは一つの

案にはあったのだが、さすがにこれで本当に信じて

体育館裏に来て、見知らぬ自分を好きになった人を

待ち続けさせるのはこちらとしても見ていて

可哀そうだ。そこで俺が


「ドッキリー。だーいせーいこーう!!」


 と、出てこようもんならグーで殴られる未来が

見えている。


 だからこれはドッキリではあるが、町田を

少しでも幸せにしたまま終わる「愛のある」

ドッキリだと表現してもいい。だから俺は下駄箱に

チョコレートを入れる以外は何もしない。

あとは町田がどう思うかの酌量に任せる。


 どんな形であろうが俺にとって面白い結果に

なるのは目に見えている。さてさてこれはどう

なるものやら……


 俺はガチャッと自分の下駄箱を開ける。

とりあえず俺は上履きをはいてから町田の

下駄箱にチョコレートを入れるとしt


 バタン!!


 ……


 ん?


 ここは俺の下駄箱だ。うん、間違いない。

俺の出席番号は〇〇〇〇……そうだな、一桁の

狂いもない。


 再び下駄箱を開ける。


 中には手のひらサイズの小袋と手紙。

小袋の中には小分けにされたお菓子らしき

もの……


 バタン!!!


「スゥゥゥゥゥゥーーー…………


 フゥゥゥゥゥゥーーー…………」


 一呼吸置く。


 ガチャッ!!


「……」


 これは……幻覚じゃないな……。これは新手の

悪魔の仕業か。そうだ、そうに違いない!

幻覚系の悪魔や霊なんて想像をはるかに

越える数がいるんだ。だからその一匹が俺に

この「下駄箱に小袋と手紙が見える」幻覚を

見せているんだ、うん。


 はっはっはー、それにしてもずいぶん

ピンポイントな幻覚を見せる霊がいたもんだー。

わっはっは、これは悪魔の俺を相手にしても

イッポンとられましたわーっはっはっは。


「……」


「……なんてことあるかーーーー!!!!!!!

 !!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


 ________________


 さて場所は教室。時刻はあれから50分が経ち

もうすぐ本来の登校時間になる頃だ。それよりも

前に来た生徒もチラホラいるのだが、気を使ってか

俺に対して「おはよう」とあいさつをしてくる

やつも何人かいた。俺も一応、おはようと返すが

今はそんなあいさつどうこうなんて俺の頭の

サイクルの中にはとうに入ってなどいない。


 今、目の前にあるのは小袋に入ったチョコレート

見た目で数えるに6個。開けていないから実際は

何個入っているかはわからないが、大体そのくらい

だろう。ラッピングには横文字でどこかのブランド

名が書かれ、リボンで開け口を塞いであり、文字通り

「バレンタイン用」といわんばかりの見た目だ。


 もう教室には数人、席に座っているから堂々と

机の上に小袋を置いて眺めることはできないから

こそこそと机の下で、そのきれいなリボン包装を

眺めている。ほぅほぅ、こうやると案外かわいく

包装ができるんだな。来年のバレンタインネタに

でも覚えておくか。ってこんなこと考えている

タイミングじゃないな。


 先に言っておくが、来年もやると意気込んでは

いるが、以降こんな企画は行わないことにした。

いきなり何でかといわれても単純に後々わかるが、

「チョコレート関連で流血事件が発生した」とでも

言っておこうか?


 うーむ、これは実際誰かに見られてしまって

いいものなのか……。否、即答でNOだな。

町田に同じことをしようとしていただけあって

どういう状況に陥るかなんて手に取るように

わかる。俺も町田と同じかそれよりもクラスで

存在感のない人物なんだからな。


 ……なんだこのむなしい感情は……


 ていうかあまりの驚きで町田の下駄箱に

チョコレート仕込むの忘れたからね! だから

今、俺の手元には小箱と小袋のチョコレートが

あることになる。はたから見たらモテてます感が

あってちょっと鼻が高い。高いだけだ。

それ以上もそれ以下もない。自己満足だ。


 そこでふとある考えがよぎる。


 これは間違いなんだろう。霊とか悪魔とか

関係なく、誰かがほかのカッコイイいけてる

系男子の下駄箱に入れるはずが間違って、俺の

下駄箱にいれちゃったんだろう。あぁ、

それなら全然ありなくない話だな。それに

そういうオチのラブコメの話もよく見る。

今回のバレンタイン回は俺が誰かをはめるの

ではなく、逆に俺がぬか喜びさせられて

「悪い行いは自分に帰ってくるんだな」という

教訓で終わる。


 そうだそうだ、オチが見えてきたぞ。それに

手紙があるんだ。ワンチャン誰に宛てたものか

書かれているかもしれない。


”神前君へ”


「……スゥゥゥゥーー……ゴホッ!」


 むせた。


 うーわー逃げ場ねーじゃーん!! 完全に

ディアー俺じゃねーか!! どこのどちら様だよ

俺にバレンタインにチョコレートを送ろうと

決心した、心意気のあるお方は! もういっそ

褒め称えたいわ!!


 自分でも何いってるかよくわからない。

それだけこの状況がよくわかっていない。


「……」

「……ハッ!」


 隣から気配がする!! 即座に手紙と

小袋のチョコレートをポケットにしまう。


「どうしたの、そんな挙動不審に」

「で? ででででつになんでもないなんでもない

 なんでもないからねーぇ!!」

「逆に怪しいよそれ!」


 ミコだった。霊感がなく若干反応が鈍ったが

かろうじて例のチョコレートを見られる前に

隠すことができたな。それよか、コイツにだけは

一番見られたくない。


「なんでそんな……あっ、まっさかーwww」


 その「www」はなんだ。いきなりワールド

ワイドウェブと言われても困るぞ。


「チョコレートがもらえるんじゃないかって

 そわそわしているんじゃないのー?www」

「……


  い、いやぁ、そんなことはないよ。というか

 前も言ったけど、そういう色恋沙汰にはあまり

 興味がないからなー」

「まったまたー」


 ふぅ、そのセリフが出たということはこちらの

動向がばれたわけではなさそうだ…… ミコを

相手に隠し事はかなりの頻度で失敗している

から、今回だけはなんとしてもばれるわけには

いかない。


 なんとしてもだ!


「ちょっとトイレいってくる」

「はいよー」


 よし、これで一旦落ち着こうか。そうだ

これで出ている間に、このチョコレートを

食べてしまってもいいだろう。


 教室をそそくさと出て行く。もうすぐ朝の

ホームルームの時間ではあるが、多分間に合う

だろう。だからまずは人目につかない場所に……


 ってあれ? 手紙はどこいった……?

 _______________


「ココ……怪しい……」


 女の勘がプンプンする……。あれは何か

隠しているっぽい……。バレンタインに隠し事

といったらもう決まっているけど、まさか

ココが誰かからチョコをもらうなんてことは

ないはずだよね。


「フッフフッフーン」


 なにげなーく、ココのかばんを漁ってみる。

っていってもいつもみたいに教科書と筆箱

ぐらいしk


「……」


 かばんの中には私の手のひらより少し大きめの

小箱……。しかもここぞとばかりに仕上げた

バレンタイン用の手作りラッピング……。


「まっ、まさか……」


 い、いやいやまさかココが誰かからチョコを

もらうなんてないでしょ! それにーほら!

クラスのみんなに配ってる義理チョコ的な

ヤツかもしれないじゃん。


 ってん? 手紙? それもなんで二枚にわかr


”神前君へ” ”好きです。返事はいりません”


「……


  ……え”えええええ---------

 -------------------

 !!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


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